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第一章
波乱
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私はブツブツと文句を言っているジェダイドを見つめながら、泣きぐずっているセラフィナイトをあやす。
何でこんな事になってしまったかというと、簡単に言えばマギーおばさんの連れの方と衝突してしまったのだ。
おばさんの連れの方はこんな子どもを連れていく事を渋った。
当然の事だと思う、でも、こんな幼いというか赤子のセラフィナイトを睨むのは大人げないのではないのかと思う。
「…マラカイトは悔しくないのか?」
ジェダイドのその言葉で私は我に返る。
「仕方ないかな、と思います。」
「仕方ない…。」
私の答えが気に喰わないのか眉間に皺を寄せるジェダイドに、私は苦笑する。
「私は見た目も年齢もまだ保護を受けていても可笑しくはない、なのに、用心棒として私が紹介されれば不安にもなりますよね?」
「それは…。」
「それに保護を受けていても可笑しくない、という事は必ず保護者がいる、というものです、ですから、もし、私たちの保護者となる方が文句を言って来たら、どうなるかと考えてしまうのが普通です。」
「……。」
「私も貴方も事情はあります。」
私はようやく泣きつかれて眠ったセラフィナイトの頬を撫でる。
「私の場合はもう保護者となる方はいません、そして、貴方の場合はこの街には本来の保護者いない、さらに、あの街にいる人間は信用ならない。」
「えっ?」
予想外の言葉にジェダイドは驚きを見せた。
「だって、貴方があの街にいる事を捕えようとした方々は知っていた。その上、貴方には貴方の身を守る護衛がいたはずなのに、それがいない。」
「それは俺が撒いたから。」
ジェダイドの言葉に私は静かに首を振った。
「もし、そうだとしても、子どもの浅知恵で簡単に撒けると本当に思いますか?」
「……。」
そう、ジェダイドがたとえ撒けたと考えたとしても、一人くらいは間違いなく彼を尾行していただろう。
なのに、その様子はなく彼は簡単に敵に捕まった。
それが意味しているのは…。
「私が貴方をあの街の方に預けなかった理由はそれです。」
「……。」
「あの街で貴方を探す方にはほんとに申し訳ない事ですが、万が一、貴方がご実家に帰る前にまた捕まれば、何が起こるか分かりません。」
「ああ……。」
「私は貴方に傷ついて欲しくありません。」
私は空いている左手を伸ばし、ジェダイドの顔に触れる。
「私は貴方を失いたくありません。」
もう失いたくない、この温もりを。
徐々に失われる温もりなんてもう感じたくない。
生きて居て欲しい。
こんな死にぞこないの命なんかよりもずっとずっと気高い魂を持つこの人の方がーー。
「マラカイト?」
ジッと見つめる緑色の瞳が不安を見せる。
「いえ、貴方の承諾もなく勝手に判断した事に申し訳なく思ったもので…。」
「……。」
ジェダイドは溜息を零し、そして、私の手を掴む。
「マラカイト、そろそろ口調をどうにかしたらどうだ?」
「何でですか?」
「はっきり言ってお前みたいな子どもが同じ子どもに丁寧に話していれば奇異な目で見られるだろう。」
「……。」
確かに、ジェダイドの言う通りのような気がする、今までのように人が少ない空間ならば自分のこの話口調でも問題はなかった。
でも、二人で旅をするならば間違いなく印象に残ってしまうかもしれない。
それは拙かった。
「……。」
本当は変えたくはなかった、でも、彼の危険をさらす可能性があるのならほんの少しの意地など張らない方がいい。
「分かった。」
「ありがとうな。」
「ごめんな…ごめんね、私が気づくべき事で……だったのに。」
やはり、なれません、でも、彼の為だと思えば努力します。
「マラカイト。」
「はい。」
「お前はどうしてそこまでしてーー。」
「ふぇ……うああああん。」
ジェダイドが何か言おうとした瞬間、目を覚ましたセラフィナイトが泣き出してしまいました。
「あら……。」
私はゆすりあやすと徐々に落ち着いてきたセラフィナイトは緑色の目をこちらにキラキラと輝かせながら見つめる。
「どうしたの?」
「あー…。」
どうやらお腹が空いたようですね。
私は一応確認するようにジェダイドを見れば、何故か彼は項垂れていた。
「どうしたの?」
「………何で邪魔されるんだ…つーか、邪魔するなよセラ…。」
「……。」
ええ、放っておきましょう。
どうしようも出来ないと判断した私は周りを見渡し、見られない事を確認してセラフィナイトに魔素を与える。
「そろそろ、与え方を考えないといけないでしょうね。」
一応私はジェダイドに言っているつもりでしたが、彼は聞こえていないようで、独り言になってしまいました。
「次からはちょっと変わるけど、フィーもうまく受け取るように頑張ってね。」
「あー。」
私の言葉に返事するセラフィナイトに私はクスリと笑う。
まだ、旅は始まったばかりです、休める時に体を休ませないと後が辛くなるだけですので、私は程よく力を抜いて目を閉じた。
何でこんな事になってしまったかというと、簡単に言えばマギーおばさんの連れの方と衝突してしまったのだ。
おばさんの連れの方はこんな子どもを連れていく事を渋った。
当然の事だと思う、でも、こんな幼いというか赤子のセラフィナイトを睨むのは大人げないのではないのかと思う。
「…マラカイトは悔しくないのか?」
ジェダイドのその言葉で私は我に返る。
「仕方ないかな、と思います。」
「仕方ない…。」
私の答えが気に喰わないのか眉間に皺を寄せるジェダイドに、私は苦笑する。
「私は見た目も年齢もまだ保護を受けていても可笑しくはない、なのに、用心棒として私が紹介されれば不安にもなりますよね?」
「それは…。」
「それに保護を受けていても可笑しくない、という事は必ず保護者がいる、というものです、ですから、もし、私たちの保護者となる方が文句を言って来たら、どうなるかと考えてしまうのが普通です。」
「……。」
「私も貴方も事情はあります。」
私はようやく泣きつかれて眠ったセラフィナイトの頬を撫でる。
「私の場合はもう保護者となる方はいません、そして、貴方の場合はこの街には本来の保護者いない、さらに、あの街にいる人間は信用ならない。」
「えっ?」
予想外の言葉にジェダイドは驚きを見せた。
「だって、貴方があの街にいる事を捕えようとした方々は知っていた。その上、貴方には貴方の身を守る護衛がいたはずなのに、それがいない。」
「それは俺が撒いたから。」
ジェダイドの言葉に私は静かに首を振った。
「もし、そうだとしても、子どもの浅知恵で簡単に撒けると本当に思いますか?」
「……。」
そう、ジェダイドがたとえ撒けたと考えたとしても、一人くらいは間違いなく彼を尾行していただろう。
なのに、その様子はなく彼は簡単に敵に捕まった。
それが意味しているのは…。
「私が貴方をあの街の方に預けなかった理由はそれです。」
「……。」
「あの街で貴方を探す方にはほんとに申し訳ない事ですが、万が一、貴方がご実家に帰る前にまた捕まれば、何が起こるか分かりません。」
「ああ……。」
「私は貴方に傷ついて欲しくありません。」
私は空いている左手を伸ばし、ジェダイドの顔に触れる。
「私は貴方を失いたくありません。」
もう失いたくない、この温もりを。
徐々に失われる温もりなんてもう感じたくない。
生きて居て欲しい。
こんな死にぞこないの命なんかよりもずっとずっと気高い魂を持つこの人の方がーー。
「マラカイト?」
ジッと見つめる緑色の瞳が不安を見せる。
「いえ、貴方の承諾もなく勝手に判断した事に申し訳なく思ったもので…。」
「……。」
ジェダイドは溜息を零し、そして、私の手を掴む。
「マラカイト、そろそろ口調をどうにかしたらどうだ?」
「何でですか?」
「はっきり言ってお前みたいな子どもが同じ子どもに丁寧に話していれば奇異な目で見られるだろう。」
「……。」
確かに、ジェダイドの言う通りのような気がする、今までのように人が少ない空間ならば自分のこの話口調でも問題はなかった。
でも、二人で旅をするならば間違いなく印象に残ってしまうかもしれない。
それは拙かった。
「……。」
本当は変えたくはなかった、でも、彼の危険をさらす可能性があるのならほんの少しの意地など張らない方がいい。
「分かった。」
「ありがとうな。」
「ごめんな…ごめんね、私が気づくべき事で……だったのに。」
やはり、なれません、でも、彼の為だと思えば努力します。
「マラカイト。」
「はい。」
「お前はどうしてそこまでしてーー。」
「ふぇ……うああああん。」
ジェダイドが何か言おうとした瞬間、目を覚ましたセラフィナイトが泣き出してしまいました。
「あら……。」
私はゆすりあやすと徐々に落ち着いてきたセラフィナイトは緑色の目をこちらにキラキラと輝かせながら見つめる。
「どうしたの?」
「あー…。」
どうやらお腹が空いたようですね。
私は一応確認するようにジェダイドを見れば、何故か彼は項垂れていた。
「どうしたの?」
「………何で邪魔されるんだ…つーか、邪魔するなよセラ…。」
「……。」
ええ、放っておきましょう。
どうしようも出来ないと判断した私は周りを見渡し、見られない事を確認してセラフィナイトに魔素を与える。
「そろそろ、与え方を考えないといけないでしょうね。」
一応私はジェダイドに言っているつもりでしたが、彼は聞こえていないようで、独り言になってしまいました。
「次からはちょっと変わるけど、フィーもうまく受け取るように頑張ってね。」
「あー。」
私の言葉に返事するセラフィナイトに私はクスリと笑う。
まだ、旅は始まったばかりです、休める時に体を休ませないと後が辛くなるだけですので、私は程よく力を抜いて目を閉じた。
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