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第二章
見張り
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「……。」
丁度二時間くらいしてから、私は目を開ける。
「まだ、早いぞ。」
「いえ、このような物でしょう。」
「……あんたさ、本気で死にたいわけ?」
「今は死ねません。」
「今はってさ、どこかのタイミングだったら死んでもいいと思っている訳?」
「私はある人の為に生かされているんです。」
「何それ。」
クォーツは得体の知れないものを見るように私を見る。
「あの人は否応なく事件に巻き込まれてしまいます、だから、私は守りたいと思っているんです。」
「ふーん、だから、こんな場所にいる訳?」
「ええ。」
「……本当にあんたって変わっているな。」
「そう言うクォーツさんだって変わっているんじゃないですか?」
「さん付けはいらない。」
「……クォーツも変わっているんじゃないですか?」
「どうしてそう思い訳?」
「何故、貴方のような人が騎士を目指すのか。」
「手っ取り早く上に受ければいいんだよ。」
「そうですか。」
「おれは術師になれるほどの力はもっていない、だったら、こっちに来るしかないんだよ。」
「……。」
「あんたみたいな力があれば、手っ取り早く復讐できるんだろうな。」
「復讐ですか。」
「……。」
クォーツは喋りすぎたというように自分の口を押える。
「力で復讐をしても悲劇しか生み出しませんよ。」
「……。」
「誰かの恨みを買ってしまいます。」
「知っている、そうじゃなきゃおれはなんのためにここに居るんだよ。」
「……。」
「あんたみたいに恵まれた人間には分からないだろうな。」
「恵まれている…確かにそうですね。」
今ここで何不自由もなくやりたい事をやれている。それはきっと恵まれているのだろう。
縛られ続ける、彼らにとって私は一体どいう風に見えるのだろうか。
「……。」
「あーもー、そんな目をすんなよ、言いたい事があればはっきり言えよ。」
「えっ?」
「あんたさ、ワザと怒らせるように言っているのに、何で分からなんだよ。」
「ワザとですか?」
「本当に鈍いな。」
「申し訳ありません。」
「謝ってほしいわけじゃない、つーの。」
ガシガシとクォーツは自分の髪を掻きまわす。
「本当にあんたと話していたら調子狂う。」
「……。」
「あんたが心底恵まれているようにはみえないさ。」
「そうなんですか?」
「だって、本来なら貴族のお嬢さんのあんたが、剣も魔術も人並み以上に扱える。
そのうえ、何で料理も出来るし、こんな森の中を歩くのも慣れている。
ほんと、あり得ないんだよね。」
「そうなんでしょうか?」
「そうだろうが。」
「それを言うならクォーツも同じですよね?」
「……。」
「貴方も本来ならば上にいるはずの地位を持っているはずでしょうに。」
「はっ、物心ついた時から孤児として生きていたおれとあんたを同じにするなよ。」
「……。」
クォーツの言葉に私はあえて何も言わなかった。
「ちっ、もう寝る。」
「ええ、おやすみなさい。」
クォーツは極まり悪そうにそう言うと寝袋の中に入る。
私は火を絶やさないために枯れた枝を入れる。
そして、空いた時間に保存食づくりや、縫物を進める。
空が白み始めるともぞもぞとコーラルが起き始める。
「おはようございます。」
「おはようございます、コーラルさん、よく眠れましたか?」
「ふぁい…。」
あくび交じりの返事に私は苦笑しながら彼女に温かい飲み物を渡す。
「ありがとうございます。」
「いいえ、それでは残りよろしくお願いしますね。」
「はい、任せてください。」
そう言うとコーラルは自分の頬を叩き、無理やり自分を起こす。
私は意識の半分だけを現実に置きながら体を休ませる為に横になった。
丁度二時間くらいしてから、私は目を開ける。
「まだ、早いぞ。」
「いえ、このような物でしょう。」
「……あんたさ、本気で死にたいわけ?」
「今は死ねません。」
「今はってさ、どこかのタイミングだったら死んでもいいと思っている訳?」
「私はある人の為に生かされているんです。」
「何それ。」
クォーツは得体の知れないものを見るように私を見る。
「あの人は否応なく事件に巻き込まれてしまいます、だから、私は守りたいと思っているんです。」
「ふーん、だから、こんな場所にいる訳?」
「ええ。」
「……本当にあんたって変わっているな。」
「そう言うクォーツさんだって変わっているんじゃないですか?」
「さん付けはいらない。」
「……クォーツも変わっているんじゃないですか?」
「どうしてそう思い訳?」
「何故、貴方のような人が騎士を目指すのか。」
「手っ取り早く上に受ければいいんだよ。」
「そうですか。」
「おれは術師になれるほどの力はもっていない、だったら、こっちに来るしかないんだよ。」
「……。」
「あんたみたいな力があれば、手っ取り早く復讐できるんだろうな。」
「復讐ですか。」
「……。」
クォーツは喋りすぎたというように自分の口を押える。
「力で復讐をしても悲劇しか生み出しませんよ。」
「……。」
「誰かの恨みを買ってしまいます。」
「知っている、そうじゃなきゃおれはなんのためにここに居るんだよ。」
「……。」
「あんたみたいに恵まれた人間には分からないだろうな。」
「恵まれている…確かにそうですね。」
今ここで何不自由もなくやりたい事をやれている。それはきっと恵まれているのだろう。
縛られ続ける、彼らにとって私は一体どいう風に見えるのだろうか。
「……。」
「あーもー、そんな目をすんなよ、言いたい事があればはっきり言えよ。」
「えっ?」
「あんたさ、ワザと怒らせるように言っているのに、何で分からなんだよ。」
「ワザとですか?」
「本当に鈍いな。」
「申し訳ありません。」
「謝ってほしいわけじゃない、つーの。」
ガシガシとクォーツは自分の髪を掻きまわす。
「本当にあんたと話していたら調子狂う。」
「……。」
「あんたが心底恵まれているようにはみえないさ。」
「そうなんですか?」
「だって、本来なら貴族のお嬢さんのあんたが、剣も魔術も人並み以上に扱える。
そのうえ、何で料理も出来るし、こんな森の中を歩くのも慣れている。
ほんと、あり得ないんだよね。」
「そうなんでしょうか?」
「そうだろうが。」
「それを言うならクォーツも同じですよね?」
「……。」
「貴方も本来ならば上にいるはずの地位を持っているはずでしょうに。」
「はっ、物心ついた時から孤児として生きていたおれとあんたを同じにするなよ。」
「……。」
クォーツの言葉に私はあえて何も言わなかった。
「ちっ、もう寝る。」
「ええ、おやすみなさい。」
クォーツは極まり悪そうにそう言うと寝袋の中に入る。
私は火を絶やさないために枯れた枝を入れる。
そして、空いた時間に保存食づくりや、縫物を進める。
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「おはようございます。」
「おはようございます、コーラルさん、よく眠れましたか?」
「ふぁい…。」
あくび交じりの返事に私は苦笑しながら彼女に温かい飲み物を渡す。
「ありがとうございます。」
「いいえ、それでは残りよろしくお願いしますね。」
「はい、任せてください。」
そう言うとコーラルは自分の頬を叩き、無理やり自分を起こす。
私は意識の半分だけを現実に置きながら体を休ませる為に横になった。
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