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第一章
小さな用心棒
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街に入った私たちは私が先を歩き、その一歩後をジェダイドが追うような形で進んでいく。
人ごみを縫うように歩く私の後を少し苦戦しながらジェダイドは後を追ってくる。私は後ろの気配をしっかりと感知しながら北の門に向かって歩く。
そんな私たちに向かって声を掛けて来た人物がいた。
「おや、マラカイトじゃないか。」
「あっ。」
振り返ると恰幅のいいおばさんがそこにいた。
「マギーおばさん。」
おばさん、マギーおばさんはにこやかに笑い私たちに近づく。
「よかったよ、持ってきたものもなくなったし、村に帰ろうと支度が丁度終わった所だったからね。」
「村…。」
私の脳裏に「前」の時に見た地図を思い出す。
彼女の住んでいる村はジェダイドが帰る先の丁度途中にある村だ。
「……あの、マギーおばさん。」
「なんだい?」
「よければで、いいんですが、おばさんの村まで一緒に行くことは出来ないんですか?」
「……。」
おばさんは目を見開き、私、私の腕に眠るセラフィナイト、そして、ジェダイドを見つめ、そして、何か言いたそうな顔をするが、何も言う事もなく小さく頷いた。
「構わないよ、マラカイトにはいつもお世話になっているからね。」
「ありがとうございます。」
私は深く頭を下げ、それを見たジェダイドもつられるように頭を下げる。
「おやおや。」
私たちを見て穏やかに笑うマギーおばさんはそっと口を開く。
「まあ、ただで乗せてやりたいと言いたいところなんだけどね、ただ、今回の同行人でちょいと口やかましいのがいるから、悪いけど、マラカイト頼めるかい?」
「はい。」
私はアレだと気づいたので、二つ返事をするが、何の約束なのか分からないジェダイドは眉間に皺を寄せて、私の服を掴む。
「ジェダイド?」
「大丈夫なのか?」
私は微かに目を見開き、マジマジとジェダイドを見つめる。
「えっ?」
「お前が信用している人間だとは分かるが、大丈夫なのか、安請け合いをして。」
「大丈夫、ジェダイドには何もないから。」
「――っ!」
私の言葉を聞いたジェダイドは何故か強く私の腕を掴み、何かを言いたそうに口を開くがすぐに閉ざす。
「………俺は別に自分の心配をしているじゃない…俺が心配しているのは、お前なんだ。」
「……。」
「ははは。」
無言でマジマジとジェダイドを見ていた私だったが、笑い声が聞こえ、そちらに顔を向けるとおばさんが口に手を当てて笑っていた。
「おばさん?」
「いやいや、大丈夫、それにしても、マラカイト、いい男を捕まえたんじゃないかい。」
「えっ?」
訳が分からない私は意味を知りたかったが、おばさんは私には何も言わず、ジェダイドに向かって話し始める。
「マラカイトにはほんの少し村に行くまでの用心棒になって欲しいんだよ。」
「用心棒って。」
苦い顔をするジェダイドにマギーおばさんは苦笑する。
「本当はこんな子にお願いするのはよくはないんだけどね、まあ、こんな農家のおばさんは冒険者を雇うような事も出来ないし、まあ、この子の場合は並みの腕前をしていないのは知っているんだけどね。」
「……。」
「それにしても、もしかして、マラカイトの腕に抱いているのはマラカイトとお前さんの子かい?」
「なっ!」
何故か顔を真っ赤にさせるジェダイドに、おばさんはクスクスと笑い出し、私は訳が分からず首を傾げる。
「この子は見ての通り一筋縄にはいかないが、すごくいい子だからね。大切にしてやっておくれ。」
「……はい。」
神妙に頷くジェイドに私は何度目か分からないが首を傾げるのだった。
「さあ、時間もない事だしこっちだよ。」
マギーおばさんの案内で私たちを馬車まで並んで進んでいった。
人ごみを縫うように歩く私の後を少し苦戦しながらジェダイドは後を追ってくる。私は後ろの気配をしっかりと感知しながら北の門に向かって歩く。
そんな私たちに向かって声を掛けて来た人物がいた。
「おや、マラカイトじゃないか。」
「あっ。」
振り返ると恰幅のいいおばさんがそこにいた。
「マギーおばさん。」
おばさん、マギーおばさんはにこやかに笑い私たちに近づく。
「よかったよ、持ってきたものもなくなったし、村に帰ろうと支度が丁度終わった所だったからね。」
「村…。」
私の脳裏に「前」の時に見た地図を思い出す。
彼女の住んでいる村はジェダイドが帰る先の丁度途中にある村だ。
「……あの、マギーおばさん。」
「なんだい?」
「よければで、いいんですが、おばさんの村まで一緒に行くことは出来ないんですか?」
「……。」
おばさんは目を見開き、私、私の腕に眠るセラフィナイト、そして、ジェダイドを見つめ、そして、何か言いたそうな顔をするが、何も言う事もなく小さく頷いた。
「構わないよ、マラカイトにはいつもお世話になっているからね。」
「ありがとうございます。」
私は深く頭を下げ、それを見たジェダイドもつられるように頭を下げる。
「おやおや。」
私たちを見て穏やかに笑うマギーおばさんはそっと口を開く。
「まあ、ただで乗せてやりたいと言いたいところなんだけどね、ただ、今回の同行人でちょいと口やかましいのがいるから、悪いけど、マラカイト頼めるかい?」
「はい。」
私はアレだと気づいたので、二つ返事をするが、何の約束なのか分からないジェダイドは眉間に皺を寄せて、私の服を掴む。
「ジェダイド?」
「大丈夫なのか?」
私は微かに目を見開き、マジマジとジェダイドを見つめる。
「えっ?」
「お前が信用している人間だとは分かるが、大丈夫なのか、安請け合いをして。」
「大丈夫、ジェダイドには何もないから。」
「――っ!」
私の言葉を聞いたジェダイドは何故か強く私の腕を掴み、何かを言いたそうに口を開くがすぐに閉ざす。
「………俺は別に自分の心配をしているじゃない…俺が心配しているのは、お前なんだ。」
「……。」
「ははは。」
無言でマジマジとジェダイドを見ていた私だったが、笑い声が聞こえ、そちらに顔を向けるとおばさんが口に手を当てて笑っていた。
「おばさん?」
「いやいや、大丈夫、それにしても、マラカイト、いい男を捕まえたんじゃないかい。」
「えっ?」
訳が分からない私は意味を知りたかったが、おばさんは私には何も言わず、ジェダイドに向かって話し始める。
「マラカイトにはほんの少し村に行くまでの用心棒になって欲しいんだよ。」
「用心棒って。」
苦い顔をするジェダイドにマギーおばさんは苦笑する。
「本当はこんな子にお願いするのはよくはないんだけどね、まあ、こんな農家のおばさんは冒険者を雇うような事も出来ないし、まあ、この子の場合は並みの腕前をしていないのは知っているんだけどね。」
「……。」
「それにしても、もしかして、マラカイトの腕に抱いているのはマラカイトとお前さんの子かい?」
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「この子は見ての通り一筋縄にはいかないが、すごくいい子だからね。大切にしてやっておくれ。」
「……はい。」
神妙に頷くジェイドに私は何度目か分からないが首を傾げるのだった。
「さあ、時間もない事だしこっちだよ。」
マギーおばさんの案内で私たちを馬車まで並んで進んでいった。
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