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北斗サイド
屋上でのひと時
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「…………くそっ!」
足の速さには正直自信はあった。
なのに、彼女に追いつく事が出来ない。
他人の視線が突き刺さるが、それでも、徐々に人が少ない区域に足を踏み入れてからは迷わず走る。
向こうは疲れ知らずの体だが、こっちは生身だぞ。
……。
でも、あいつの顔色は悪かった。
今すぐ抱きしめたいのに、何で逃げるんだよ。
階段を駆け上がり、そして、俺は扉を大きく開く。
「スピカっ!」
情けない。
肩で大きく息をする。
苦しい。
だけど、目を離すな。
顔を上げて、スピカを見る。
青ざめた顔をしている彼女。
その口からは俺の名前が漏れる。
「北斗。」
「どうした、調子が悪いのか?」
幽霊に対して調子が悪いとかあるのか?
まあいい、それ以外思いつく言葉もねぇ。
そんな事を頭の片隅で思いながらスピカに俺は問う。
だけど、彼女は俺のそんな気持ちを理解していないのか。
隠すような笑みを浮かべる。
「大丈夫…。」
「……。」
どうして隠すんだ。
俺はそんなに頼りないのかよ。
スピカの細い腕を掴む。
本当に細い。
もう少し力を入れてしまえば折れてしまいそうだ。
取り敢えず、俺は彼女を壁際に彼女を座らせる。
そして、どかりと俺も座る。
力を使って少しでもこいつを温めたかった。
消えてしまいそうだと思った事もあった。
でも、今は消えてしまうというよりは、折れてしまうように思えた。
ポキリと折れた彼女は立ち直る事が出来るのだろうか。
難しい気がした。
もっと、俺を頼ってほしい。
だけど、素直じゃないこいつは俺を頼ろうとはしない。
……しばらくして、スピカの震えが止まっていることに気づく。
結局一人で解決しやがって。
俺は彼女に気づかれないように小さくため息を零す。
本当に情けないな。
誤魔化すように俺は盛大なため息を吐く。
「はー、結局飯くいっぱぐれた。」
「ご愁傷様。」
クスクスと笑うスピカ。
笑うのは良いけど……。
マジで腹が鳴ってしまった。
クソ、情けない。
本当にあのバ会長たちは俺達にとっての疫病神だな。
どうにかならないか。
不幸中の幸いはあのバ会長は3年だ。
だから、そう長い間顔を合わせる事はない。
クリスマスが終われば今の生徒会は解散となる。
そして、来年の役員が年明けに決める。
まあ、来年の入学予定者の中に候補が数名いるからそれも考慮しないとな。
はあ、面倒だ。
何と余計な事を考えていたが、可哀そうな俺の腹は未だに悲し気に鳴いていた。
「食堂は開いてないの?」
「開いてねぇ。」
まあ、開いていない可能性が高いだろうな。
「そっか。」
「……。」
なんか色々面倒になってきた。
どうせ、食事を抜いたところで死にはしない。
俺は力を込めて、スピカにもたれ掛かる。
確かに彼女は存在するのに。
力を使わないと触る事すらできない。
何でだろうな…。
「北斗、能力の無駄遣いだよ。」
「いいんだよ。」
どうせ、俺の力だ。
どう扱ってもいいだろう。
俺は遠慮というものをあえて忘れて、スピカにのしかかる。
スピカの苦し気な声が聞こえたが無視だ。
「寝る。」
「それじゃ、お腹は膨れないよ。」
「寝て紛らわす。」
「……。」
寝不足だし、どうにかなるだろう。
目を瞑る。
だんだん気持ちよくなってきた。
頭に何かが触れている。
気持ちいいな……。
そして、俺は本当に寝てしまった。
一時間睡眠をとったおかげで頭はすっきりしているが、それでも、腹が減っていた。
まあ、仕方ないかと俺達は生徒会室に戻ると、なんと、顧問が差し入れをしてくれていた。
嬉々として食べる俺に幾人か引きながら訪ねてきた。
あのバ会長に遭遇してくいっぱぐれたと言えば何故か彼女、彼らは自分たちの持っていたお菓子を俺に渡してきた。
ああ、やっぱりあのバ会長は他の連中にも嫌われているのだと、再確認したのだった。
足の速さには正直自信はあった。
なのに、彼女に追いつく事が出来ない。
他人の視線が突き刺さるが、それでも、徐々に人が少ない区域に足を踏み入れてからは迷わず走る。
向こうは疲れ知らずの体だが、こっちは生身だぞ。
……。
でも、あいつの顔色は悪かった。
今すぐ抱きしめたいのに、何で逃げるんだよ。
階段を駆け上がり、そして、俺は扉を大きく開く。
「スピカっ!」
情けない。
肩で大きく息をする。
苦しい。
だけど、目を離すな。
顔を上げて、スピカを見る。
青ざめた顔をしている彼女。
その口からは俺の名前が漏れる。
「北斗。」
「どうした、調子が悪いのか?」
幽霊に対して調子が悪いとかあるのか?
まあいい、それ以外思いつく言葉もねぇ。
そんな事を頭の片隅で思いながらスピカに俺は問う。
だけど、彼女は俺のそんな気持ちを理解していないのか。
隠すような笑みを浮かべる。
「大丈夫…。」
「……。」
どうして隠すんだ。
俺はそんなに頼りないのかよ。
スピカの細い腕を掴む。
本当に細い。
もう少し力を入れてしまえば折れてしまいそうだ。
取り敢えず、俺は彼女を壁際に彼女を座らせる。
そして、どかりと俺も座る。
力を使って少しでもこいつを温めたかった。
消えてしまいそうだと思った事もあった。
でも、今は消えてしまうというよりは、折れてしまうように思えた。
ポキリと折れた彼女は立ち直る事が出来るのだろうか。
難しい気がした。
もっと、俺を頼ってほしい。
だけど、素直じゃないこいつは俺を頼ろうとはしない。
……しばらくして、スピカの震えが止まっていることに気づく。
結局一人で解決しやがって。
俺は彼女に気づかれないように小さくため息を零す。
本当に情けないな。
誤魔化すように俺は盛大なため息を吐く。
「はー、結局飯くいっぱぐれた。」
「ご愁傷様。」
クスクスと笑うスピカ。
笑うのは良いけど……。
マジで腹が鳴ってしまった。
クソ、情けない。
本当にあのバ会長たちは俺達にとっての疫病神だな。
どうにかならないか。
不幸中の幸いはあのバ会長は3年だ。
だから、そう長い間顔を合わせる事はない。
クリスマスが終われば今の生徒会は解散となる。
そして、来年の役員が年明けに決める。
まあ、来年の入学予定者の中に候補が数名いるからそれも考慮しないとな。
はあ、面倒だ。
何と余計な事を考えていたが、可哀そうな俺の腹は未だに悲し気に鳴いていた。
「食堂は開いてないの?」
「開いてねぇ。」
まあ、開いていない可能性が高いだろうな。
「そっか。」
「……。」
なんか色々面倒になってきた。
どうせ、食事を抜いたところで死にはしない。
俺は力を込めて、スピカにもたれ掛かる。
確かに彼女は存在するのに。
力を使わないと触る事すらできない。
何でだろうな…。
「北斗、能力の無駄遣いだよ。」
「いいんだよ。」
どうせ、俺の力だ。
どう扱ってもいいだろう。
俺は遠慮というものをあえて忘れて、スピカにのしかかる。
スピカの苦し気な声が聞こえたが無視だ。
「寝る。」
「それじゃ、お腹は膨れないよ。」
「寝て紛らわす。」
「……。」
寝不足だし、どうにかなるだろう。
目を瞑る。
だんだん気持ちよくなってきた。
頭に何かが触れている。
気持ちいいな……。
そして、俺は本当に寝てしまった。
一時間睡眠をとったおかげで頭はすっきりしているが、それでも、腹が減っていた。
まあ、仕方ないかと俺達は生徒会室に戻ると、なんと、顧問が差し入れをしてくれていた。
嬉々として食べる俺に幾人か引きながら訪ねてきた。
あのバ会長に遭遇してくいっぱぐれたと言えば何故か彼女、彼らは自分たちの持っていたお菓子を俺に渡してきた。
ああ、やっぱりあのバ会長は他の連中にも嫌われているのだと、再確認したのだった。
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