28 / 136
第一章
暁の光
しおりを挟む
「マラカイト。」
名前を呼ばれて、ようやく私は足を止める。
まだ、馬小屋まで距離はあるが、急ぐ必要はないし、それに、ここは人がいないので、私たちが気に掛ける必要はなかった。
「何で、何も言わなかったんだよ。」
「言う必要がないから。」
「誤解されたままだろうが。」
「……。」
怒ったような、否、怒った顔をしているジェダイドに私は苦笑する。
「仕方ない事…。」
「仕方ないって、何でだよ。」
「あの人たちにとって今回はイレギュラーな事、そして、そのイレギュラーと同時に怪しい私がここに来たのだから、きっと偶然ではなく必然だと思うでしょ?」
「偶然だろうがっ!」
「世の中には偶然というものはないけどね、私たちの出会いだって、ここでの出来事だって後々にこれは必然だったと気づかされる事だってあるかもしれない。」
「……それとこれは別だろう。」
「ええ、別の話かもしれない、けど、あの人たちにとっては私は「邪」で「悪魔」つまりは異物なの。」
「…お前は普通の子どもだろう。」
「……。」
ジェダイドの言葉に私は目を大きく見開く。
「普通?ジェダイドは本気でそう思っているの?」
「それ以外に何があるんだよ。お前は実は神の子だったとか?」
「いえ、一応人から生まれているけど。」
「一応ってなんだよ。」
「……。」
前回は精霊でした、なんてこの場では言う必要はないのだが、明らかに私は普通とは程遠い存在だと思う。
「私は普通じゃないと思うけど?」
「何処がだ?」
「疑問を疑問で何で返すのかな……。」
私のボヤキに対しジェダイドはキッと睨んできた、なんか、私に対して対応が変わっているような。
「お前が俺に遠慮するからな、それならもう構っていられるものか、俺は言いたい事はいうようにする。そうじゃないと、お前は何も言わず先に行くだろう。」
「……。」
「そんな顔をするな、というか、結構無表情だと思ったけど、よくよく見ると感情が出てたんだな、安心した。」
ジェダイドの言葉に私は首を傾げる。
「話を戻すが、お前のどこが普通じゃないというんだ。」
「だって、この髪。」
「はっ、白雪みたいで綺麗じゃないか。」
「……何を考えているのか分からない所とか。」
「お前は難しく何でもかんでも考えすぎだし、つーか、思っている事をもう少し口にすればいいじゃないか。」
「子どもらしくないし。」
「それを言うなら俺だって子どもらしくないと母上に嘆かれるぞ。」
「普通じゃない。」
「普通の定義ってなんだ。」
「それは…。」
「他の人と違うところがない事か?それだと、どの人だって普通じゃない事になる。」
「ラインを逸脱している事。」
「ラインって何だよ、他人が勝手に線引きをしているんだろ。」
「……。」
何でジェダイドは私を肯定しているのか分からなくって、私は混乱する。
「何で……。」
「お前はさ、出会う人間人間よくない奴らにしか会ってないんだろうな。」
「そんな事は。」
「世界は広いんだ……、俺だって、、お前みたいな奴がいるなんて知らなかった、でも、俺はお前が……す……………嫌いじゃない。」
「……。」
ああ、受け入れてはいけない言葉がすんなりと入り込んでくる、可笑しい、気づきたくなかったのに。
私は気づいてしまった。
本当はまえから気づいていた部分があったけど、それでも、私は見なかったことにしていた。
彼が私を肯定している事、そして、私を大切に思っている事をーー。
私は鍵を何度も、何度も掛けたのに、あの時自分を見る冷たい目でタガが外れてしまったのか、今、こんなにもすんなり入ってきてしまった。
「…………………。」
私は気づいた感情をどうするか決めかねた。
もう一度蓋をするか、でも、きっとまた外れてしまうだろう。
育てるか、………苦笑するしかなかった。
私はジェダイドには勝てない、そう、それは「前」から知っていたじゃないか。
闇が明ける。
心情と景色が一致して、私は小さく笑う。
「ありがとう、ジェダイド。」
「マラカイト?」
何故、行き成りお礼を言われたのか分からないのか戸惑いを見せるジェダイドに私はクスクスと笑う。
それを見たジェダイドは呆気に取られた顔をする。
そして、私はジェダイドの間抜け顔にとうとう声をあげて笑った。
名前を呼ばれて、ようやく私は足を止める。
まだ、馬小屋まで距離はあるが、急ぐ必要はないし、それに、ここは人がいないので、私たちが気に掛ける必要はなかった。
「何で、何も言わなかったんだよ。」
「言う必要がないから。」
「誤解されたままだろうが。」
「……。」
怒ったような、否、怒った顔をしているジェダイドに私は苦笑する。
「仕方ない事…。」
「仕方ないって、何でだよ。」
「あの人たちにとって今回はイレギュラーな事、そして、そのイレギュラーと同時に怪しい私がここに来たのだから、きっと偶然ではなく必然だと思うでしょ?」
「偶然だろうがっ!」
「世の中には偶然というものはないけどね、私たちの出会いだって、ここでの出来事だって後々にこれは必然だったと気づかされる事だってあるかもしれない。」
「……それとこれは別だろう。」
「ええ、別の話かもしれない、けど、あの人たちにとっては私は「邪」で「悪魔」つまりは異物なの。」
「…お前は普通の子どもだろう。」
「……。」
ジェダイドの言葉に私は目を大きく見開く。
「普通?ジェダイドは本気でそう思っているの?」
「それ以外に何があるんだよ。お前は実は神の子だったとか?」
「いえ、一応人から生まれているけど。」
「一応ってなんだよ。」
「……。」
前回は精霊でした、なんてこの場では言う必要はないのだが、明らかに私は普通とは程遠い存在だと思う。
「私は普通じゃないと思うけど?」
「何処がだ?」
「疑問を疑問で何で返すのかな……。」
私のボヤキに対しジェダイドはキッと睨んできた、なんか、私に対して対応が変わっているような。
「お前が俺に遠慮するからな、それならもう構っていられるものか、俺は言いたい事はいうようにする。そうじゃないと、お前は何も言わず先に行くだろう。」
「……。」
「そんな顔をするな、というか、結構無表情だと思ったけど、よくよく見ると感情が出てたんだな、安心した。」
ジェダイドの言葉に私は首を傾げる。
「話を戻すが、お前のどこが普通じゃないというんだ。」
「だって、この髪。」
「はっ、白雪みたいで綺麗じゃないか。」
「……何を考えているのか分からない所とか。」
「お前は難しく何でもかんでも考えすぎだし、つーか、思っている事をもう少し口にすればいいじゃないか。」
「子どもらしくないし。」
「それを言うなら俺だって子どもらしくないと母上に嘆かれるぞ。」
「普通じゃない。」
「普通の定義ってなんだ。」
「それは…。」
「他の人と違うところがない事か?それだと、どの人だって普通じゃない事になる。」
「ラインを逸脱している事。」
「ラインって何だよ、他人が勝手に線引きをしているんだろ。」
「……。」
何でジェダイドは私を肯定しているのか分からなくって、私は混乱する。
「何で……。」
「お前はさ、出会う人間人間よくない奴らにしか会ってないんだろうな。」
「そんな事は。」
「世界は広いんだ……、俺だって、、お前みたいな奴がいるなんて知らなかった、でも、俺はお前が……す……………嫌いじゃない。」
「……。」
ああ、受け入れてはいけない言葉がすんなりと入り込んでくる、可笑しい、気づきたくなかったのに。
私は気づいてしまった。
本当はまえから気づいていた部分があったけど、それでも、私は見なかったことにしていた。
彼が私を肯定している事、そして、私を大切に思っている事をーー。
私は鍵を何度も、何度も掛けたのに、あの時自分を見る冷たい目でタガが外れてしまったのか、今、こんなにもすんなり入ってきてしまった。
「…………………。」
私は気づいた感情をどうするか決めかねた。
もう一度蓋をするか、でも、きっとまた外れてしまうだろう。
育てるか、………苦笑するしかなかった。
私はジェダイドには勝てない、そう、それは「前」から知っていたじゃないか。
闇が明ける。
心情と景色が一致して、私は小さく笑う。
「ありがとう、ジェダイド。」
「マラカイト?」
何故、行き成りお礼を言われたのか分からないのか戸惑いを見せるジェダイドに私はクスクスと笑う。
それを見たジェダイドは呆気に取られた顔をする。
そして、私はジェダイドの間抜け顔にとうとう声をあげて笑った。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる