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第二章
脱線
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「私の庇護をしていただいている家はどこだかご存じですか?」
「いいえ。」
「どっかの大貴族様だろう?」
首を振るコーラル。
眉を寄せるクォーツ。
「フリード家。」
「えっ!」
「……。」
私がその名前を出せば二人は驚きを隠せないでいた。
「あ、あのですか?」
「あのとはよく分からないけれども、聖都、ルビアンの貴族のフリード家よ。」
「…………お前さ、マジ何もんな訳?」
うめき声を出すクォーツに私は何を言いたいのか分からず首を傾げる。
「何者って、今は騎士見習いね。」
「そうだけど、そうじゃねぇ。」
「それ以外に………。」
私は考えるが、残念ながら思いつくものは全くなかった。
「ないわね。」
「こいつってスゲーのか、そうじゃないのか訳が分からない。」
「ペリドットさんはすごい人ですよ。」
「……なんか信者っぽい奴もいるし、本当にあんた何者だよ。」
「信者って、コーラルさんはそんなんじゃありません。」
「そうですよ、すごい人をすごいと言って何が悪いんですか。」
「本当に洗脳とかされてねぇんだよな。」
「されてません。」
否定するコーラルにクォーツは疑うような目をする。
「出会って数日のなのに、何でそんなにべったりなんだ?」
「何年か前助けてもらったんです。」
「……ふーん。」
「迷子になってたわたしをマラカイトさんとジェダイドさんたちが送ってくれたんです。」
「……マラカイト?」
興奮して私の名前を思わず出してしまったコーラルにクォーツは何か引っかかりを覚えたのか、口元に手を当てる。
「それに、ジェダイドって、確か、フリード家の嫡男じゃねぇか。」
「……へ?」
クォーツの独り言が聞こえたのかコーラルは口を開けて呆けたように私を見る。
「…………マラカイトって確かフリード家の嫡男のジェダイドの許嫁の名前だったよな?」
「えっ!そうなんですかっ!」
コーラルのこの反応の所為で確実にペリドット=マラカイトだとばれてしまった。
コーラルとの再会で隠し通せるか半分半分だと思っていたが、まさかこんなに早くバレるとは予想はしていなかった。
「……お前、本当に隠し通せると思っていたのか?」
「……正直もう少し持つと思っていましたが。」
「明らかに無理だろう。」
クォーツは心底呆れたように私を見てからちらりとコーラルを見る。
確かに彼女に隠し事は無理だとは思っていましたが、ここまでとは。
私はこっそりとため息を零す。
「私は確かにジェダイドの仮の許嫁ですね、ですが、それは彼が本当に好きな人が出来るまでの隠れ蓑です。」
そう言うと、何故か、コーラルさんは残念なものを見るように私を見て。
クォーツはそれを見て何かを悟る。
「ああ、こいつは自分に向けられる好意に疎いタイプなんだな。」
コーラルは何故かコクリと頷いている。
好意を向けられるなんてありえないのに彼らは何故私を哀れむように見ているのか分からなかった。
「一体どういう育ち方をすればこんな好意に鈍感な人間が生まれるんだ?」
「マラカイトさん……ペリドットさんはきっと色々あったんですよ。」
「お前さ、もう少し隠してやる努力しろよ。」
「うっ。」
「そんなんじゃ、皆にばれるぞ。」
「ばれないうちにさっさと進級するから大丈夫よ。」
「はあ?」
「えっ?」
「あら、飛び級制度って知らない?」
「知っているけど、それって成績優秀者だけが受けれる制度だろう。」
「ええ、だけど、制度があるのなら活用するつもりです。」
「……お前の頭って本当にどうなっているんだ?」
「普通です。」
「いいやどこからどういてもイカれているだろうが。」
「失礼ですね。」
クォーツの言葉に私は為気を突きながらそんなにも勝算がないものかと考える。
しかし、進級しないと確実に問題の年までに上にたどり着けそうもないなので、どんな手を使ってでも上に上がるしかなかった。
「話も脱線しましたし、話を戻しましょうか。」
私はポンと手を叩き、表情を引き締めて二人を見る。
「いいえ。」
「どっかの大貴族様だろう?」
首を振るコーラル。
眉を寄せるクォーツ。
「フリード家。」
「えっ!」
「……。」
私がその名前を出せば二人は驚きを隠せないでいた。
「あ、あのですか?」
「あのとはよく分からないけれども、聖都、ルビアンの貴族のフリード家よ。」
「…………お前さ、マジ何もんな訳?」
うめき声を出すクォーツに私は何を言いたいのか分からず首を傾げる。
「何者って、今は騎士見習いね。」
「そうだけど、そうじゃねぇ。」
「それ以外に………。」
私は考えるが、残念ながら思いつくものは全くなかった。
「ないわね。」
「こいつってスゲーのか、そうじゃないのか訳が分からない。」
「ペリドットさんはすごい人ですよ。」
「……なんか信者っぽい奴もいるし、本当にあんた何者だよ。」
「信者って、コーラルさんはそんなんじゃありません。」
「そうですよ、すごい人をすごいと言って何が悪いんですか。」
「本当に洗脳とかされてねぇんだよな。」
「されてません。」
否定するコーラルにクォーツは疑うような目をする。
「出会って数日のなのに、何でそんなにべったりなんだ?」
「何年か前助けてもらったんです。」
「……ふーん。」
「迷子になってたわたしをマラカイトさんとジェダイドさんたちが送ってくれたんです。」
「……マラカイト?」
興奮して私の名前を思わず出してしまったコーラルにクォーツは何か引っかかりを覚えたのか、口元に手を当てる。
「それに、ジェダイドって、確か、フリード家の嫡男じゃねぇか。」
「……へ?」
クォーツの独り言が聞こえたのかコーラルは口を開けて呆けたように私を見る。
「…………マラカイトって確かフリード家の嫡男のジェダイドの許嫁の名前だったよな?」
「えっ!そうなんですかっ!」
コーラルのこの反応の所為で確実にペリドット=マラカイトだとばれてしまった。
コーラルとの再会で隠し通せるか半分半分だと思っていたが、まさかこんなに早くバレるとは予想はしていなかった。
「……お前、本当に隠し通せると思っていたのか?」
「……正直もう少し持つと思っていましたが。」
「明らかに無理だろう。」
クォーツは心底呆れたように私を見てからちらりとコーラルを見る。
確かに彼女に隠し事は無理だとは思っていましたが、ここまでとは。
私はこっそりとため息を零す。
「私は確かにジェダイドの仮の許嫁ですね、ですが、それは彼が本当に好きな人が出来るまでの隠れ蓑です。」
そう言うと、何故か、コーラルさんは残念なものを見るように私を見て。
クォーツはそれを見て何かを悟る。
「ああ、こいつは自分に向けられる好意に疎いタイプなんだな。」
コーラルは何故かコクリと頷いている。
好意を向けられるなんてありえないのに彼らは何故私を哀れむように見ているのか分からなかった。
「一体どういう育ち方をすればこんな好意に鈍感な人間が生まれるんだ?」
「マラカイトさん……ペリドットさんはきっと色々あったんですよ。」
「お前さ、もう少し隠してやる努力しろよ。」
「うっ。」
「そんなんじゃ、皆にばれるぞ。」
「ばれないうちにさっさと進級するから大丈夫よ。」
「はあ?」
「えっ?」
「あら、飛び級制度って知らない?」
「知っているけど、それって成績優秀者だけが受けれる制度だろう。」
「ええ、だけど、制度があるのなら活用するつもりです。」
「……お前の頭って本当にどうなっているんだ?」
「普通です。」
「いいやどこからどういてもイカれているだろうが。」
「失礼ですね。」
クォーツの言葉に私は為気を突きながらそんなにも勝算がないものかと考える。
しかし、進級しないと確実に問題の年までに上にたどり着けそうもないなので、どんな手を使ってでも上に上がるしかなかった。
「話も脱線しましたし、話を戻しましょうか。」
私はポンと手を叩き、表情を引き締めて二人を見る。
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