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第一章
馬小屋
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「さて、手伝ってくれて、本当に助かったよ。」
「大した事はしてませんよ。」
お礼を言われ、私は首を横に振った。
「そんな事はないよ、そう言えば、今日は何処に泊まるのかい?」
「……。」
マギーおばさんの言葉に私は眉間に皺を寄せる。
この村には宿屋なんてものはない、だから、旅人とかが来ればどこかの家の馬小屋や納屋を借りてもらっている人がいる。
そして、本来ならば私たちも馬小屋か納屋を借りられればいいのだが、多分、上手くいかないだろう。
「よかったら、家に来ないかい?」
マギーおばさんの言葉に私はどうしようか、本気で迷う。
彼女の申し出は本当にありがたい、でも、周りの人はきっと許さないだろう。
「……周りなんて気にしなくてもいいんだよ。」
私の考えなんて分かっているかのように、マギーおばさんはそう言うが、私は決して首を縦に振る事は出来なかった。
「マラカイト?」
「……。」
不思議そうな顔をするジェダイドに私は口を開こうとした瞬間、甲高い悲鳴が割って入る。
「お母さん、何やっているのっ!」
「あんたこそ何やっているんだい。」
幼い子どもを引きつれた女性がマギーおばさんの家の前に立っていた。私はどことなくその女性とマギーおばさんが似ている事から多分マギーおばさんの娘さんなのだと予想する。
「何でそんな忌み子と一緒にいるの。」
「……あんた、まだ、そんな事を言っているのかい。」
「他の人だっているわよ、お母さんくらいよ、忌み子を気にかけているのは。」
「……この子は忌み子なんかじゃない、ちゃんとしたマラカイトという名前を持った可愛らしいお嬢さんじゃないか。」
「どこがよ、そんな老人のような白い髪、有り得ないじゃないっ!」
私はそっと目を瞑る。
南の方ではこの白い髪は悪魔とされている、どうもその昔一人の真っ白の髪を持つ女性がこの大地に大きな穴をあけ、敵を殲滅したという言い伝えがあり、その為、真っ白な髪を持つ私は忌み子と言われ続けた。
それに、私の出自的にも怪しいので余計に嫌われる要素になっているのは分かり切っているので、私自身は仕方のない事だと思っている。
「……加減に…しろよ。」
声変わりのする前の本来なら高い声が唸るような低い声を出した。
しまった、と思った頃には既に遅く、ジェダイドはマギーおばさんの娘さんを睨んでいた。
「あっ……。」
ジェダイドの持つ黒髪を見て顔を引きつらせるマギーおばさんの娘さんに同情する。
ジェダイド自身は気づいていないが、その漆黒のような黒髪は王都に住む貴族の持つ色であり、知っている人ならば彼は貴族なのだと言っているようなものなのだ。
「ジェダイド、大丈夫だから。」
「何がだよ。」
「……マギーおばさん、心遣いありがとうございます、私は雨風をしのげるのならどこでも、いいんです、でも、ジェダイドとセラフィナイトは私と違って普通の子どもだから、泊めていただけますか?」
「………。」
マギーおばさんは何か言いたげな顔をするが、娘が隣にいる所為で結局何も言う事が出来なかった。
「お、お母さん、この子もそう言っている事だし、それでいいじゃない。」
「……。」
「それに、今日はわたしも泊まるんだし、毛布とかの数とか考えたら仕方ない事だしね。」
「……。」
自分の都合ばかりを言い募る娘さんに二人の怒りが増していくのが分かり、私はこっそりと溜息を吐く。
「あんたはいつもいつもーー。」
「俺もマラカイトと同じで雨風をしのげれば十分だ、それに、あんたみたいな奴と同じ空間にいた方が、気分が悪い。」
マギーおばさんが怒鳴ろうとしたが、先にジェダイドが感情を爆発させ、女性を睨みつけながらそう言った。
「え、あ、何で……。」
「まだ、分からないのかい。」
「ふん、マラカイト、行くぞ。」
「マラカイト、馬小屋なら好きに使っていいからね。」
「ありがとうございます。」
真っ青な顔で震える娘さんを無視してジェダイドは歩き出す。
そして、そんなジェダイドと私の為にマギーおばさんは馬小屋を貸してくれた。
私は感謝の気持ちを込めて頭を下げてから、ジェダイドを追いかけた。
「大した事はしてませんよ。」
お礼を言われ、私は首を横に振った。
「そんな事はないよ、そう言えば、今日は何処に泊まるのかい?」
「……。」
マギーおばさんの言葉に私は眉間に皺を寄せる。
この村には宿屋なんてものはない、だから、旅人とかが来ればどこかの家の馬小屋や納屋を借りてもらっている人がいる。
そして、本来ならば私たちも馬小屋か納屋を借りられればいいのだが、多分、上手くいかないだろう。
「よかったら、家に来ないかい?」
マギーおばさんの言葉に私はどうしようか、本気で迷う。
彼女の申し出は本当にありがたい、でも、周りの人はきっと許さないだろう。
「……周りなんて気にしなくてもいいんだよ。」
私の考えなんて分かっているかのように、マギーおばさんはそう言うが、私は決して首を縦に振る事は出来なかった。
「マラカイト?」
「……。」
不思議そうな顔をするジェダイドに私は口を開こうとした瞬間、甲高い悲鳴が割って入る。
「お母さん、何やっているのっ!」
「あんたこそ何やっているんだい。」
幼い子どもを引きつれた女性がマギーおばさんの家の前に立っていた。私はどことなくその女性とマギーおばさんが似ている事から多分マギーおばさんの娘さんなのだと予想する。
「何でそんな忌み子と一緒にいるの。」
「……あんた、まだ、そんな事を言っているのかい。」
「他の人だっているわよ、お母さんくらいよ、忌み子を気にかけているのは。」
「……この子は忌み子なんかじゃない、ちゃんとしたマラカイトという名前を持った可愛らしいお嬢さんじゃないか。」
「どこがよ、そんな老人のような白い髪、有り得ないじゃないっ!」
私はそっと目を瞑る。
南の方ではこの白い髪は悪魔とされている、どうもその昔一人の真っ白の髪を持つ女性がこの大地に大きな穴をあけ、敵を殲滅したという言い伝えがあり、その為、真っ白な髪を持つ私は忌み子と言われ続けた。
それに、私の出自的にも怪しいので余計に嫌われる要素になっているのは分かり切っているので、私自身は仕方のない事だと思っている。
「……加減に…しろよ。」
声変わりのする前の本来なら高い声が唸るような低い声を出した。
しまった、と思った頃には既に遅く、ジェダイドはマギーおばさんの娘さんを睨んでいた。
「あっ……。」
ジェダイドの持つ黒髪を見て顔を引きつらせるマギーおばさんの娘さんに同情する。
ジェダイド自身は気づいていないが、その漆黒のような黒髪は王都に住む貴族の持つ色であり、知っている人ならば彼は貴族なのだと言っているようなものなのだ。
「ジェダイド、大丈夫だから。」
「何がだよ。」
「……マギーおばさん、心遣いありがとうございます、私は雨風をしのげるのならどこでも、いいんです、でも、ジェダイドとセラフィナイトは私と違って普通の子どもだから、泊めていただけますか?」
「………。」
マギーおばさんは何か言いたげな顔をするが、娘が隣にいる所為で結局何も言う事が出来なかった。
「お、お母さん、この子もそう言っている事だし、それでいいじゃない。」
「……。」
「それに、今日はわたしも泊まるんだし、毛布とかの数とか考えたら仕方ない事だしね。」
「……。」
自分の都合ばかりを言い募る娘さんに二人の怒りが増していくのが分かり、私はこっそりと溜息を吐く。
「あんたはいつもいつもーー。」
「俺もマラカイトと同じで雨風をしのげれば十分だ、それに、あんたみたいな奴と同じ空間にいた方が、気分が悪い。」
マギーおばさんが怒鳴ろうとしたが、先にジェダイドが感情を爆発させ、女性を睨みつけながらそう言った。
「え、あ、何で……。」
「まだ、分からないのかい。」
「ふん、マラカイト、行くぞ。」
「マラカイト、馬小屋なら好きに使っていいからね。」
「ありがとうございます。」
真っ青な顔で震える娘さんを無視してジェダイドは歩き出す。
そして、そんなジェダイドと私の為にマギーおばさんは馬小屋を貸してくれた。
私は感謝の気持ちを込めて頭を下げてから、ジェダイドを追いかけた。
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