逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第二章

狂戦士

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『まずい。』
「何がだ?」
『金剛っ!避難しろっ!』
「えっ?――っ!」

 周りが五月蠅い。
 私は静かにする為に自分を中心に火の波を起こす。

「あっぶねーっ!」

 ああ、五月蠅い、まだいたのね。

『正気に戻れ、姫よっ!』
「ウ・ル・サ・イ。」
『くっ。』

 狼の毛が逆立っている。

 やられる前にやらないと。

 相手は風。

 火?

 水?

 地?

 何でかしら、集まりが悪い。

「……。」

 近くでこいつらよりも五月蠅い何がいる。

 黒い、ドラゴンもどき。

 弱い。

 弱い。

「光纏え、一閃。」

 地面を蹴り、一気に距離を詰める。

 そして、五月蠅いドラゴンもどきの首を刎ねる。

 あっけない。

 あっけない。

「嘘だろう…。」

 あっけにとられる男。

 五月蠅い男。

 私は剣を振り上げたが、剣は先ほどの衝撃に耐えられなかったのかボロボロと崩れ落ちる。

「……。」

 手にはざらついた粉がついていた。

 手のひらを見つめ、どうするか思案する。

 どうやって殺す。

「ペリドットさんっ!」
『馬鹿者出るなっ!』

 少女が目の前に現れる。

 障害物。

 退ける。

 壊す。


 私は少女に向かって手を伸ばす。

 その時、心臓がドクリと音を立てる。

 駄目だ。

 壊す。

 駄目。

 コワセ。

 駄目っ!

 私の脳裏に何故か泣き出しそうなセラフィナイトの顔が浮かんだ。

 何で泣いているの。

 私の可愛い、可愛い。

 いとし子……。

 お願い…泣かないで…。

 笑ってちょうだい。

 記憶の中のセラフィナイトに手を伸ばすが、私の手は何も触れる事はなかった。
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