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第十章
第十章「バレンタイン」8
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バレンタイン当日の放課後――。
碧はこそこそと教室を出ようとしていた。
「あ~お。」
「……。」
普段なら名前を呼ばれ狂喜乱舞しているだろうが、今日に限ってはそんな喜びなんてものはなかった。
むしろ地獄の裁判を受けるような気持ちで碧は恐る恐る後ろを見れば、女子の制服を持った人。
金髪のかつらを持った人。
化粧道具を持った人。
「えっと。」
「な~に逃げようとしているの?」
「いや、トイレ。」
「行ってもいいよ。」
「でもね、ちゃんと戻ってくるよね?」
「というか、その鞄いらないよね?」
「あ~お。」
「す、すみませんっ!」
その場に土下座をする碧に女子は互いに顔を見合わせ、ため息を零す。
「ほら、さっさと立つ。」
「大丈夫、痛くないし。」
「そうそう、適当に数を数えていれば終わるし。」
「あっという間だし、それに病みつきになるかもよ?」
「いや、それ、絶対嘘だろう。」
「はいはい、それじゃ行くわよ。」
手の空いている女子が碧の両腕を掴みずるずると教室から引きずり出す。
「こえぇぇぇ。」
「……。」
無力な男性陣はこの光景をおとなしく見ている事しか出来なかった。
ちなみに今回の主役の片割れはただいま別学年の女子に呼び出され告白されまくっているそうな…。
碧はこそこそと教室を出ようとしていた。
「あ~お。」
「……。」
普段なら名前を呼ばれ狂喜乱舞しているだろうが、今日に限ってはそんな喜びなんてものはなかった。
むしろ地獄の裁判を受けるような気持ちで碧は恐る恐る後ろを見れば、女子の制服を持った人。
金髪のかつらを持った人。
化粧道具を持った人。
「えっと。」
「な~に逃げようとしているの?」
「いや、トイレ。」
「行ってもいいよ。」
「でもね、ちゃんと戻ってくるよね?」
「というか、その鞄いらないよね?」
「あ~お。」
「す、すみませんっ!」
その場に土下座をする碧に女子は互いに顔を見合わせ、ため息を零す。
「ほら、さっさと立つ。」
「大丈夫、痛くないし。」
「そうそう、適当に数を数えていれば終わるし。」
「あっという間だし、それに病みつきになるかもよ?」
「いや、それ、絶対嘘だろう。」
「はいはい、それじゃ行くわよ。」
手の空いている女子が碧の両腕を掴みずるずると教室から引きずり出す。
「こえぇぇぇ。」
「……。」
無力な男性陣はこの光景をおとなしく見ている事しか出来なかった。
ちなみに今回の主役の片割れはただいま別学年の女子に呼び出され告白されまくっているそうな…。
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