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第二章
敵視されております
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突き刺さる視線。
それには侮蔑、疑惑、好奇心、困惑、様々なものが混じっているが、私を心配するような視線はなかった。
否、一つだけあるけれども、それはコーラルだけ。
「それじゃ、早速だが、模擬戦を行おうと思う、立候補者はいるか?」
今回の実技を教える教官役の騎士は生徒たちが発している空気に気づいているのか、気づいていないのか、そんな言葉を言う。
「はいっ!」
数日前受付で騒いでいた貴族の少女が背筋を伸ばしはっきりとした声を上げた。
「君は…確か。」
「アイアゲート・リリアーヌ――。」
貴族の少女が家名を名乗ろうとするが、教官は手に持っていた紙を手で打ち彼女の言葉を止める。
少女は自分の言葉を止めた教官をジトリと睨む。
「ここでは貴族だろうが、平民だろうが一応平等に扱う。」
「……。」
「アイアゲートだったな、対戦相手は誰を選ぶ?」
「あの下民ですわ。」
貴族の少女はそう言って私に指をさした。
「……。」
ざわつく周りに対し、私の心だけは変に落ち着いていた。
「……そこの白髪の―――。」
「ペリドットと申します。」
もし、視線が剣だとしたら私の体から血が噴き出るほどの視線が突き刺さっている事だろう。
「二人とも前に出ろ。」
「はい。」
「分かりました。」
コーラルだけが心配そうに私を見上げていた。
大丈夫と言うように私が頷くと、何故か複雑そうな顔をして相手のアイアゲートを気の毒そうに見る。
「貴女のような下民がどうやって取り入ったのか分からないけれども、ここではそんな媚は通用しないわ。」
「媚など売った覚えはありませんが、何を言っても無駄でしょうね。」
このような少女は自分が正しいと思ったら反対の意見など一切聞かないのだ。
旅をしていた頃の私はそんな事分からなかったけれども、あの家で過ごし嫌になるほどそういう人たちを見てきた。
だからこうして敵視されてしまうのも慣れてしまったような気がする。
「……本当に老婆のように真っ白な髪、何と汚らわしいのでしょうね。」
――お前の白雪のような髪は綺麗だな。
「それに能面のような顔、まるで人形のよう。」
――ふふふ、貴女の顔好きよ、まるでお人形さんみたいね。
彼女の吐きだす言葉の後に大切な人たちの言葉が思い出す。
「自分の力だと思いあがっているようだから、ここでただして見せますわ。」
――君は強い、その心も技も。
「さあ、剣を抜きなさいな。」
――ははうえーっ!がんばってー!
ええ、セラフィナイト頑張るわ。
私はすっと剣を抜き構える。
相手は私の構えを見て鼻で笑う。
「なってませんわね。」
模範のような構え方をする相手に私は一度目を閉じ、感情を消す。
シンと不自然に静まり返る。
「始めっ!」
審判の声と同時にアイアゲートが攻撃を仕掛けてくる。
だけど、それはどれも単調で私はそれを全て弾く。
どうやって反撃をしましょうか。
簡単に下すとプライドの高い彼女がどう爆発するのか分からない。
かといって負けるのはそれはそれで、彼女を増長させ後々他の人たちにも迷惑がかかるだろう。
だから、勝たないといけない。
だけど、その勝ち方も遺恨を遺さないように…。
焦れたのかアイアゲートの攻撃が大雑把なものになる。
私は立ち止まり、剣技だけで彼女の剣をしのぐ。
そして、私が待っていた瞬間が訪れる。
キーンと金属の独特な高い音が鳴り、アイアゲートの剣が彼女の手元から離れ遠くの地面に突き刺さる。
「勝負あり。」
「なっ!」
まさか自分が負けるとは思っていなかったのか、アイアゲートは始めこそ虚を突かれたような顔をしたが、すぐに憎々しそうに私を睨む。
結局私は彼女の恨みを買ってしまったようだ。
避けられなかった事態に私は心の中で嘆息する。
それには侮蔑、疑惑、好奇心、困惑、様々なものが混じっているが、私を心配するような視線はなかった。
否、一つだけあるけれども、それはコーラルだけ。
「それじゃ、早速だが、模擬戦を行おうと思う、立候補者はいるか?」
今回の実技を教える教官役の騎士は生徒たちが発している空気に気づいているのか、気づいていないのか、そんな言葉を言う。
「はいっ!」
数日前受付で騒いでいた貴族の少女が背筋を伸ばしはっきりとした声を上げた。
「君は…確か。」
「アイアゲート・リリアーヌ――。」
貴族の少女が家名を名乗ろうとするが、教官は手に持っていた紙を手で打ち彼女の言葉を止める。
少女は自分の言葉を止めた教官をジトリと睨む。
「ここでは貴族だろうが、平民だろうが一応平等に扱う。」
「……。」
「アイアゲートだったな、対戦相手は誰を選ぶ?」
「あの下民ですわ。」
貴族の少女はそう言って私に指をさした。
「……。」
ざわつく周りに対し、私の心だけは変に落ち着いていた。
「……そこの白髪の―――。」
「ペリドットと申します。」
もし、視線が剣だとしたら私の体から血が噴き出るほどの視線が突き刺さっている事だろう。
「二人とも前に出ろ。」
「はい。」
「分かりました。」
コーラルだけが心配そうに私を見上げていた。
大丈夫と言うように私が頷くと、何故か複雑そうな顔をして相手のアイアゲートを気の毒そうに見る。
「貴女のような下民がどうやって取り入ったのか分からないけれども、ここではそんな媚は通用しないわ。」
「媚など売った覚えはありませんが、何を言っても無駄でしょうね。」
このような少女は自分が正しいと思ったら反対の意見など一切聞かないのだ。
旅をしていた頃の私はそんな事分からなかったけれども、あの家で過ごし嫌になるほどそういう人たちを見てきた。
だからこうして敵視されてしまうのも慣れてしまったような気がする。
「……本当に老婆のように真っ白な髪、何と汚らわしいのでしょうね。」
――お前の白雪のような髪は綺麗だな。
「それに能面のような顔、まるで人形のよう。」
――ふふふ、貴女の顔好きよ、まるでお人形さんみたいね。
彼女の吐きだす言葉の後に大切な人たちの言葉が思い出す。
「自分の力だと思いあがっているようだから、ここでただして見せますわ。」
――君は強い、その心も技も。
「さあ、剣を抜きなさいな。」
――ははうえーっ!がんばってー!
ええ、セラフィナイト頑張るわ。
私はすっと剣を抜き構える。
相手は私の構えを見て鼻で笑う。
「なってませんわね。」
模範のような構え方をする相手に私は一度目を閉じ、感情を消す。
シンと不自然に静まり返る。
「始めっ!」
審判の声と同時にアイアゲートが攻撃を仕掛けてくる。
だけど、それはどれも単調で私はそれを全て弾く。
どうやって反撃をしましょうか。
簡単に下すとプライドの高い彼女がどう爆発するのか分からない。
かといって負けるのはそれはそれで、彼女を増長させ後々他の人たちにも迷惑がかかるだろう。
だから、勝たないといけない。
だけど、その勝ち方も遺恨を遺さないように…。
焦れたのかアイアゲートの攻撃が大雑把なものになる。
私は立ち止まり、剣技だけで彼女の剣をしのぐ。
そして、私が待っていた瞬間が訪れる。
キーンと金属の独特な高い音が鳴り、アイアゲートの剣が彼女の手元から離れ遠くの地面に突き刺さる。
「勝負あり。」
「なっ!」
まさか自分が負けるとは思っていなかったのか、アイアゲートは始めこそ虚を突かれたような顔をしたが、すぐに憎々しそうに私を睨む。
結局私は彼女の恨みを買ってしまったようだ。
避けられなかった事態に私は心の中で嘆息する。
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