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第二章
思いかげない
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「あっ、ペリドットさんお帰りなさい。」
「コーラルさん、特に異常はなかった?」
「はい、まったくありませんでしたよ。」
ニコニコと笑っているコーラルに私はホッと息を吐く。
「……何かあったんですか?」
私の反応を見て彼女は何勘づいたのかそう聞いてくる。
「クォーツさんが帰ってきたら話すわね。」
「分かりました。」
私は素直にうなずいてくれた彼女に少しホッとする。
「何か手伝えることありますか?」
「そうね…火を起こしてくれる?」
「分かりました。」
コーラルは頷き、手際よく火をおこし始める。
「手際がいいですね。」
「はい、父にみっちりしごかれましたので。」
「そうなのね。」
「はい、お陰で色々と出来るようになりました。」
胸を張る彼女を微笑ましく思いながら、私は調理の下ごしらえを始める。
「ペリドットさん、包丁とかお鍋とか持ってきてないですけど、大丈夫なんですか?」
「包丁代わりにナイフを使うし、お鍋がなくても調理は出来るわ。」
「へー。」
私はそう言いながら小ぶりのナイフでウサギの肉を食べやすい大きさに切っていく。
そして、持ってきていた塩や香辛料を使って味付けをして木の葉に一口サイズのキノコや香草、薬草を入れていく。
「コーラルさん。」
「はい。」
「そちらの火加減はどうですか?」
「いい感じに燃えてますよ。」
返事になっていない返事に私は苦笑しながら振り返ると確かに私の求めている火加減になっている。
「それではもう入れてしまいましょうか。」
私は三つの木の葉で包んだそれを炎の中に入れ込む。
「ペリドットさんは本当にて慣れていますね。」
「ええ、後はどうしましょうかしら。」
残っているお肉をちょっとした保存料にするのもよし、薬草を見つけたので煎じるのもよし。
そう思っていると、ふっとコーラルの足の事を思い出す。
「コーラルさん、足は大丈夫ですか?」
「……。」
ぎくりと体を強張せる彼女に私は苦笑を漏らす。
「靴擦れを起こしてますよね?」
「何で…分かったんですか?」
「見ていたら分かりますよ。」
「うー…。」
うめき声を上げる彼女を無視して、私は軟膏の薬を取り出す。
「こちらを塗ってください、少しはましになります。」
「薬って高いじゃないですか、もらえませんっ!」
「買ったものじゃないし、私が作ったもので申し訳ないけれども、ちゃんと効果があるから使って。」
「えっ、ペリドットさんの手作りですかっ!」
ギョッとしてから彼女はマジマジと私の作った軟膏を見る。
「ペリドットさんって多才ですよね。」
「そんな事ないわ、私なんかよりすごい人なんて沢山いるわ。」
「……。」
彼女は何とも言えない顔で私を見るが、しばらくじっと見つめていると力なく首を振った。
「ジェダイドさん、きっとやきもきしてますね。」
「何がかしら?」
「ペリドットさんはすごい人なのに本人はちゃんと理解していないという話ですっ!」
「そんな事はないわ。」
そう私が言うが彼女は信じていないのかジト目で私を見ている。
ちゃんと理解しているわ、私は平々凡々で全くの非才で色々中途半端に手を出しているバカ者だという事だ。
「おい、お前ら何をしているんだ?」
水を汲んできてくれたクォーツは私たちを見て眉根を寄せている。
「お帰りなさい、まだご飯は出来ていないの。」
「別にいい。」
そう言うと彼はドカリと座り込む。
「どうかしたのですか?」
「お前らはこれをどう見る?」
そう言って彼は綺麗な薄青の鱗を私たちに見せる。
「うわ、綺麗ですね。」
「これは…。」
コーラルはただ喜んでいるが、私は顔を顰める。
「………あんたは分かるんだな。」
「海にしか生息しないアイスフィッシュですね。」
「やっぱりそうだよな。」
「えっ、海?海なんてずっと先にしかないじゃないですか?」
「そのはずなんだよな。」
「……こちらを見ていただけますか?」
私はそう言うと先ほど見つけた緋猪の牙を二人に見せる。
「何かの骨ですか?」
「これって。」
「私たちの今回のお題の緋猪の牙です。」
私がそう言うとコーラルはぽかりと口を開け、クォーツは頭を抱え何が起こっているんだとうめき声を出す。
私も予想外の出来事に唇を噛む。
「コーラルさん、特に異常はなかった?」
「はい、まったくありませんでしたよ。」
ニコニコと笑っているコーラルに私はホッと息を吐く。
「……何かあったんですか?」
私の反応を見て彼女は何勘づいたのかそう聞いてくる。
「クォーツさんが帰ってきたら話すわね。」
「分かりました。」
私は素直にうなずいてくれた彼女に少しホッとする。
「何か手伝えることありますか?」
「そうね…火を起こしてくれる?」
「分かりました。」
コーラルは頷き、手際よく火をおこし始める。
「手際がいいですね。」
「はい、父にみっちりしごかれましたので。」
「そうなのね。」
「はい、お陰で色々と出来るようになりました。」
胸を張る彼女を微笑ましく思いながら、私は調理の下ごしらえを始める。
「ペリドットさん、包丁とかお鍋とか持ってきてないですけど、大丈夫なんですか?」
「包丁代わりにナイフを使うし、お鍋がなくても調理は出来るわ。」
「へー。」
私はそう言いながら小ぶりのナイフでウサギの肉を食べやすい大きさに切っていく。
そして、持ってきていた塩や香辛料を使って味付けをして木の葉に一口サイズのキノコや香草、薬草を入れていく。
「コーラルさん。」
「はい。」
「そちらの火加減はどうですか?」
「いい感じに燃えてますよ。」
返事になっていない返事に私は苦笑しながら振り返ると確かに私の求めている火加減になっている。
「それではもう入れてしまいましょうか。」
私は三つの木の葉で包んだそれを炎の中に入れ込む。
「ペリドットさんは本当にて慣れていますね。」
「ええ、後はどうしましょうかしら。」
残っているお肉をちょっとした保存料にするのもよし、薬草を見つけたので煎じるのもよし。
そう思っていると、ふっとコーラルの足の事を思い出す。
「コーラルさん、足は大丈夫ですか?」
「……。」
ぎくりと体を強張せる彼女に私は苦笑を漏らす。
「靴擦れを起こしてますよね?」
「何で…分かったんですか?」
「見ていたら分かりますよ。」
「うー…。」
うめき声を上げる彼女を無視して、私は軟膏の薬を取り出す。
「こちらを塗ってください、少しはましになります。」
「薬って高いじゃないですか、もらえませんっ!」
「買ったものじゃないし、私が作ったもので申し訳ないけれども、ちゃんと効果があるから使って。」
「えっ、ペリドットさんの手作りですかっ!」
ギョッとしてから彼女はマジマジと私の作った軟膏を見る。
「ペリドットさんって多才ですよね。」
「そんな事ないわ、私なんかよりすごい人なんて沢山いるわ。」
「……。」
彼女は何とも言えない顔で私を見るが、しばらくじっと見つめていると力なく首を振った。
「ジェダイドさん、きっとやきもきしてますね。」
「何がかしら?」
「ペリドットさんはすごい人なのに本人はちゃんと理解していないという話ですっ!」
「そんな事はないわ。」
そう私が言うが彼女は信じていないのかジト目で私を見ている。
ちゃんと理解しているわ、私は平々凡々で全くの非才で色々中途半端に手を出しているバカ者だという事だ。
「おい、お前ら何をしているんだ?」
水を汲んできてくれたクォーツは私たちを見て眉根を寄せている。
「お帰りなさい、まだご飯は出来ていないの。」
「別にいい。」
そう言うと彼はドカリと座り込む。
「どうかしたのですか?」
「お前らはこれをどう見る?」
そう言って彼は綺麗な薄青の鱗を私たちに見せる。
「うわ、綺麗ですね。」
「これは…。」
コーラルはただ喜んでいるが、私は顔を顰める。
「………あんたは分かるんだな。」
「海にしか生息しないアイスフィッシュですね。」
「やっぱりそうだよな。」
「えっ、海?海なんてずっと先にしかないじゃないですか?」
「そのはずなんだよな。」
「……こちらを見ていただけますか?」
私はそう言うと先ほど見つけた緋猪の牙を二人に見せる。
「何かの骨ですか?」
「これって。」
「私たちの今回のお題の緋猪の牙です。」
私がそう言うとコーラルはぽかりと口を開け、クォーツは頭を抱え何が起こっているんだとうめき声を出す。
私も予想外の出来事に唇を噛む。
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