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第二章
束の間の
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「ど、どういうことですか?」
理解しているのか誓いしていないのか、コーラルはそんな事を言う。
「お前、本当に分からないのか?」
クォーツは苛立った顔でコーラルを睨み、彼女はそれを受け委縮する。
「だって…。」
「コーラルさん、クォーツさんが持ってきたそれと私が持ってきたものがここでは異常な事は分かりますか?」
「何となくですけど。」
「それで分からなかったらどんなけ阿呆なんだろうな。」
「う…。」
クォーツの罵倒にコーラルはとうとう泣きそうな顔になる。
「クォーツさん、もう少し言い方を考えてください。」
「はっ、こんなんで泣くだなんて今後どうするんだよ。」
「……。」
クォーツの言い分も分かるが、それでも、私としてはそれはおいおい慣れて行けばいいだろうし、それに彼の言い方も直しておかないと彼の今後が心配でもあった。
「確かにクォーツさんの言う通りですけれども、貴方も直していった方がいい面もあると思いますよ?」
「……ずっと思っていたんだが、さんなんてつけんなキモイ。」
「はい?」
突然の言葉に私は訳が分からず首を傾げる。
「だから、おれなんかにさんづけなんかいらねぇって言っているんだよ」
「でも。」
「あまりの気持ち悪さで鳥肌が立ってしょうがないんだよ。」
「分かりました、改善します。」
「分かればいいんだよ。」
鼻を鳴らすクォーツに私は苦笑いを浮かべる。
「脱線しちまったが、話を戻すか。」
「はい。」
「おれはこいつを見つけた時にはもう死骸だった。」
「私の方も同じです。」
「……何かきな臭いな。」
「ええ、ただ不自然な点と言えば、これらの死体は比較的新しいはずなのにこんなにも綺麗な状態だという点がありますね。」
「……放置されて結構経っているんじゃいのか?」
「もし、そうならばもっと状態がよくなかったりそれ以前にここに立ち入る冒険者によってギルドに報告が上がっていても可笑しくないはずです。」
「確かにな。」
「うーん、そんな話聞いてませんね。」
「何でてめぇがそう言いきれるんだよ。」
「コーラルさんのお母様はこの街のギルド長です。」
私の言葉にクォーツはギョッと目を見張る。
「マジか。」
「本当ですよ。」
コーラルさんの意外な人脈にクォーツは驚きを隠せないでいた。
「そんなにも驚く事ですか?」
「驚くだろうが、この街のギルド長ってかなりやり手だと聞いているのにその子供がこなんだなんてな。」
「ううう…。」
「親とかはあまり関係ないと思いますよ。」
「えっ?」
「……。」
私の言葉に二人は不思議そうな顔をしている。
「親が何者でも、結局、子どもはその親の所有物でも分身でもないのですから、まったく同じだなんて事はないんですよ。」
「……。」
「……。」
二人とも何か思うところがあるのか私の言葉を聞いて黙り込む。
「さて、そろそろ丁度いい具合になっているでしょう。」
「えっ?」
「何がだ?」
「ご飯ですよ。」
「あっ。」
「……。」
「まずは何か食べましょう、お腹が減っていたらマイナス方向に考えてしまいますし、いい考えがあってもすぐに思いつきませんからね。」
「唐突だな。」
「これ以上火を通すと焦げてしまいますし、それに料理は温かいうちに食べるのが鉄則ですよね?」
「……。」
何とも言えない顔をするクォーツを無視して私は素手で火に手を突っ込む。
「お前っ!」
「ペリドットさんっ!」
何故かギョッとしている二人に私は小首を傾げる。
「ちょうど良い加減ですね。」
多分二人にはまだ暑いだろうと思い、私は布の上にそれを置く。
「お前、火傷はないかっ!」
「ないですよ?」
行き成り手を掴まれ、その手をまじまじと見られ、私はあっ、と気づく。
「私加護持ちなので火に手を入れても大丈夫ですよ?」
私のその言葉を聞き、二人はホッとしたように息を吐いた。
「お願いですから、無茶はしないで下さい。」
「だよな。」
ぐったりとしている二人に申し訳なく思いつつも、私は一人苦笑を浮かべるのだった。
理解しているのか誓いしていないのか、コーラルはそんな事を言う。
「お前、本当に分からないのか?」
クォーツは苛立った顔でコーラルを睨み、彼女はそれを受け委縮する。
「だって…。」
「コーラルさん、クォーツさんが持ってきたそれと私が持ってきたものがここでは異常な事は分かりますか?」
「何となくですけど。」
「それで分からなかったらどんなけ阿呆なんだろうな。」
「う…。」
クォーツの罵倒にコーラルはとうとう泣きそうな顔になる。
「クォーツさん、もう少し言い方を考えてください。」
「はっ、こんなんで泣くだなんて今後どうするんだよ。」
「……。」
クォーツの言い分も分かるが、それでも、私としてはそれはおいおい慣れて行けばいいだろうし、それに彼の言い方も直しておかないと彼の今後が心配でもあった。
「確かにクォーツさんの言う通りですけれども、貴方も直していった方がいい面もあると思いますよ?」
「……ずっと思っていたんだが、さんなんてつけんなキモイ。」
「はい?」
突然の言葉に私は訳が分からず首を傾げる。
「だから、おれなんかにさんづけなんかいらねぇって言っているんだよ」
「でも。」
「あまりの気持ち悪さで鳥肌が立ってしょうがないんだよ。」
「分かりました、改善します。」
「分かればいいんだよ。」
鼻を鳴らすクォーツに私は苦笑いを浮かべる。
「脱線しちまったが、話を戻すか。」
「はい。」
「おれはこいつを見つけた時にはもう死骸だった。」
「私の方も同じです。」
「……何かきな臭いな。」
「ええ、ただ不自然な点と言えば、これらの死体は比較的新しいはずなのにこんなにも綺麗な状態だという点がありますね。」
「……放置されて結構経っているんじゃいのか?」
「もし、そうならばもっと状態がよくなかったりそれ以前にここに立ち入る冒険者によってギルドに報告が上がっていても可笑しくないはずです。」
「確かにな。」
「うーん、そんな話聞いてませんね。」
「何でてめぇがそう言いきれるんだよ。」
「コーラルさんのお母様はこの街のギルド長です。」
私の言葉にクォーツはギョッと目を見張る。
「マジか。」
「本当ですよ。」
コーラルさんの意外な人脈にクォーツは驚きを隠せないでいた。
「そんなにも驚く事ですか?」
「驚くだろうが、この街のギルド長ってかなりやり手だと聞いているのにその子供がこなんだなんてな。」
「ううう…。」
「親とかはあまり関係ないと思いますよ。」
「えっ?」
「……。」
私の言葉に二人は不思議そうな顔をしている。
「親が何者でも、結局、子どもはその親の所有物でも分身でもないのですから、まったく同じだなんて事はないんですよ。」
「……。」
「……。」
二人とも何か思うところがあるのか私の言葉を聞いて黙り込む。
「さて、そろそろ丁度いい具合になっているでしょう。」
「えっ?」
「何がだ?」
「ご飯ですよ。」
「あっ。」
「……。」
「まずは何か食べましょう、お腹が減っていたらマイナス方向に考えてしまいますし、いい考えがあってもすぐに思いつきませんからね。」
「唐突だな。」
「これ以上火を通すと焦げてしまいますし、それに料理は温かいうちに食べるのが鉄則ですよね?」
「……。」
何とも言えない顔をするクォーツを無視して私は素手で火に手を突っ込む。
「お前っ!」
「ペリドットさんっ!」
何故かギョッとしている二人に私は小首を傾げる。
「ちょうど良い加減ですね。」
多分二人にはまだ暑いだろうと思い、私は布の上にそれを置く。
「お前、火傷はないかっ!」
「ないですよ?」
行き成り手を掴まれ、その手をまじまじと見られ、私はあっ、と気づく。
「私加護持ちなので火に手を入れても大丈夫ですよ?」
私のその言葉を聞き、二人はホッとしたように息を吐いた。
「お願いですから、無茶はしないで下さい。」
「だよな。」
ぐったりとしている二人に申し訳なく思いつつも、私は一人苦笑を浮かべるのだった。
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