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第一章
契約
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「二つ選択肢を上げます。」
「……えー、二つだけ?」
『おい。』
ゲシっと狼に踏まれる男に私は無視を決め込む。
「一つ、ここで私に殺されるか。」
「別にいいけど。」
「……。」
ケロリとしている男に私の方が戸惑うが、それを表に出すことなく、冷めた目で彼を見る。
「死ぬのよ?」
「別に、里じゃ、任務が失敗するのは死を意味するからな。」
「そう。」
「んで、もう一つは?」
「私の協力者になる事。」
「……。」
スッと男の目が冷え、狼は興味深そう私を見る。
「ジェダイドは「力」を狙われているし、その「力」でできたセラフィナイトという精霊も狙われるわ。」
「で?」
「私は彼らを守りたい。」
「……そいつらは、お姫さんにとって何なんだ?ダチか?」
「……彼らは。」
私は自分の手を見つめ、そして、目を閉じ、口を開く。
「ジェダイドは大切な人。私の命よりもずっと、ずっと大切な人。そして、セラフィナイトは大切な人との子どもみたいなものかな。」
「……えっ?」
ギョッとする男に私は首を傾げる。
「お前、子ども居るのか?こんな子どもなのに、相手はそんなにおっさんなのかっ!」
私は冷たい笑みを受けべ、ナイフを男の喉元に突き付ける。
「ジェダイドの情報を知っていてそんな事を言うんですか?」
「あ、いや……そういや、十二の餓鬼とか。」
『愚か者…。』
「だってさ、こいつの言い方が悪いだろうが。」
『この方はみたいなとちゃんと言っておったぞ。』
「そうかもしれないけど。」
「いい加減黙ってくださらない?」
「はい。」
私が冷気を発すると男は黙り込む。
「私は真剣にお答えしたのに茶化すなんて……、やはり取引は止めて一気に仕留めてしまった方がよかったかしら…。」
徐々に後悔し始めるが、残念ながら私の手札が少ないので、少しでも手を打てるなら打ってしまった方がいいだろう。
頭はあまりよろしくはないかもしれないが、この男の戦闘能力は確実に上だから。
『……聖女……姫よ。』
狼はそっと私を見上げる。
『姫はどうする気なのだ、この世界を。』
「役目はジェダイドの代わりに私が果たします、例え、逃げたところで、ジェダイドたちは追い込まれるに決まっていますから。」
『そうか。』
「前」は成り行きであそこまでいったかが、今考えても私は役目から逃げる事はいくらでも方法を考えられるが、ジェダイドは無理だった。
彼は貴族であり、王からの勅命があればその通りに動かなくてはならない、逃げる事は出来ない。
それならば、先回りをして潰してしまえばいいのだ。
だから、私は役目から逃げない。
『幼き身なのにもう先を考えておられるのだな。』
「年齢など関係ありません、もう事態は動き出しているのですから。私は現状を見て、そして、先を読み動かなくてはなりませんから。」
『そうか……姫はもう覚悟を決めておらてるのだな。』
「ええ。」
『一つ聞いてもよろしいか。』
「何がですか?」
『姫は自分が聖女ではないと言っておられるが、その根拠は何なのだ。』
「聖女と呼ばれる家系の人にはもう娘がいらっしゃいます、その方が聖女となりますでしょう。その人がきっとジェダイドの妻となりますから。」
『……。』
何か言いたそうな顔をする狼にフッと私は神が自分に対して「癒しのモノ」と呼んでいた事に気づき、首を振る。
違う。自分はジェダイドの身代わり人形だった、そして、その人形だった時の「力」が今に引き継がれているから、勘違いされているのだ。
私はそう自分に言い聞かせる。
「それで、貴方はどうします?死にます?それとも私に手を貸します?」
「…………まあ、お姫さんについていった方が退屈はしそうにないな。」
『馬鹿者が。』
「まあ、今はその返答で構いませんが、後悔しないでくださいな。」
私は四つの光を呼び起こす。
「風、地、水、火よ 彼の者と契約を交わす 彼の者は『私――マラカイトの意思に反する行為をした場合死す事を』 私、マラカイトは彼の者に『風の力の譲渡』を対価に契約す。」
「何だよこれ。」
初めて見るのか男は驚きを隠せないでいた。
そして、四つの光は一つとなり一枚の紙となる。
「これに拇印を押してください。」
私は親指を噛みちぎり血を流すと紙に押し付ける、すると、紙は光りを発する。
男は戸惑いを見せるが、意を決したのか、私と同じように指を噛み切り。血を紙に押し付ける。
紙は一瞬にして燃え盛り、灰となって風に乗って光の粒となり消えた。
「契約はなされました。」
「そうか。」
「それじゃ、馬車馬のように働いてくださいな。」
ニッコリと私が微笑むと男は顔を引きつらせた。
「オレ早まった?」
『覇王に手を出した時点で、もう遅かったのだ、諦めろ、愚か者。』
「そういえば、名前を訊いていませんでしたね。」
「金剛だ。」
『嵐牙だ。』
「私の名前はマラカイトと申します、それではよろしくお願いしますね、共犯者たち。」
「……えー、二つだけ?」
『おい。』
ゲシっと狼に踏まれる男に私は無視を決め込む。
「一つ、ここで私に殺されるか。」
「別にいいけど。」
「……。」
ケロリとしている男に私の方が戸惑うが、それを表に出すことなく、冷めた目で彼を見る。
「死ぬのよ?」
「別に、里じゃ、任務が失敗するのは死を意味するからな。」
「そう。」
「んで、もう一つは?」
「私の協力者になる事。」
「……。」
スッと男の目が冷え、狼は興味深そう私を見る。
「ジェダイドは「力」を狙われているし、その「力」でできたセラフィナイトという精霊も狙われるわ。」
「で?」
「私は彼らを守りたい。」
「……そいつらは、お姫さんにとって何なんだ?ダチか?」
「……彼らは。」
私は自分の手を見つめ、そして、目を閉じ、口を開く。
「ジェダイドは大切な人。私の命よりもずっと、ずっと大切な人。そして、セラフィナイトは大切な人との子どもみたいなものかな。」
「……えっ?」
ギョッとする男に私は首を傾げる。
「お前、子ども居るのか?こんな子どもなのに、相手はそんなにおっさんなのかっ!」
私は冷たい笑みを受けべ、ナイフを男の喉元に突き付ける。
「ジェダイドの情報を知っていてそんな事を言うんですか?」
「あ、いや……そういや、十二の餓鬼とか。」
『愚か者…。』
「だってさ、こいつの言い方が悪いだろうが。」
『この方はみたいなとちゃんと言っておったぞ。』
「そうかもしれないけど。」
「いい加減黙ってくださらない?」
「はい。」
私が冷気を発すると男は黙り込む。
「私は真剣にお答えしたのに茶化すなんて……、やはり取引は止めて一気に仕留めてしまった方がよかったかしら…。」
徐々に後悔し始めるが、残念ながら私の手札が少ないので、少しでも手を打てるなら打ってしまった方がいいだろう。
頭はあまりよろしくはないかもしれないが、この男の戦闘能力は確実に上だから。
『……聖女……姫よ。』
狼はそっと私を見上げる。
『姫はどうする気なのだ、この世界を。』
「役目はジェダイドの代わりに私が果たします、例え、逃げたところで、ジェダイドたちは追い込まれるに決まっていますから。」
『そうか。』
「前」は成り行きであそこまでいったかが、今考えても私は役目から逃げる事はいくらでも方法を考えられるが、ジェダイドは無理だった。
彼は貴族であり、王からの勅命があればその通りに動かなくてはならない、逃げる事は出来ない。
それならば、先回りをして潰してしまえばいいのだ。
だから、私は役目から逃げない。
『幼き身なのにもう先を考えておられるのだな。』
「年齢など関係ありません、もう事態は動き出しているのですから。私は現状を見て、そして、先を読み動かなくてはなりませんから。」
『そうか……姫はもう覚悟を決めておらてるのだな。』
「ええ。」
『一つ聞いてもよろしいか。』
「何がですか?」
『姫は自分が聖女ではないと言っておられるが、その根拠は何なのだ。』
「聖女と呼ばれる家系の人にはもう娘がいらっしゃいます、その方が聖女となりますでしょう。その人がきっとジェダイドの妻となりますから。」
『……。』
何か言いたそうな顔をする狼にフッと私は神が自分に対して「癒しのモノ」と呼んでいた事に気づき、首を振る。
違う。自分はジェダイドの身代わり人形だった、そして、その人形だった時の「力」が今に引き継がれているから、勘違いされているのだ。
私はそう自分に言い聞かせる。
「それで、貴方はどうします?死にます?それとも私に手を貸します?」
「…………まあ、お姫さんについていった方が退屈はしそうにないな。」
『馬鹿者が。』
「まあ、今はその返答で構いませんが、後悔しないでくださいな。」
私は四つの光を呼び起こす。
「風、地、水、火よ 彼の者と契約を交わす 彼の者は『私――マラカイトの意思に反する行為をした場合死す事を』 私、マラカイトは彼の者に『風の力の譲渡』を対価に契約す。」
「何だよこれ。」
初めて見るのか男は驚きを隠せないでいた。
そして、四つの光は一つとなり一枚の紙となる。
「これに拇印を押してください。」
私は親指を噛みちぎり血を流すと紙に押し付ける、すると、紙は光りを発する。
男は戸惑いを見せるが、意を決したのか、私と同じように指を噛み切り。血を紙に押し付ける。
紙は一瞬にして燃え盛り、灰となって風に乗って光の粒となり消えた。
「契約はなされました。」
「そうか。」
「それじゃ、馬車馬のように働いてくださいな。」
ニッコリと私が微笑むと男は顔を引きつらせた。
「オレ早まった?」
『覇王に手を出した時点で、もう遅かったのだ、諦めろ、愚か者。』
「そういえば、名前を訊いていませんでしたね。」
「金剛だ。」
『嵐牙だ。』
「私の名前はマラカイトと申します、それではよろしくお願いしますね、共犯者たち。」
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