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プロローグ
《真っ白な空間》
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いつの間にか私は見知らぬ場所にいた、確か普通に学校に行こうとして電車に乗ったところまでは覚えているのだが、残念ながらそれ以降の記憶がない。
あたりを見渡しているとふっと見覚えのない文字を見つけた。
《この先に待つ者に対価を支払え》
本来ならば読めそうにもない文字なのに何故か私は読めた。
そして、私はそのまままっすぐに歩いていくと真っ白な扉を見つけた。
取り敢えず三回ノックをするが中からの返事はなかった。
一瞬私は迷ったが取り敢えず、扉を開ける事を決意する。
「失礼します……。」
恐る恐る覗き込むとそこには一人の「人」がいた。
『やあ、次は君だね』
口は閉じているのに何故か脳内に直接話しかけられたかのように私の中にその「人」の声が届く。
「あなたは?」
『わたしは名もなき存在、君たちのように珍しく記憶を持ちながら転生する者と対話する存在』
「……。」
私は訳が分からず思わず顔を顰める事しか出来なかった。
『さて、君はわたしに何を与えてくれるのかな?』
「………あの…どういう事ですか?」
『……ああ、事態が分からないかい?それじゃ、簡潔に言おう、君は先ほど電車という乗り物の事故で亡くなったんだ。』
「――っ!」
『まあ、君のように予定が狂ったものが他にもいるんだ、時間がないから早く何かを渡して転生してくれ。』
私は行き成り自分が死んだと聞かされどう対応したものか考えるが、すぐに答えが出た。
「何か渡さないと転生できないの?」
『いいや、そんな事はないが、ただ、君のように予期せぬ死を迎えたものには「ギフト」を贈る事になっている、ただ、その「ギフト」は場合によっては最強の武器になりうるものだから対価として何かを貰っている。』
「……いらないのに。」
どうせ、元の自分に戻る訳じゃないのに、と思わず思ってしまうが、相手も仕事でこれをやっているのならば、今ここで私がゴネたところでその「人」には迷惑になってしまうだろう。
「他の人はどのようなモノを渡しているんですか?」
『たとえば、この髪の色、瞳の色などだな。』
私はここでようやくその「人」をまじまじと見つめた。
その「人」は男とも女ともどちらとも取れる容姿をしていた、髪は腰までありサラリとまるで絹のような漆黒の髪、瞳は空を思い出すような蒼と森林を思い出すような緑色のオッドアイ。
完璧のようなどこかちぐはぐなその「人」に私は何ができるのか考える。
そして、私は思った、その「人」に何かを与えると必然的にその「人」から何かを奪ってしまうのだろうと、たとえば、私がこの黒い瞳をあげると言えば、その美しい瞳の色を失う事になるだろう。
そう考え、私は決めた。
「なら、私の名前「聖(ひじり)」を受け取ってください。」
『……』
その「人」は先ほどまではつまらないゴミを見るような目で私を見つめていたのだが、何故だか急に目を輝かせた。
『その名を受け取れば君は「聖」として保てないまま転生するのだがいいのか?』
「……?」
『「聖」としての記憶は失う事になり、前の知識だけを持っての転生になると言っているのだ。』
その「人」の言葉に私は小さく微笑んだ。
「構いません。」
『繋がりを自ら消すというのか。』
「私は死んだんでしょ?それならば、私が記憶を持っていても同じです。」
『……。』
正直に言えば私は忘れるのならば忘れて転生したいと思う、前世という柵が来世でどのように作用する変わらない上に、家族を覚えていたらそれだけで辛いと思うから。
薄情かもしれない、だけど、私は決して強い人間ではないのだから。
『分かった、それを受理しよう。』
「ありがとうございます。」
『それならば「ギフト」を三つ渡そう何が良い?』
「えっ?」
一つだけでいいと思っていた私は正直戸惑った。
「あの……。」
『何が良い、特別に三つだ、遠慮などいらない。』
「一つでいいんですが…。」
『三つ。』
私は諦めるように肩を落として考え始める。
そして、一つ決める。
「言語を理解出来たら嬉しいです。」
『……。』
黙り込むその「人」に私は不安になる。
「あの…駄目ですか?」
『つまらぬな。』
「えっ?」
『他の者なら容姿をああしてくれ、こうしてくれ、とか、頭を良くしてくれ、など言っておったが。』
「私は普通でいいので。」
『分かった、全ての言語を理解できるようにしておこう。』
「いえ、全てじゃなくてもいいですが…。」
私はえらいものと出会ってしまったのだと今さらながらに焦りを覚える。
『他は?』
「えっと……。」
『力など欲しくはないか?』
「それは…欲しくないと言えばウソですけど…。」
もし、そんなのが欲しいと言えば確実に人間を止めてしまいそうで嫌だ。と考えフッと自分が人に生まれるかどうかも怪しい事に気づく。
「あの、私の次ってどんな形ですか?」
『人だが?』
「あ、それならよかったです。」
私はホッと息を吐いた。
「それなら、ほどほどに能力があればいいと思います。」
知識などが多少覚えやすいのならいいな、と思い、そう言うと、何故かその「人」はほくそ笑んだ。
『分かった、能力を与えておこう。』
「は、はい……。」
何かが含んだように聞こえるような気がしたが、取り敢えず気の所為だと思いたい、私は聞き流す事にした。
「後はある程度身を守れるほどの運があればいいです。」
『分かった。』
その「人」が頷くが、正直に言えば彼女はいい予感がしなかった。
まるで、何かを仕出かした気分になる彼女だったが、それは正解だった。
そして、それが分かるのは彼女が転生してかなりたってからの事だが、この時の彼女が知る由もなかった。
『それでは次の生を楽しんできてください。』
そう言うと彼女は光に包まれ、次の瞬間には彼女の姿はなかった。
あたりを見渡しているとふっと見覚えのない文字を見つけた。
《この先に待つ者に対価を支払え》
本来ならば読めそうにもない文字なのに何故か私は読めた。
そして、私はそのまままっすぐに歩いていくと真っ白な扉を見つけた。
取り敢えず三回ノックをするが中からの返事はなかった。
一瞬私は迷ったが取り敢えず、扉を開ける事を決意する。
「失礼します……。」
恐る恐る覗き込むとそこには一人の「人」がいた。
『やあ、次は君だね』
口は閉じているのに何故か脳内に直接話しかけられたかのように私の中にその「人」の声が届く。
「あなたは?」
『わたしは名もなき存在、君たちのように珍しく記憶を持ちながら転生する者と対話する存在』
「……。」
私は訳が分からず思わず顔を顰める事しか出来なかった。
『さて、君はわたしに何を与えてくれるのかな?』
「………あの…どういう事ですか?」
『……ああ、事態が分からないかい?それじゃ、簡潔に言おう、君は先ほど電車という乗り物の事故で亡くなったんだ。』
「――っ!」
『まあ、君のように予定が狂ったものが他にもいるんだ、時間がないから早く何かを渡して転生してくれ。』
私は行き成り自分が死んだと聞かされどう対応したものか考えるが、すぐに答えが出た。
「何か渡さないと転生できないの?」
『いいや、そんな事はないが、ただ、君のように予期せぬ死を迎えたものには「ギフト」を贈る事になっている、ただ、その「ギフト」は場合によっては最強の武器になりうるものだから対価として何かを貰っている。』
「……いらないのに。」
どうせ、元の自分に戻る訳じゃないのに、と思わず思ってしまうが、相手も仕事でこれをやっているのならば、今ここで私がゴネたところでその「人」には迷惑になってしまうだろう。
「他の人はどのようなモノを渡しているんですか?」
『たとえば、この髪の色、瞳の色などだな。』
私はここでようやくその「人」をまじまじと見つめた。
その「人」は男とも女ともどちらとも取れる容姿をしていた、髪は腰までありサラリとまるで絹のような漆黒の髪、瞳は空を思い出すような蒼と森林を思い出すような緑色のオッドアイ。
完璧のようなどこかちぐはぐなその「人」に私は何ができるのか考える。
そして、私は思った、その「人」に何かを与えると必然的にその「人」から何かを奪ってしまうのだろうと、たとえば、私がこの黒い瞳をあげると言えば、その美しい瞳の色を失う事になるだろう。
そう考え、私は決めた。
「なら、私の名前「聖(ひじり)」を受け取ってください。」
『……』
その「人」は先ほどまではつまらないゴミを見るような目で私を見つめていたのだが、何故だか急に目を輝かせた。
『その名を受け取れば君は「聖」として保てないまま転生するのだがいいのか?』
「……?」
『「聖」としての記憶は失う事になり、前の知識だけを持っての転生になると言っているのだ。』
その「人」の言葉に私は小さく微笑んだ。
「構いません。」
『繋がりを自ら消すというのか。』
「私は死んだんでしょ?それならば、私が記憶を持っていても同じです。」
『……。』
正直に言えば私は忘れるのならば忘れて転生したいと思う、前世という柵が来世でどのように作用する変わらない上に、家族を覚えていたらそれだけで辛いと思うから。
薄情かもしれない、だけど、私は決して強い人間ではないのだから。
『分かった、それを受理しよう。』
「ありがとうございます。」
『それならば「ギフト」を三つ渡そう何が良い?』
「えっ?」
一つだけでいいと思っていた私は正直戸惑った。
「あの……。」
『何が良い、特別に三つだ、遠慮などいらない。』
「一つでいいんですが…。」
『三つ。』
私は諦めるように肩を落として考え始める。
そして、一つ決める。
「言語を理解出来たら嬉しいです。」
『……。』
黙り込むその「人」に私は不安になる。
「あの…駄目ですか?」
『つまらぬな。』
「えっ?」
『他の者なら容姿をああしてくれ、こうしてくれ、とか、頭を良くしてくれ、など言っておったが。』
「私は普通でいいので。」
『分かった、全ての言語を理解できるようにしておこう。』
「いえ、全てじゃなくてもいいですが…。」
私はえらいものと出会ってしまったのだと今さらながらに焦りを覚える。
『他は?』
「えっと……。」
『力など欲しくはないか?』
「それは…欲しくないと言えばウソですけど…。」
もし、そんなのが欲しいと言えば確実に人間を止めてしまいそうで嫌だ。と考えフッと自分が人に生まれるかどうかも怪しい事に気づく。
「あの、私の次ってどんな形ですか?」
『人だが?』
「あ、それならよかったです。」
私はホッと息を吐いた。
「それなら、ほどほどに能力があればいいと思います。」
知識などが多少覚えやすいのならいいな、と思い、そう言うと、何故かその「人」はほくそ笑んだ。
『分かった、能力を与えておこう。』
「は、はい……。」
何かが含んだように聞こえるような気がしたが、取り敢えず気の所為だと思いたい、私は聞き流す事にした。
「後はある程度身を守れるほどの運があればいいです。」
『分かった。』
その「人」が頷くが、正直に言えば彼女はいい予感がしなかった。
まるで、何かを仕出かした気分になる彼女だったが、それは正解だった。
そして、それが分かるのは彼女が転生してかなりたってからの事だが、この時の彼女が知る由もなかった。
『それでは次の生を楽しんできてください。』
そう言うと彼女は光に包まれ、次の瞬間には彼女の姿はなかった。
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