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北斗サイド

遭遇はいりません

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「……げっ。」
「あっ……。」

 最悪だ。
 何でこういう時に限って嫌な事に当たってしまうのだろうか。
 しかも、スピカといる貴重な時間なのに…。

「あっ!」
「……。」

 しかも、最悪な事に向こうまでこっちに気づきやがった。
 マジであり得ねぇだろう。

「君、ちょっと、そこにいて。」

 無視しよう。
 そう思って踵を返そうとしたのに、遅かった。
 くそ。
 あり得ないだろう。

「君、この前の体育祭で助けてくれた人だよね。」
「……。」

 話しかけんな。
 思わず口に出しそうになった。
 いや、出してもいいかもしれねぇけど。
 マジ何の用だよ。
 つーか、お前を助けた記憶なんてない。
 巻き込まれたんだよ、こっちは。
 面倒ごとばっかり起こしやがって。
 本当にあり得ないんだけど?

「おい、こいつが話しかけているのに、シカトかよ。」
「……。」

 つーか、バ会長いたですか。
 全然気付かなった。
 というか、仕事はどうしたんですか?
 あんなに書類を置いて行ったのに、ここで何をしてやがるんですか?
 遊ぶのは結構ですが、自分のやる事はやってください。
 そう胸の奥でネチネチと文句を言う。
 まあ、言ったで面倒ごとしか生まれないので、猫を五百匹くらいかぶる。

「申し訳ございませんが、体育祭は色々な事がありましたので、記憶にございません。」
「そうなんだ、あっ、えっと、昼休みに体育館裏でたくさんの人に囲まれたところを助けてくれたんだけど、覚えてない?」
「……。」

 だーかーらー、助けてねぇ。
 つーか、記憶から抹殺したいから掘り起こすな。
 面倒な奴は自分が可愛いと思っているのか、首を傾ける。
 あざとい。
 気持ち悪い。
 そんな動作はスピカの方が似合っている。
 ああ、俺の癒しが欲しい。
 抱きしめたい。
 可愛がりたい。
 何で俺はこんな目に遭っているんだろう。

「あの時は本当にありがとう、正直怖くって、泣きそうだったけど、貴方が助けてくれて本当に嬉しかったんだ。」

 つーか、こいつの目は気持ち悪い。
 笑っているのに、笑っていない。
 昏いやな目をしている。
 まるで、人を人と思っていない。
 品定めをしている、そんな目だ。
 肉食獣のような女どもの方がまだ可愛い。
 こいつはそんなんじゃない。
 気持ち悪い。
 さっさとどっかいかねぇかな。

「……。」

 スピカは腕を摩っていた。
 寒いのか?
 だったら、俺の熱ですぐにでも温めたい。
 だけど、彼女の顔は寒さで青ざめているんじゃない。
 恐怖で青ざめていた。
 引き離さないといけない。
 何故か俺はそう思った。

「会長、すみませんが、俺は見回りがありますので、この女性を引き取っていただけないでしょうか。」

 バ会長は俺の言い方が癇に障ったんだろう、何か言いたげな感じだったが。
 それでも、そこの奴が大切だったのかそいつの肩を抱いた。

「こいつも仕事があるんだ。」
「でも、もっとお話がしたいんだけど。」
「また今度な。」
「うー、そう言って、またはぐらかそうとする。」

 ようやくそいつの意識がバ会長に移った。
 助かった。
 今回ばかりはこの役立たずに感謝してもいいと思った。

「ごめん、北斗。」

 スピカは申し訳なさそうに謝ってきた。
 そして、この場に居たくなかったのだろう。
 すぐさま来た道を戻っている。
 俺はそれをすぐに追いかける。
 その時、舌打ちが聞こえた。
 振り返ると、あの女が俺を見ていた。
 その目はすごく嫌なものを纏っていた。

 ゾクリ

 怖いと思った。
 俺はスピカが無性に心配になり、すぐに駆け足になる。
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