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第七章
第七章「ハロウィン」13
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「大丈夫かよ。」
そっと差し伸べられた手に碧は凍り付く。
「何だよ。」
「何でよりによってお前なんだ。」
「……。」
碧の言葉に手を差し伸べた樹は眉間に皺を寄せる。
「おい、手を差し伸べられてその言葉はあんまりじゃねぇのかよ。」
「だって、本当の事だろう。」
「……。」
碧は自分たちに向けられる視線の意味を何となく理解しているのか、先ほどとは違う意味で泣きそうになる。
一方、手を差し出した樹はその視線の意味が分かっていないのか、碧の態度に怒りを抱き始めている。
「素直じゃないな。」
「十分素直だよ。」
碧は頭を抱えたくなるが、ふっと自分たちを見つめてくる視線の中で冷たいもの感じて、そちらの方に恐る恐る視線を向けるとーー。
ニッコリと慈母のような笑みを浮かべる藍妃の姿があった。
サッと血の気の引いた顔をした碧に樹は体調でも崩したのではないかと、心配する。
「おい、お前顔色悪いぞ。」
「……。」
「……抜けるか?」
自分を心配する樹に碧はある一点を見た瞬間、その首を横にぶんぶんと振りまくった。
「あら、あおちゃーん、そんなに振ったらせっかく綺麗にしたのに乱れちゃうわよ。」
「ひっ!」
ぬっとあらわれた藍妃に碧はまるで化け物でも現れたかのようなそんな悲鳴を上げる。
そして、上げられた本人は意に介していないのか平然としたような笑みを浮かべている。
「ふふふ。」
「……。」
笑う藍妃、青ざめる碧、この状況でようやく樹は自分が余計な事に首を突っ込んでしまったのだと理解した。
理解したが、もうすでに巻き込まれている身としてはここで引く事が出来ないので、彼は男らしく腹を括った。
「ほら、立ち上がれ。」
「うおっ!」
無理やり碧の手を掴み、樹は彼を引き上げた。
引き上げた拍子に碧はたたらを踏んでしまうが、こけてしまう寸前のところで樹が彼を抱きしめる。
「ほら、大人しく笑ってろよ。」
「なっ、なっ!」
耳元で樹が碧の耳にささやく。
すると、碧の顔が真っ赤に染まるが、残念ながら樹は周囲の反応を見ていた為にその事に気づきはしない。
「どうせ何をしても変に目立つんだ。堂々としてろ。」
「……。」
樹の言葉にスッと熱が下がっていった碧は恨みがましそうに彼を睨む。
「お前が言うな。」
「何がだ。」
「お前のその容姿、恰好この中で一番目立つじゃないか。」
「…オレよりもお前のその容姿の方がよっぽど目立つと思うがな。」
「……。」
樹の言葉に碧は自分を見下ろし、納得してしまう。
「目立つけど、どうせ似合ってないだろう。」
「何処がだ、一瞬本当に女かと疑ったぞ。」
「……あんがとな。」
全然嬉しそうじゃなく、むしろ怒っているように碧は言い返す。
「マジで残り時間やり過ごすか。」
「……なあ、どうせならお芝居だと思ったらどうだ?」
「芝居?」
「ああ、どうせこんな仮装だ、素面でやるのはマジ辛いだろう。」
「後で芝居だと思って恥ずかしくなるが…、まあ、今を乗り切ったらどうせ、後は黒歴史だ。」
「どうせ、こんな仮装をした時点で黒歴史だしな。」
「なら、その話のってやる。」
ニカリと笑う碧に樹は共犯者のようなそんな悪い笑みを浮かべる。
「そんじゃ、よろしくな花嫁さん。」
「分かった。旦那様。」
そっと差し伸べられた手に碧は凍り付く。
「何だよ。」
「何でよりによってお前なんだ。」
「……。」
碧の言葉に手を差し伸べた樹は眉間に皺を寄せる。
「おい、手を差し伸べられてその言葉はあんまりじゃねぇのかよ。」
「だって、本当の事だろう。」
「……。」
碧は自分たちに向けられる視線の意味を何となく理解しているのか、先ほどとは違う意味で泣きそうになる。
一方、手を差し出した樹はその視線の意味が分かっていないのか、碧の態度に怒りを抱き始めている。
「素直じゃないな。」
「十分素直だよ。」
碧は頭を抱えたくなるが、ふっと自分たちを見つめてくる視線の中で冷たいもの感じて、そちらの方に恐る恐る視線を向けるとーー。
ニッコリと慈母のような笑みを浮かべる藍妃の姿があった。
サッと血の気の引いた顔をした碧に樹は体調でも崩したのではないかと、心配する。
「おい、お前顔色悪いぞ。」
「……。」
「……抜けるか?」
自分を心配する樹に碧はある一点を見た瞬間、その首を横にぶんぶんと振りまくった。
「あら、あおちゃーん、そんなに振ったらせっかく綺麗にしたのに乱れちゃうわよ。」
「ひっ!」
ぬっとあらわれた藍妃に碧はまるで化け物でも現れたかのようなそんな悲鳴を上げる。
そして、上げられた本人は意に介していないのか平然としたような笑みを浮かべている。
「ふふふ。」
「……。」
笑う藍妃、青ざめる碧、この状況でようやく樹は自分が余計な事に首を突っ込んでしまったのだと理解した。
理解したが、もうすでに巻き込まれている身としてはここで引く事が出来ないので、彼は男らしく腹を括った。
「ほら、立ち上がれ。」
「うおっ!」
無理やり碧の手を掴み、樹は彼を引き上げた。
引き上げた拍子に碧はたたらを踏んでしまうが、こけてしまう寸前のところで樹が彼を抱きしめる。
「ほら、大人しく笑ってろよ。」
「なっ、なっ!」
耳元で樹が碧の耳にささやく。
すると、碧の顔が真っ赤に染まるが、残念ながら樹は周囲の反応を見ていた為にその事に気づきはしない。
「どうせ何をしても変に目立つんだ。堂々としてろ。」
「……。」
樹の言葉にスッと熱が下がっていった碧は恨みがましそうに彼を睨む。
「お前が言うな。」
「何がだ。」
「お前のその容姿、恰好この中で一番目立つじゃないか。」
「…オレよりもお前のその容姿の方がよっぽど目立つと思うがな。」
「……。」
樹の言葉に碧は自分を見下ろし、納得してしまう。
「目立つけど、どうせ似合ってないだろう。」
「何処がだ、一瞬本当に女かと疑ったぞ。」
「……あんがとな。」
全然嬉しそうじゃなく、むしろ怒っているように碧は言い返す。
「マジで残り時間やり過ごすか。」
「……なあ、どうせならお芝居だと思ったらどうだ?」
「芝居?」
「ああ、どうせこんな仮装だ、素面でやるのはマジ辛いだろう。」
「後で芝居だと思って恥ずかしくなるが…、まあ、今を乗り切ったらどうせ、後は黒歴史だ。」
「どうせ、こんな仮装をした時点で黒歴史だしな。」
「なら、その話のってやる。」
ニカリと笑う碧に樹は共犯者のようなそんな悪い笑みを浮かべる。
「そんじゃ、よろしくな花嫁さん。」
「分かった。旦那様。」
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