逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第二章

ペリドット

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「………………本当に行くのか?」
「はい。」

 お父さまの書斎に呼ばれ、私は一つの紹介状を受け取った。
 心配そうにお父さま見てくるが、私の決意ははじめから決まっていたのだから。

「……………分かった、だが、あいつとの約束通り、偽名で言ってもらう。」
「分かっています。」
「紹介状を見てくれ。」

 私は言われた通り、紹介状を見る。
 内容は簡潔に言えば、お父さまが私の力量を保証するから騎士候補として推薦するという内容だった。
 そして、その中に綴られている名前がこれからの私の名前となる。

「「ペリドット」。」
「ああ。」

 その名前はある意味本当の私の名前だった。
 ここの家にお世話になっている間に私はお母さまのとの関係性を調べてもらった。
 そして、血縁関係だとはっきりと言われた。
 つまり、私はお母さまから見れば姪なのだ。
 指輪の時点で分かっていたけれども、お母さまは念には念をと調べたのだ。
 そして、それを調べてもらった方は口が堅く、お母さまたちの信頼を得た人なので多分悪用はされないだろう。

「マラカイト、本当にいいのか。」
「はい、はじめから決めていた事です。」
「……セラフィナイトはどうするのだ。」
「……。」
「休みがあると言え、行き来でかなり時間が取られるうえに成長を見守る事は出来ないのだぞ。」
「分かっています、だけど、ジェダイドが居ます。」
「あれに預けて本当に大丈夫だと思うのか?」
「……。」

 お父さまの心配はごもっともだろう、セラフィナイトが言葉を話し始めてからジェダイドの溺愛っぷりは思わず、貴方誰?と思うほどだった。
 もともとセラフィナイトに甘い所は会ったのは分かっていたけれども、まさか、ここまでだとは思ってもみなかった。

「だ、大丈夫…です。」
「………………。」

 色々な感情を混ぜながら見つめてくるお父さまに私は顔を引きつらせる。

 うん、多分大丈夫だと思う。

 思う…。

 セラフィナイトは賢い子だから無駄遣いとかはしないだろうけど…。

 ジェダイドは甘いから何かと買おうとするし。

 お母さまはセラフィナイトを女の子みたいに着飾る時もあるし。

 本当に大丈夫…かしら…。

 徐々に落ち込み始める私にお父さまはゆっくり考えなさいと言ってくれた。

 決心はついているのだけど、予想外の問題に私は部屋を出てからこっそりとため息を零したのだった。
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