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第一章
精霊使い
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女性が逃げて、私は男たちと向かい合うように構える。
「この餓鬼。」
「やるのか?」
「おいおい、顔だけは止めとけよ、値段が下がる。」
「……。」
女性は途中で村の人に連れられて集会場に向かっている、私は隣に目を向け、首を横に振った。
小さきこの場限りの相棒は私の意図を汲んで彼女からの情報をシャットダウンしてくれた。
お蔭でほんの少し楽になった。
ふわりと私の周りに風、火、水、地の小さな精霊が集まる。
この子たちも怒っている。
平和な村を愛するこの子たちは、平穏を壊す彼らに怒りを覚えている。
だけど、彼ら一人ひとりでは何も出来ない。
私の力を借りて初めて彼らは表に出る事が出来る。
「こ、この餓鬼。」
「精霊使いか。」
「……。」
私の元に集う精霊たちの姿がようやく見えた彼らは顔を引きつらせる。
「ね、大人しく捕まるか、私たちによって捕縛されるか。」
男たちは私の容姿を見ながら笑い出す。
当たり前だ十の子どもが馬鹿な事をほざいているとしか思っていないだろう、だけど、残念ながら私は普通の子どもじゃない。
「……答えは分かりました。」
右手を前に向ける。
「風、大一風っ!」
風の精霊たちが力を合わせ、空気砲を放つ。
一人はまともに受け、受け身も取れず地面に転がる。
「何っ!」
「くそ。」
「地、捕縛。」
地面に転がった一人を地面に縫い付ける。
「水、放射っ!」
空気中や近くの水場から水をかき集めた精霊たちは先ほどの空気砲と同じものを二つ作り最後の二人を倒す。
そして、地の精霊たちは私の声を待たず、彼らを縫い付ける。
「くそ……。」
「動けねぇ。」
「この餓鬼が。」
私は彼らを見下ろし、そして、その煩い口を塞ぐために、急所に一撃を加え気絶させる。
「………はぁ。」
まだ三人しか倒していないのに疲れた、だけど、そんな弱音なんか吐いている暇は私にはなかった。
「私は…弱い。」
心配するかのように私の傍に居てくれる精霊に私は目を細める。
「だから、力を貸して。」
手を伸ばせば、私に寄り添ってくれる彼らに私は嬉しくなる。
私がこの場を押さえている間に賊の方で動きがあった、一つは近くの家に押し入り、しかし、幸いにもそこには誰もいなく、その家から金目の物を物色している。
もう一つはこの村の自衛団と交戦中、こちらは自衛団の人数が多いから何とかなるだろう。
もう一つも自衛団とぶつかっているが、こちらは自衛団の人数が二人でしかも、年齢も若く賊に押されている。
他はまだ、猶予がある。
「参りますっ!」
私の声に応える精霊たちは一斉に動き出す。
火は最短の道を示すように火のある所に力を入れて私を案内してくれる。
水は近くの水場から力を得て温存している。
地は私たちが離れても大丈夫なように、倒れていた賊をしっかりと拘束しなおしてくれる。
風は昔よく使った速く駆ける術に似通った何かをしてくれており、先ほどよりも疲れず、でも速く走る事が出来た。
「絶対に誰も死なせなんかしない。」
かなり難しい事だとは分かっている、でも、私は目の前で救えるかもしれない人を救えないのは嫌だった。
冷たくなる体
二度と開かない目
ズキリと胸が痛む。
この命が消えたとしても、私は自己満足の為に走り続ける。
だって、他の命には惜しむ人が大勢いる、だけど、自分を惜しむ人なんて誰もいないのだから、それは当然の事だから。
「この餓鬼。」
「やるのか?」
「おいおい、顔だけは止めとけよ、値段が下がる。」
「……。」
女性は途中で村の人に連れられて集会場に向かっている、私は隣に目を向け、首を横に振った。
小さきこの場限りの相棒は私の意図を汲んで彼女からの情報をシャットダウンしてくれた。
お蔭でほんの少し楽になった。
ふわりと私の周りに風、火、水、地の小さな精霊が集まる。
この子たちも怒っている。
平和な村を愛するこの子たちは、平穏を壊す彼らに怒りを覚えている。
だけど、彼ら一人ひとりでは何も出来ない。
私の力を借りて初めて彼らは表に出る事が出来る。
「こ、この餓鬼。」
「精霊使いか。」
「……。」
私の元に集う精霊たちの姿がようやく見えた彼らは顔を引きつらせる。
「ね、大人しく捕まるか、私たちによって捕縛されるか。」
男たちは私の容姿を見ながら笑い出す。
当たり前だ十の子どもが馬鹿な事をほざいているとしか思っていないだろう、だけど、残念ながら私は普通の子どもじゃない。
「……答えは分かりました。」
右手を前に向ける。
「風、大一風っ!」
風の精霊たちが力を合わせ、空気砲を放つ。
一人はまともに受け、受け身も取れず地面に転がる。
「何っ!」
「くそ。」
「地、捕縛。」
地面に転がった一人を地面に縫い付ける。
「水、放射っ!」
空気中や近くの水場から水をかき集めた精霊たちは先ほどの空気砲と同じものを二つ作り最後の二人を倒す。
そして、地の精霊たちは私の声を待たず、彼らを縫い付ける。
「くそ……。」
「動けねぇ。」
「この餓鬼が。」
私は彼らを見下ろし、そして、その煩い口を塞ぐために、急所に一撃を加え気絶させる。
「………はぁ。」
まだ三人しか倒していないのに疲れた、だけど、そんな弱音なんか吐いている暇は私にはなかった。
「私は…弱い。」
心配するかのように私の傍に居てくれる精霊に私は目を細める。
「だから、力を貸して。」
手を伸ばせば、私に寄り添ってくれる彼らに私は嬉しくなる。
私がこの場を押さえている間に賊の方で動きがあった、一つは近くの家に押し入り、しかし、幸いにもそこには誰もいなく、その家から金目の物を物色している。
もう一つはこの村の自衛団と交戦中、こちらは自衛団の人数が多いから何とかなるだろう。
もう一つも自衛団とぶつかっているが、こちらは自衛団の人数が二人でしかも、年齢も若く賊に押されている。
他はまだ、猶予がある。
「参りますっ!」
私の声に応える精霊たちは一斉に動き出す。
火は最短の道を示すように火のある所に力を入れて私を案内してくれる。
水は近くの水場から力を得て温存している。
地は私たちが離れても大丈夫なように、倒れていた賊をしっかりと拘束しなおしてくれる。
風は昔よく使った速く駆ける術に似通った何かをしてくれており、先ほどよりも疲れず、でも速く走る事が出来た。
「絶対に誰も死なせなんかしない。」
かなり難しい事だとは分かっている、でも、私は目の前で救えるかもしれない人を救えないのは嫌だった。
冷たくなる体
二度と開かない目
ズキリと胸が痛む。
この命が消えたとしても、私は自己満足の為に走り続ける。
だって、他の命には惜しむ人が大勢いる、だけど、自分を惜しむ人なんて誰もいないのだから、それは当然の事だから。
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