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第一章
子供の成長
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「マ~マ…。」
小さな手を伸ばして私に向かって歩いてくるセラフィナイトに私はしゃがみ込み、両手を広げる。
「セラフィナイト。」
「あ~。」
嬉しそうにセラフィナイトは私に抱き着いてくる。
「あんよ、上手ね。」
私はセラフィナイトを抱え上げる。
あの頃よりも大きくなった体に、私は子どもの成長は早いものだと実感をする。
「マラカイト。」
少し低くなった馴染みの声に私は振り返る。
「ジェダイド、お帰りなさい。」
「ただいま、お前は今日の授業は?もう終わったのか?」
「今日は歴史の勉強だったわ。今日の分は終わったので、お母さまと一緒にお茶をすることになって、移動中なの。」
「そうか。」
あれから少し年月が経ち、私はジェダイドの母の事を「お母さま」、父の事を「お父さま」と呼ぶようになった。
何せ、呼ばないとジェダイドの母はすぐにへそを曲げてしまうので、呼ぶしかなかった。
「ジェダイドは、視察はもういいの?」
「ああ、明日夜会があるから戻ってくるように言われてな。」
「そうなのね。」
「明日、デビューだな。」
何がおかしいのかニヤリと笑う彼に私は軽く睨む。
「美人が台無しだぞ?」
「もう、ジェダイドは冗談を言うようになったわね。」
「そうか?」
「そうよ、少し前は可愛かったのに。」
「…男に可愛いはないと思うが?」
「そうかしら?」
私は彼見る。
出会ってから今日までで身長差がかなり空いてしまった。
前は少し顔を上げるくらいだったのに、今では上目遣いだ。
「…はぁ、お前はいつもそうだな。」
ジェダイドはため息をついて、そして、私の髪に触れる。
「ジェダイド?」
「やっぱり、お前には緑がいいな。」
訝しがりながら髪に触れると何か硬いものが指に当たった。
「外すなよ、似合っているからな。」
「…もう、また無駄遣いをして。」
あの夜に好きな色を聞いてからこうしてジェダイドは私に贈り物を送るようになった。
はじめは黒曜石のイヤリング。
次は緑のバラが掘られたブローチ。
それから、遠出をするたび彼は色々な物を買ってくるようになり、私の部屋は彼からの贈り物であふれていた。
「無駄じゃねぇよ。」
「……。」
私は諦めたように首を竦める。
「……今度は手袋に刺繍しましょうか。」
「ああ、頼む。」
私はもらうだけじゃ申し訳なく思ったので、自分の出来る事、料理や刺繍など思いつく限りをしている。
そして、明日には間に合わないけど、きっと今後使うと思われる手袋に刺繍をしようと誓う。
「あまり得意じゃないけど。」
「いや、お前のは店を出して可笑しくねぇよ。」
「そんな事はないけど、そう言ってくれると嬉しいわ。」
「……そろそろ、お前を解放しないと母上がうるさいな。」
「ふふふ、そうね。」
「じゃあ、後でな。」
「ええ、後で。」
「セラも後ででな。」
「あ~。」
嬉しそうな声を上げるセラフィナイトに私たちは顔を見合わせ微笑む。
「じゃあ。」
「ええ。」
私はお母さまの部屋に、ジェダイドじゃ自室に向かって歩き出した。
小さな手を伸ばして私に向かって歩いてくるセラフィナイトに私はしゃがみ込み、両手を広げる。
「セラフィナイト。」
「あ~。」
嬉しそうにセラフィナイトは私に抱き着いてくる。
「あんよ、上手ね。」
私はセラフィナイトを抱え上げる。
あの頃よりも大きくなった体に、私は子どもの成長は早いものだと実感をする。
「マラカイト。」
少し低くなった馴染みの声に私は振り返る。
「ジェダイド、お帰りなさい。」
「ただいま、お前は今日の授業は?もう終わったのか?」
「今日は歴史の勉強だったわ。今日の分は終わったので、お母さまと一緒にお茶をすることになって、移動中なの。」
「そうか。」
あれから少し年月が経ち、私はジェダイドの母の事を「お母さま」、父の事を「お父さま」と呼ぶようになった。
何せ、呼ばないとジェダイドの母はすぐにへそを曲げてしまうので、呼ぶしかなかった。
「ジェダイドは、視察はもういいの?」
「ああ、明日夜会があるから戻ってくるように言われてな。」
「そうなのね。」
「明日、デビューだな。」
何がおかしいのかニヤリと笑う彼に私は軽く睨む。
「美人が台無しだぞ?」
「もう、ジェダイドは冗談を言うようになったわね。」
「そうか?」
「そうよ、少し前は可愛かったのに。」
「…男に可愛いはないと思うが?」
「そうかしら?」
私は彼見る。
出会ってから今日までで身長差がかなり空いてしまった。
前は少し顔を上げるくらいだったのに、今では上目遣いだ。
「…はぁ、お前はいつもそうだな。」
ジェダイドはため息をついて、そして、私の髪に触れる。
「ジェダイド?」
「やっぱり、お前には緑がいいな。」
訝しがりながら髪に触れると何か硬いものが指に当たった。
「外すなよ、似合っているからな。」
「…もう、また無駄遣いをして。」
あの夜に好きな色を聞いてからこうしてジェダイドは私に贈り物を送るようになった。
はじめは黒曜石のイヤリング。
次は緑のバラが掘られたブローチ。
それから、遠出をするたび彼は色々な物を買ってくるようになり、私の部屋は彼からの贈り物であふれていた。
「無駄じゃねぇよ。」
「……。」
私は諦めたように首を竦める。
「……今度は手袋に刺繍しましょうか。」
「ああ、頼む。」
私はもらうだけじゃ申し訳なく思ったので、自分の出来る事、料理や刺繍など思いつく限りをしている。
そして、明日には間に合わないけど、きっと今後使うと思われる手袋に刺繍をしようと誓う。
「あまり得意じゃないけど。」
「いや、お前のは店を出して可笑しくねぇよ。」
「そんな事はないけど、そう言ってくれると嬉しいわ。」
「……そろそろ、お前を解放しないと母上がうるさいな。」
「ふふふ、そうね。」
「じゃあ、後でな。」
「ええ、後で。」
「セラも後ででな。」
「あ~。」
嬉しそうな声を上げるセラフィナイトに私たちは顔を見合わせ微笑む。
「じゃあ。」
「ええ。」
私はお母さまの部屋に、ジェダイドじゃ自室に向かって歩き出した。
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