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第二章
第二章「氷豹」4
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あのちょっとした騒ぎの後、涼也はどうやって自分の家に帰ったのかはっきりとは覚えていないが幸いにも誰にも捕まる事もなく無事に帰って来られた。
「……やば…、ショックが大きすぎた。」
額を押さえ、涼也は苦々しく表情を歪める。
そして、そんな彼の心情を察してなのか、一つの電話が入る。
「ん?」
携帯電話を取り出すと、そこには「帝(し)さん」の文字があった。
「はい、もしもし、涼也です。」
「ああ、夜分に悪いな。」
「いえ、どうしましたか?」
「いや、今夜うちのバカどもがやらかしたみたいだからな。」
「……。」
あまりにも早い情報に涼也は苦笑する。
「それで、何で俺なんかに電話するんです?」
「お前なんだろう?」
「……。」
分かっています、というようなしっかりとした口調で言われ、涼也は見えないと分かっているが肩を竦めた。
「本当に雪姉といい、貴方といい。」
「雪はこの事を知っていたのか。」
「はい。」
「そうか、それで、彼女が何を言わないのならいいんだが。」
「ああ、雪姉の為に俺に電話したんですね。」
何で雫が自分に電話をしてきたのか理由を察した涼也は呆れたような顔をした。
「本当に報われない恋をしていますね。」
「うるせー。」
「まあ、俺はいいですけど、貴方のお姉さんの予言通りにならないようにケツを死守してくださいね。」
「――っ!」
息を呑む雫に涼也は喉で笑う。
「なんたって王道のオレ様会長何でしょ?それならタチ食いの奴らに狙われているらしいし。」
「誰情報だよ。」
「雪姉。」
涼也の言葉に電話の向こうで凄まじい音が聞こえて涼也はギョッとなるが、すぐに聞こえた声に自分から話題にした事を哀れに思ってしまう。
「…何で…くそ…だから、腐女子は……いや、そうじゃなかったら、出会っていなかったかもしれねぇが……、それを差し引いても……。」
「あー……何かすみません…。」
「…………。」
ブツブツとまだ電話の向こうで言っているが、残念ながら涼也にはその言葉は聞き取れなかった。
「…えっと、話はそれだけですか?」
「いや、違うが。」
ようやくしっかりとした言葉に涼也はホッとすが、残念ながらこれからが彼にとっての地獄の時間になるとは涼也は気づいてすらいなかった。
「ではなんですか?」
「それはなーー。」
それから、夜が明けて涼也が登校する時間になるまで雫は自分の学校の愚痴、姉の愚痴、雪美に対しての愚痴、つまりは愚痴を涼也にぶちまけたのだった。
涼也は疲れ果てていたのだろう、普通なら適当に相槌を打てばいいものを彼は律儀にアドナイスなどをいちいちコメントするのであった。
こうして寝不足のまま学校に行った涼也は授業中に居眠りをしてしまい、その教科の先生に罰として想い教材を運ぶ事になってしまい、原因を作ったと思われる雫を恨むのだった。
「……やば…、ショックが大きすぎた。」
額を押さえ、涼也は苦々しく表情を歪める。
そして、そんな彼の心情を察してなのか、一つの電話が入る。
「ん?」
携帯電話を取り出すと、そこには「帝(し)さん」の文字があった。
「はい、もしもし、涼也です。」
「ああ、夜分に悪いな。」
「いえ、どうしましたか?」
「いや、今夜うちのバカどもがやらかしたみたいだからな。」
「……。」
あまりにも早い情報に涼也は苦笑する。
「それで、何で俺なんかに電話するんです?」
「お前なんだろう?」
「……。」
分かっています、というようなしっかりとした口調で言われ、涼也は見えないと分かっているが肩を竦めた。
「本当に雪姉といい、貴方といい。」
「雪はこの事を知っていたのか。」
「はい。」
「そうか、それで、彼女が何を言わないのならいいんだが。」
「ああ、雪姉の為に俺に電話したんですね。」
何で雫が自分に電話をしてきたのか理由を察した涼也は呆れたような顔をした。
「本当に報われない恋をしていますね。」
「うるせー。」
「まあ、俺はいいですけど、貴方のお姉さんの予言通りにならないようにケツを死守してくださいね。」
「――っ!」
息を呑む雫に涼也は喉で笑う。
「なんたって王道のオレ様会長何でしょ?それならタチ食いの奴らに狙われているらしいし。」
「誰情報だよ。」
「雪姉。」
涼也の言葉に電話の向こうで凄まじい音が聞こえて涼也はギョッとなるが、すぐに聞こえた声に自分から話題にした事を哀れに思ってしまう。
「…何で…くそ…だから、腐女子は……いや、そうじゃなかったら、出会っていなかったかもしれねぇが……、それを差し引いても……。」
「あー……何かすみません…。」
「…………。」
ブツブツとまだ電話の向こうで言っているが、残念ながら涼也にはその言葉は聞き取れなかった。
「…えっと、話はそれだけですか?」
「いや、違うが。」
ようやくしっかりとした言葉に涼也はホッとすが、残念ながらこれからが彼にとっての地獄の時間になるとは涼也は気づいてすらいなかった。
「ではなんですか?」
「それはなーー。」
それから、夜が明けて涼也が登校する時間になるまで雫は自分の学校の愚痴、姉の愚痴、雪美に対しての愚痴、つまりは愚痴を涼也にぶちまけたのだった。
涼也は疲れ果てていたのだろう、普通なら適当に相槌を打てばいいものを彼は律儀にアドナイスなどをいちいちコメントするのであった。
こうして寝不足のまま学校に行った涼也は授業中に居眠りをしてしまい、その教科の先生に罰として想い教材を運ぶ事になってしまい、原因を作ったと思われる雫を恨むのだった。
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