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幽霊少女サイド

ギブギブッ

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「北斗?」

 北斗が連れてきたのはどこかの空き教室だった。

「…北斗。」

 返事を返してくれない北斗に私はもう一度呼びかけると、彼は体を反転させて私を抱きしめてきた。

「えっ?」

 行き成りの事で私はびっくりしてしまい固まってしまう。
 そりゃ、霊体の時はよくくっついていたけど、だけど、こんなにもダイレクトに北斗のぬくもりとか心音とかこんなにも感じなかった。
 と言うか、自分の心音の方がうるさい。
 北斗にも聞こえてしまうのではないかと言うくらい、自分の耳に心臓の音が聞こえてしまう。

「……言い逃げしやがって。」
「えっ?」

 あまりにも低い声に私は首を傾げながら顔を上げる、うん、悲鳴を上げかけた。

「ほ、北斗さん?」

 目が座った北斗がそこにいた。
 あっ、なんか色々まずいかもしれない。

「お前さ、人がどんな気持ちであんな言葉を言ったと思っているんだ。」
「えっと。」
「それなのに、自分だけ告白して消えやがって。」
「こ、告白っ!」

 えっ、私したっけ?

 あっ、したや…。

 私はあの時の事を思い出し、自分がはっきりと告白をしていたことに気づく。
 いや、だって、もう二度と北斗に会えないと思っていたし、あの時。
 だから、言うだけならと、思っていたかも…。

「しかも、誰がお前の他に好きな奴がいるって?」
「あ、あははは。」

 私の口から乾いた笑いが漏れる。

 やばい、殺される。

 殺気立つ北斗に私はあの時の自分をぶん殴りたくなる。
 今思えば支離滅裂だし、いや、だってさ、あん時北斗を傷つける方法ってあれしか考えつかなかったんだよ?

 やばい、やばい。

「お前さ、俺の気持ちに気づいてあんなこと言っただろう?」

 私はすっと視線を逸らそうとするけど、がしりと私の腰を強く抱きしめる。
 ぐえっと汚い声が私の口から洩れるけど、北斗はそれを無視する。
 ちょっと、マジ苦しい、離して。
 そう言いたいのに、私の口から洩れるのはうめき声だけだった。

「残念だったな、俺は絶対にお前を離さない。」
「……。」
「姉貴に止められたんだよ。」

 一体何が、というか、いい加減話して、息が、息が苦しい。

「本当はお前の所に行って見舞いついでに契約書にサインしてもらったのにさ。」

 ちょっと、それ何っ!

 マジ怖いんですけどっ!

「まあ、姉貴の止められた範囲が俺からお前に近づかない、という話しだったけどな、まさか、お前から俺のテリトリーに入り込むなんてな。」

 やばい、お腹を空かせた肉食獣の巣の中に入り込んでしまった小動物の気分だ。

 というか、まさしく、それだよ、私っ!

「今更逃げられると思うか?」

 逃げられないっ!

 やばい、やばいっ!

 警鐘がガンガンと鳴っているけど、マジで逃げられない。

 というか、そろそろ、息が、命の危機だよ。
 私はもう死ぬ気でもがきだす。

「ほお、まだ逃げられると思うのか?」

 精神的にも物理的にも難しいのは分かっている、分かっているけどっ!

 そろそろ、マジで死ぬからっ!

 私は最終手段として自分の能力を使う。

 私の能力は治癒だけど、薬と言うのは紙一重だ。

 毒にもなる。

 という事で、私は彼が触れる面積に痺れるようにと念じる。

「――っ!」

 北斗は何かに気づいたようだけど、もう遅い。
 私は彼の手の力が抜けるのを感じ取り、最後の力でもがき、彼の腕から抜け出した。

「ひゅーはー、ひゅーはー、し、死ぬかと思った…。」

 荒い息とせき込みながら私は何とか生還し、涙目で北斗を睨む。

「北斗は私を殺す気だったの?」

 私の痺れ薬を受けた北斗はようやく自分が私を絞め殺すところだった事に気づく。

「悪い。」
「本当に、私が悪いのも分かるのけど、絞め殺すのは勘弁してよ、もう一度霊体になるどころが今度は本当に死んじゃうんだからね。」

 私は息を整えると北斗を睨む。

「話聞きたいけど、もうちょっとしびれていてね。」

 私は色々と心の準備をしようとしたが、残念な頃に私の心が落ち着く前にお母さんからの連絡が入ってしまった。

「……彩実。」
「あははは。」

 しびれながら北斗は恨みがましく私を睨む。
 うん、時間切れだわ。

「今日の所は見逃してやる、だから、今週の土曜日の午後時間空けとけ。」
「えっ?」
「大丈夫だ、次は絞め殺すなんてへまはしねぇよ。」
「……。」

 北斗の本気の目に私は天を仰ぐ。

 土曜日の私は生きているのだろうか?

 私は北斗のしびれを取ってあげてから、北斗のお陰で迷うことなく校門前まで連れて行ってくれた。
 そして、家に帰ったら一通のメールが入っていた。
 それは北斗からで、一体いつ、私のメール番号なんてしったのだろう。
 そんな事を疑問に思ったが、まあ、北斗だからな、と私はもう諦めモードでそんな事を考えた。
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