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第三章
第三章「焦りと出会い」2
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図書館を出てから、涼也は彼に名前を訊いたが彼は答えてはくれない、それどころか好きに呼んでくれという始末だ。
涼也は彼を睨むが、彼には涼也の視線なんて子猫のように可愛いもののように感じているかのように笑っている。
唇を尖らせる、涼也はこの人物をどこで見た事がある気がしてならなかったが、何故か霧がかかったかのように全く思い出す事ができなかった。
「決まったか?」
「腹黒?」
「それは俺よりももっと似合う奴がいるな。」
「誘拐犯。」
「同意を取ったが?」
「変態。」
「別に構やしないが、それでいいのか?」
「……。」
涼也は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ネーミングセンス皆無のようだな。」
「うっせー。」
涼也は必至で頭を動かすがなかなかいい名前が浮かばない。
いっその事「名無しの権兵衛」でいいのではないのかと考え始め、顔を上げると眩しいくらいの彼の笑みがあった。
「……アキラ。」
「……。」
フッと漏れた言葉に彼は驚いたような顔をして、そして、無言で涼也の頭を撫でた。
「それでいいのか?」
「えっ?」
「アキラって呼んだだろ?」
「……。」
勝手に漏れたなどと流石に言えなかった涼也は無言で頷いた。
「それじゃ、お前はリョウだな。」
「はぁ?」
何で自分の愛称を知っているんだと、胡乱な目つきでアキラを見上げると、彼は何やら楽しげに言う。
「昔買っていた犬にそっくりだ。」
「何だよそれっ!」
「キャンキャン鳴いて、俺の後を追いかけて来たんだ、お前みたいに可愛かったぞ。」
「俺は可愛くない、つーか、犬と一緒にするなっ!」
涼也が喚けばアキラは彼の頭を掻き交ぜる。
「リョウ。」
「……何だよアキラ。」
名を呼ばれ不服そうにアキラを見上げると彼は本当に楽しそうに笑っていた。
「呼んだだけだ。」
「何だよ、それ。」
「さあな。」
「……。」
涼也が眉を寄せるとアキラは涼也の眉間に指を突き付ける。
「そんな顔は禁止。」
「何様だよ。」
「アキラ様。」
「……。」
胸を張るアキラに涼也は呆気に取られるが、すぐに馬鹿馬鹿しくなり笑い出す。
「変な奴だな。」
「お前もな。」
「ああ?俺のどこがだよ。」
「いきなり泣き出す。」
「……うっせー、つーか、いつまでもその話を引っ張るなっ!」
先ほどの出来事を出され、涼也は顔を真っ赤にさせて、アキラを睨みつける。
「可愛いな。」
「男に可愛いなんてないだろうっ!」
「……。」
アキラはしばらく考え、何故か肩を落とした。
「どうしたんだ?」
「いや、知らず知らずのうちに毒されてたのだと気づいてな。」
よく分からない涼也だったが、何となくアキラが可愛そうになり、彼の肩にポンと手を置く。
「何だかよく分からないが、まあそんな落ち込むな。」
「落ち込むに決まっているだろうが。」
「そんな、めそめそしていると時間勿体無いだろうが。」
「お前の所為だろうが、リョウ。」
「勝手に落ち込んだのはお前だろうが。」
いつの間にか対等な関係になっている事に二人は気づかない程自然な事だった。
「リョウ。」
「あー、もう分かった、んで、どこに行くんだよ。」
「そうだな…。」
アキラは何か考えて、そして、一つの場所を言う。
涼也は彼を睨むが、彼には涼也の視線なんて子猫のように可愛いもののように感じているかのように笑っている。
唇を尖らせる、涼也はこの人物をどこで見た事がある気がしてならなかったが、何故か霧がかかったかのように全く思い出す事ができなかった。
「決まったか?」
「腹黒?」
「それは俺よりももっと似合う奴がいるな。」
「誘拐犯。」
「同意を取ったが?」
「変態。」
「別に構やしないが、それでいいのか?」
「……。」
涼也は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ネーミングセンス皆無のようだな。」
「うっせー。」
涼也は必至で頭を動かすがなかなかいい名前が浮かばない。
いっその事「名無しの権兵衛」でいいのではないのかと考え始め、顔を上げると眩しいくらいの彼の笑みがあった。
「……アキラ。」
「……。」
フッと漏れた言葉に彼は驚いたような顔をして、そして、無言で涼也の頭を撫でた。
「それでいいのか?」
「えっ?」
「アキラって呼んだだろ?」
「……。」
勝手に漏れたなどと流石に言えなかった涼也は無言で頷いた。
「それじゃ、お前はリョウだな。」
「はぁ?」
何で自分の愛称を知っているんだと、胡乱な目つきでアキラを見上げると、彼は何やら楽しげに言う。
「昔買っていた犬にそっくりだ。」
「何だよそれっ!」
「キャンキャン鳴いて、俺の後を追いかけて来たんだ、お前みたいに可愛かったぞ。」
「俺は可愛くない、つーか、犬と一緒にするなっ!」
涼也が喚けばアキラは彼の頭を掻き交ぜる。
「リョウ。」
「……何だよアキラ。」
名を呼ばれ不服そうにアキラを見上げると彼は本当に楽しそうに笑っていた。
「呼んだだけだ。」
「何だよ、それ。」
「さあな。」
「……。」
涼也が眉を寄せるとアキラは涼也の眉間に指を突き付ける。
「そんな顔は禁止。」
「何様だよ。」
「アキラ様。」
「……。」
胸を張るアキラに涼也は呆気に取られるが、すぐに馬鹿馬鹿しくなり笑い出す。
「変な奴だな。」
「お前もな。」
「ああ?俺のどこがだよ。」
「いきなり泣き出す。」
「……うっせー、つーか、いつまでもその話を引っ張るなっ!」
先ほどの出来事を出され、涼也は顔を真っ赤にさせて、アキラを睨みつける。
「可愛いな。」
「男に可愛いなんてないだろうっ!」
「……。」
アキラはしばらく考え、何故か肩を落とした。
「どうしたんだ?」
「いや、知らず知らずのうちに毒されてたのだと気づいてな。」
よく分からない涼也だったが、何となくアキラが可愛そうになり、彼の肩にポンと手を置く。
「何だかよく分からないが、まあそんな落ち込むな。」
「落ち込むに決まっているだろうが。」
「そんな、めそめそしていると時間勿体無いだろうが。」
「お前の所為だろうが、リョウ。」
「勝手に落ち込んだのはお前だろうが。」
いつの間にか対等な関係になっている事に二人は気づかない程自然な事だった。
「リョウ。」
「あー、もう分かった、んで、どこに行くんだよ。」
「そうだな…。」
アキラは何か考えて、そして、一つの場所を言う。
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