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第二章
特別扱いは結構なんですが
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手続きを何とか終えた私たちはそれぞれの部屋の鍵を受け取った。
「ペリドットさんの寮はどこですか?」
「私は紫苑ね。」
「違うみたいですね、わたしは茜です。」
「そう…。」
私はコーラルの言葉を聞いて確信してしまった。
どうやら私の寮は貴族用の寮、コーラルは下級階級もしくは平民用の寮だろう。
はっきり言って私は一般人の分類に入るはずなのだが、あの方々の後ろ盾があるからか、下手に扱えないとして貴族用の寮に入れられたのだろう。
はっきり言って特別扱いは嬉しくはないのだけれども…。
「せっかく同期になったのだからお部屋にお邪魔したかったんですけども、それも、難しそうですね。」
「ええ、かなり離れているわね。」
丁度私たちは寮の分かれ道まで来ていた。
紫苑の寮は左方向に、茜の寮は右方向、もう一つ菫の葵はこのまままっすぐにあるようだった。
紫苑の寮は大きいからかこの場所からでも建物が見えるのだが、葵も茜もここからではまだ建物が見えなかった。
「うー、色々不安です。」
「大丈夫よ。」
「………そんなはずありません、絶対に何かやらかします。」
「……。」
しょっぱなに迷子として出会ったので、彼女の言葉を否定する言葉が出てこなかった。
「はー……不安です。」
「皆不安だから、ね?」
「ペリドットさんもですか?」
「ええ。」
私の言葉が意外だったのか、コーラルは数回瞬く。
「そんなふうには見えませんでした。」
「ええ、セラフィナイト元気でやっているかしらって。」
「…えっと、心配の方向が違うような気がします。」
「そうかしら?」
「はい。」
「最近のあの子はかくれんぼが好きで、下手をすると屋敷の者全員で探し回るくらいなのよ。」
「……。」
「それにお父さまもお母さまもジェダイドもなんだかんだでセラフィナイトに甘いから叱らないし、本当に大丈夫かしら…。」
口に出せばドシリと胸が重くなるような気がした。
「えっと、セラフィナイトちゃんってペリドットさんの実の娘でしたっけ?」
それにしては年齢が、えっ?えっ?っと何故かコーラルは目を白黒させている。
「娘ではないわ。」
「ですよね。」
「まあ、私たちの子どもみたいなものね。」
「へ?えっ?えっ?」
ギョッとしているコーラルを無視して私は荷物を抱えなおす。
「早く寮に行きましょうか、遅くなったら片付けも出来ないからね。」
「えっ、は、はい、そうですね。」
コクコクとコーラルは首を縦に振る。
「それじゃ、また明日。」
「はい、また明日です。」
コーラルは私の言葉に顔を輝かせて自分の寮に向かって歩き出すが、数歩歩いただけで躓いてこけそうになっている。
「……。」
私は思わず駆け付けたい気持ちをぐっと抑え込み、自分の寮に向かって歩き出す。
その寮は近そうに見えて、思ったよりも近くはなかった。
どうやら大きな建物だったみたいで、遠近法で近くに見えただけだった。
ようやく敷地内にたどり着く居た時にはコーラルと別れて三十分は経っていた。
「……余裕をもって行動しないといけませんね。」
一つ息を吐き、私は重そうな扉に手をかける。
見た目通りに重い扉に少し眉を寄せながら中に入ると明らかに貴族が好みそうなきらびやかなエントランスホールに私はまたため息を零しそうになる。
「もっと質素なものでいいと思うのに。」
きっと部屋の方もきらびやかなものだと思うと今からどっと疲れてしまう。
正直に言えば雨風をしのげて寝れる場所があればそれだけでいいはずなのに、何でここまで贅沢をするのか私には理解できなかった。
それでも、郷に入っては郷に従え、という言葉があるので、従うつもりではあるが、こう考えてしまうくらいは許してもらえるだろう。
お金の無駄遣い。
成金趣味。
こんな事にお金をかけるくらいならばもっと別の所にかければいいのに。
まあ、明らかに貴族向けの寮なので、他の寮はもっと質素なものの可能性がある。
正直あんな紙切れ一枚でこんな特別扱いされるだなんて、知っていれば多分出さなかった。
でも、出さなかったら、出さなかったら面倒な事が起きていそうなので、結局は変わらなかっただろう。
「ぼー、っとしても仕方ない、部屋に行きましょう。」
私は気合を入れるために自分の頬を叩き、荷物を持ち直して自分の部屋に向かった。
そして、私は大きすぎる一人部屋に思わず膝をついてしまった。
ある程度は予想はしていたけれども、目の当たりにした部屋は私の予想をはるかに超えるほどの豪勢な部屋だった。
「ペリドットさんの寮はどこですか?」
「私は紫苑ね。」
「違うみたいですね、わたしは茜です。」
「そう…。」
私はコーラルの言葉を聞いて確信してしまった。
どうやら私の寮は貴族用の寮、コーラルは下級階級もしくは平民用の寮だろう。
はっきり言って私は一般人の分類に入るはずなのだが、あの方々の後ろ盾があるからか、下手に扱えないとして貴族用の寮に入れられたのだろう。
はっきり言って特別扱いは嬉しくはないのだけれども…。
「せっかく同期になったのだからお部屋にお邪魔したかったんですけども、それも、難しそうですね。」
「ええ、かなり離れているわね。」
丁度私たちは寮の分かれ道まで来ていた。
紫苑の寮は左方向に、茜の寮は右方向、もう一つ菫の葵はこのまままっすぐにあるようだった。
紫苑の寮は大きいからかこの場所からでも建物が見えるのだが、葵も茜もここからではまだ建物が見えなかった。
「うー、色々不安です。」
「大丈夫よ。」
「………そんなはずありません、絶対に何かやらかします。」
「……。」
しょっぱなに迷子として出会ったので、彼女の言葉を否定する言葉が出てこなかった。
「はー……不安です。」
「皆不安だから、ね?」
「ペリドットさんもですか?」
「ええ。」
私の言葉が意外だったのか、コーラルは数回瞬く。
「そんなふうには見えませんでした。」
「ええ、セラフィナイト元気でやっているかしらって。」
「…えっと、心配の方向が違うような気がします。」
「そうかしら?」
「はい。」
「最近のあの子はかくれんぼが好きで、下手をすると屋敷の者全員で探し回るくらいなのよ。」
「……。」
「それにお父さまもお母さまもジェダイドもなんだかんだでセラフィナイトに甘いから叱らないし、本当に大丈夫かしら…。」
口に出せばドシリと胸が重くなるような気がした。
「えっと、セラフィナイトちゃんってペリドットさんの実の娘でしたっけ?」
それにしては年齢が、えっ?えっ?っと何故かコーラルは目を白黒させている。
「娘ではないわ。」
「ですよね。」
「まあ、私たちの子どもみたいなものね。」
「へ?えっ?えっ?」
ギョッとしているコーラルを無視して私は荷物を抱えなおす。
「早く寮に行きましょうか、遅くなったら片付けも出来ないからね。」
「えっ、は、はい、そうですね。」
コクコクとコーラルは首を縦に振る。
「それじゃ、また明日。」
「はい、また明日です。」
コーラルは私の言葉に顔を輝かせて自分の寮に向かって歩き出すが、数歩歩いただけで躓いてこけそうになっている。
「……。」
私は思わず駆け付けたい気持ちをぐっと抑え込み、自分の寮に向かって歩き出す。
その寮は近そうに見えて、思ったよりも近くはなかった。
どうやら大きな建物だったみたいで、遠近法で近くに見えただけだった。
ようやく敷地内にたどり着く居た時にはコーラルと別れて三十分は経っていた。
「……余裕をもって行動しないといけませんね。」
一つ息を吐き、私は重そうな扉に手をかける。
見た目通りに重い扉に少し眉を寄せながら中に入ると明らかに貴族が好みそうなきらびやかなエントランスホールに私はまたため息を零しそうになる。
「もっと質素なものでいいと思うのに。」
きっと部屋の方もきらびやかなものだと思うと今からどっと疲れてしまう。
正直に言えば雨風をしのげて寝れる場所があればそれだけでいいはずなのに、何でここまで贅沢をするのか私には理解できなかった。
それでも、郷に入っては郷に従え、という言葉があるので、従うつもりではあるが、こう考えてしまうくらいは許してもらえるだろう。
お金の無駄遣い。
成金趣味。
こんな事にお金をかけるくらいならばもっと別の所にかければいいのに。
まあ、明らかに貴族向けの寮なので、他の寮はもっと質素なものの可能性がある。
正直あんな紙切れ一枚でこんな特別扱いされるだなんて、知っていれば多分出さなかった。
でも、出さなかったら、出さなかったら面倒な事が起きていそうなので、結局は変わらなかっただろう。
「ぼー、っとしても仕方ない、部屋に行きましょう。」
私は気合を入れるために自分の頬を叩き、荷物を持ち直して自分の部屋に向かった。
そして、私は大きすぎる一人部屋に思わず膝をついてしまった。
ある程度は予想はしていたけれども、目の当たりにした部屋は私の予想をはるかに超えるほどの豪勢な部屋だった。
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