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北斗サイド

一歩引いてイベントを見た 

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「……。」
「なあ。」
「……。」
「あれは、何の茶番だ?」
「……。」

 目の前に広がる喜劇に俺は知っていそうなスピカに問うた。
 問うたのだが、スピカは答えない。
 いや、答えられないのだろうか、ただただ、半眼になりながらこの茶番を見ている。

「あの、先輩、一緒に来てくれませんか?」
「ああ、勿論だ。」

 気持ち悪い。
 ああ、何でこうなってしまったんだ…。
 と言うかあのバ会長マジで何をやっているんだ。仕事しろよ、仕事。
 そして、いつの間にか借り物で女生徒はあのバ会長を借りてゴールしていた。

「確か、好感度が高い人が選ばれるんだっけ。」

 スピカの言葉にあの姉が「視た」内容なのかよ、とうんざりする。

「あっそ。」
「というか、あの子が、ヒロインか。」

 スピカはぼんやりとそいつを見ていた。
 何となく嫌な感じがしたが、それが何か分からず、じっと観察するようにスピカを見つめる。
 徐々に顔色が悪くなる彼女だったが、いきなり胸を押さえた。

「――っ!」
「スピカ?」
「何でもないよ。」

 彼女はそう言って笑うが、それはどこか自分も周りも誤魔化すような笑みだった。

「本当か?」
「うん。」
「……。」

 念を押すが、スピカは頑固だからか頷く事しかしない。
 それは彼女らしいが、それでも、頼ってくれない方としては寂しい。
 でも、俺はそれをひた隠す。

「あっ、ゴールした。」

 いつの間にか彼女の関心はバ会長たちの方に移っていた。
 それはそれでなんか腹立たしいが、多分これ以上話したところで何もないだろう。
 俺は気持ちを切り替えてバ会長たちを見れば、何と彼らは一位だった。
 何か胸を張っているあいつを見ているとマジで腹立つ。
 仕事をしろよ、仕事。
 こっちは必死で当日も頑張っているんだぞ。

「バ会長、一位か、最下位だったらよかったのに。」
「あっ、あの人会長なんだ。」

 ジッとバ会長を見つめるスピカ。
 それがむかつく。
 何でそっちを凝視しているんだ、そう、ムカムカシテいたが。

「…………ふーん。」

 どこか蔑んだような目をするスピカに俺は驚きを隠せない。
 こいつでも、そんな顔をするのか。

「スピカ?」

 俺は取り敢えず彼女に声をかけてみた。

「ねー、北斗、薬って過ぎれば毒になるというけど、どう思う?」
「どうって…。」

 何をどう考えたらそんな恐ろしい所までたどり着くんだ。
 人殺しは駄目だろう。
 毒なんてダメだ。
 というか、バ会長こいつに何をしたんだ。
 さっきまで知らないような感じだったのに、見た目か?
 見た目が嫌なのか?

「少しくらいやってもいいかな?」

 いやいや、駄目だろう。
 こいつは一体何を考えているんだ。

「お前、マジ何を考えているんだ。」
「うーん、アレが使えなくなればいいなー、なんて。」

 あれって、アレの事かっ!
 同じ男として、思わず体が強張る。
 本気か?
 ……本気だ。
 その目は嘘を吐くような目をしていない。

「す、スピカさん…。」

 人を殺すような毒じゃない事はよかったのか、悪かったのか。
 俺は取り敢えず彼女の名前を呼んだ。

「どうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよ。」

 俺は頭を抱え、本気で分かっていないスピカにうんざりする。
 頼むから少しは分かってくれ。

「やらねぇよな。」
「方法が分からないからね。」
「……。」

 ようやく俺は先ほどのやりとは彼女の本気ではなかったことに気づいた。
 そう言えば、さっき、なればいいな、とかあったらいいな、みたいなニュアンスだったな。
 何というか、内容が内容の所為で全く頭に入ってなかった。
 俺は心底ほっとして、胸をなでおろす。

「お前は本当に何もするな。」
「えー。」
「いいな。」
「はーい。」
「……。」

 心からの言葉に彼女は何処か不服そうな顔をしているが、念を押すと唇を尖らせながらも肯定の言葉を言う。
 でも、あまり信用できないのはなんでだろうな。
 こいつならなでもありなような気がする。
 幽霊でここに存在しているし。
 それにこいつの能力もめちゃくちゃだしな。
 俺はこいつにばかり目がいっていて気づいていなかったが、こいつはあのゲームのイベントが今行われている事を言っていた。
 それは確実にこの一回だけとは限らないのだ。
 俺はその事に気づいていなかった。
 そして、それはこいつも同じだった。
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