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第一章
燻る灰
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私は念のために先ほど戦った男に対し、地の精霊たちの協力とついでに本物のロープを近くの家から拝借して縛った。
そして、ようやく私は人質にされた子どもを見た。
子どもは私たちと年の変わらない少女で、彼女は私を涙目で睨んでいる。
私は何故睨まれているのか分からず、取り敢えず、自分の体に残っている僅かな力を呼び起こしそれを手に集める。
温かな光が漏れ、そして、それを掲げ、放つ。
それは花火のように天に散る。
これで、大丈夫。
私はホッとした瞬間、膝から崩れ落ちる。
辛うじて意識は保っているが、指一つ動かすのは無理だった。
精霊たちは私を心配して近寄ろうとするが、何かに躊躇しているのか近寄って来ない。
鈍い頭を働かせて、私はようやく、精霊たちは私がリミットを解除している為に僅かに漏れ続ける力に怯えているのだと気づく。
「何で…気づかないのかな……。」
自嘲しながら私はリミッターをつける。
ようやく力が循環し始める、呼吸を整えていると、先ほど上げた似非閃光弾で人が集まり出す。
これで、この少女は大丈夫、保護される。
私の頭にはそれしかなかった。もう少し、考えられたら私はこんな行動をしなかったかもしれないが、残念ながらこの時の私は少しでも早く少女を保護者の元に連れて行ってあげて安心させたかった。
ガヤガヤと周りが煩くなり、そして、少女が保護されたのを感じ取り、目を開ければ、そこには厳しい目で私を見る人、人、人の姿があった。
「……。」
私はここに来てようやく悟った。
似非閃光弾を上げるのは失敗だと、きっと少女を寝かせて、意地でも集会所に彼女を抱え上げて開放してもらう方がよかったのだろう。
でも、すでに私は行動してしまっていた。
「……け…の…。」
助けた少女は私をきつく睨み、そして、近くにあった石を拾い上げ、私に向かって投げた。
私は避けようと思えばそれを避けられた、でも、私はそれを避ける事無く、その石は私の額にガツンと音をたてて当たった。
「マラカイトっ!」
私は心の中で乾いた笑いを上げる。
何でこのタイミングで来るのかな。
そう、私が避けなかった理由、それは私の後ろにジェダイドと彼に抱かれたセラフィナイトがいたからだ。
もしかしたら、私が避けなくとも彼らのいる場所まで届かなかったかもしれない、でも、それはあくまでも、憶測で有り、当たったのなら私は自分を許さなかっただろう。
かといって払いのけるには腕が上がらなかった。
なので、私は体を動かすことなく当たる事にしたのだった。
「何で避けなかったんだよ。」
「う…ああああああんっ!」
私に近寄り、私の額に触れたジェダイドの手は優しく、でも、その眼はまるで自分が傷ついたかのような目をしている。
セラフィナイトはセラフィナイトで私の顔を見た瞬間に火かついたかのように泣きだした。
「……。」
何で二人がそんな顔をするのか分からず、私は首を傾げる。
そして、そんな私たちの元に助け手が現れる。
「マラカイト、ああ、額から血が出ているじゃないか、大丈夫かい?」
「マギーおばさん。」
きっとジェダイドたちと来たマギーおばさんは労わるように私を見た。
「ごめんなさいね。」
「……。」
謝るマギーおばさんに私はゆるゆると首を振る。
「マギーさん、そいつが元凶なんですよっ!」
「何を言っているんだい。」
「だって、可笑しいじゃないですか、この餓鬼が着たとたんにこんな事になったんだぞ。」
「そうよ、きっとその化け物が手引きをしたのよ。」
「……聞く耳を持たないようだね。」
「さっさと追い出せ。」
「いや、捕えて近くの衛兵に突き出せば。」
私は失敗したな、もっと穏便にすればよかった、そうすれば、ジェダイドたちに迷惑を掛けなくて済んだのに。
「いい加減にせんかいっ!」
口々に好きかっていう村人たちにとうとう切れたのはマギーおばさんだった。
「この娘が何をやったんだというんだい、この娘は賊と繋がっていないよ、それどころかーー。」
私はそっとマギーおばさんの服の裾を引っ張る。
「マラカイト…あんた…。」
私の目を見て、彼女は私の考えを理解したのか悲しそうな顔をする。
「夜が明けたらすぐ出ていきます。」
私の小さな呟きはその場に異常に響いた。
「騒ぎを起こして申し訳ありませんでした。」
私は頭を下げると、ジェダイドの手を引いて自分たちの荷物があるマギーおばさんの馬小屋まで歩く。
まるで、私が爆弾を抱えているかのように大げさに私たちから離れる大人たちに私は少し寂しい気持ちになった。
私はきっと何処に行っても嫌われものだ。
だから、傷つくなんて馬鹿なんだと、そう自分に言い聞かせて前を見て歩く。
そして、ようやく私は人質にされた子どもを見た。
子どもは私たちと年の変わらない少女で、彼女は私を涙目で睨んでいる。
私は何故睨まれているのか分からず、取り敢えず、自分の体に残っている僅かな力を呼び起こしそれを手に集める。
温かな光が漏れ、そして、それを掲げ、放つ。
それは花火のように天に散る。
これで、大丈夫。
私はホッとした瞬間、膝から崩れ落ちる。
辛うじて意識は保っているが、指一つ動かすのは無理だった。
精霊たちは私を心配して近寄ろうとするが、何かに躊躇しているのか近寄って来ない。
鈍い頭を働かせて、私はようやく、精霊たちは私がリミットを解除している為に僅かに漏れ続ける力に怯えているのだと気づく。
「何で…気づかないのかな……。」
自嘲しながら私はリミッターをつける。
ようやく力が循環し始める、呼吸を整えていると、先ほど上げた似非閃光弾で人が集まり出す。
これで、この少女は大丈夫、保護される。
私の頭にはそれしかなかった。もう少し、考えられたら私はこんな行動をしなかったかもしれないが、残念ながらこの時の私は少しでも早く少女を保護者の元に連れて行ってあげて安心させたかった。
ガヤガヤと周りが煩くなり、そして、少女が保護されたのを感じ取り、目を開ければ、そこには厳しい目で私を見る人、人、人の姿があった。
「……。」
私はここに来てようやく悟った。
似非閃光弾を上げるのは失敗だと、きっと少女を寝かせて、意地でも集会所に彼女を抱え上げて開放してもらう方がよかったのだろう。
でも、すでに私は行動してしまっていた。
「……け…の…。」
助けた少女は私をきつく睨み、そして、近くにあった石を拾い上げ、私に向かって投げた。
私は避けようと思えばそれを避けられた、でも、私はそれを避ける事無く、その石は私の額にガツンと音をたてて当たった。
「マラカイトっ!」
私は心の中で乾いた笑いを上げる。
何でこのタイミングで来るのかな。
そう、私が避けなかった理由、それは私の後ろにジェダイドと彼に抱かれたセラフィナイトがいたからだ。
もしかしたら、私が避けなくとも彼らのいる場所まで届かなかったかもしれない、でも、それはあくまでも、憶測で有り、当たったのなら私は自分を許さなかっただろう。
かといって払いのけるには腕が上がらなかった。
なので、私は体を動かすことなく当たる事にしたのだった。
「何で避けなかったんだよ。」
「う…ああああああんっ!」
私に近寄り、私の額に触れたジェダイドの手は優しく、でも、その眼はまるで自分が傷ついたかのような目をしている。
セラフィナイトはセラフィナイトで私の顔を見た瞬間に火かついたかのように泣きだした。
「……。」
何で二人がそんな顔をするのか分からず、私は首を傾げる。
そして、そんな私たちの元に助け手が現れる。
「マラカイト、ああ、額から血が出ているじゃないか、大丈夫かい?」
「マギーおばさん。」
きっとジェダイドたちと来たマギーおばさんは労わるように私を見た。
「ごめんなさいね。」
「……。」
謝るマギーおばさんに私はゆるゆると首を振る。
「マギーさん、そいつが元凶なんですよっ!」
「何を言っているんだい。」
「だって、可笑しいじゃないですか、この餓鬼が着たとたんにこんな事になったんだぞ。」
「そうよ、きっとその化け物が手引きをしたのよ。」
「……聞く耳を持たないようだね。」
「さっさと追い出せ。」
「いや、捕えて近くの衛兵に突き出せば。」
私は失敗したな、もっと穏便にすればよかった、そうすれば、ジェダイドたちに迷惑を掛けなくて済んだのに。
「いい加減にせんかいっ!」
口々に好きかっていう村人たちにとうとう切れたのはマギーおばさんだった。
「この娘が何をやったんだというんだい、この娘は賊と繋がっていないよ、それどころかーー。」
私はそっとマギーおばさんの服の裾を引っ張る。
「マラカイト…あんた…。」
私の目を見て、彼女は私の考えを理解したのか悲しそうな顔をする。
「夜が明けたらすぐ出ていきます。」
私の小さな呟きはその場に異常に響いた。
「騒ぎを起こして申し訳ありませんでした。」
私は頭を下げると、ジェダイドの手を引いて自分たちの荷物があるマギーおばさんの馬小屋まで歩く。
まるで、私が爆弾を抱えているかのように大げさに私たちから離れる大人たちに私は少し寂しい気持ちになった。
私はきっと何処に行っても嫌われものだ。
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