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第一章
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私は諦めて自室に戻ろうと踵を返すと、そこには大口を開けで呆然としているアンさんの姿があった。
「あっ。」
「ん?」
私が思わず声を漏らせば、怪訝な声を出すジェダイドがいたが、そこは取り敢えず置いといて。
「アンさん。」
「アナタってーー。」
「……。」
彼女の口から漏れる言葉に私は黙って待つ。
「凄いお嬢様だったんですね~。」
「えっ?」
「うわ~、只者じゃないとは思ったけど凄い、凄い~。」
「……。」
アンさんの脳内で何故そうなっているのか全く理解できなかったが、それでも、このままではよくないと思い、私は口を開こうとする。
「あの、私は別にお嬢様じゃないですけど。」
「そんなはずは有り得ません~。」
「……いえ、本当ですから。」
思わず私はそう呟いたが、アンさんは私の呟きなど聞こえていないのか、そのままスルーする。
「その気品とか、絶対只者じゃないと思いました~。」
「そんなのありませんよ。」
「ジャガイモの皮むきも早かったですし~。」
「いや、ジャガイモの皮むきが早い貴族の子女はいないと思うぞ。」
「……。」
ジェダイドの突っ込みに私は静かに頷く。
「そんな事はありませんよ~。」
「いや、あるからな。」
「だって、そちらにいるじゃないですか~。」
アンさんは私を指さす。
いえ、だから、私はお嬢様じゃありません。
……いえ、生まれはもしかしたらですけど…、育ちは普通に市民ですし。
「まあ、分からないくはないが。」
何故か肯定しそうなジェダイドに私は思わず目を見開く。
「ちょっと。」
「残念ながら違うらしい。」
「らしい、って何ですか。」
「そうなんですか~。」
「ああ。」
神妙な顔をする二人に私はどう対応すればいいのか分からなくなってしまう。
「こんなに綺麗なのに~。」
「ああ。」
「こんなにお嬢様~、みたいなのに~。」
「ああ。」
「嘘でしょう~。」
「残念ながら本人曰く一般人らしい。」
「……残念だ~。」
「ああ。」
意気投合している二人に私はもうどうすればいいのか分からず、ただただ、見ているだけになっていた。
「…こいつを連れていく。」
「分かりました~。」
「行くぞ。」
「えっ?」
てっきり一人で部屋に戻ると思っていた私はジェダイドに手を引かれる。
「えっ、あの、私一人で戻れるわよ。」
「ああ、そうだな。」
「なら、何で。」
「…今のお前を一人にしたら絶対に何かしらに首を突っ込んで俺らが部屋に言ってもお前はいないという事態になりかねないだろう。」
「……。」
そんな事はない、と思いたのだが、残念ながら彼の横顔を見ていると、その否定の言葉が出る事がなかった。
「あっ。」
「ん?」
私が思わず声を漏らせば、怪訝な声を出すジェダイドがいたが、そこは取り敢えず置いといて。
「アンさん。」
「アナタってーー。」
「……。」
彼女の口から漏れる言葉に私は黙って待つ。
「凄いお嬢様だったんですね~。」
「えっ?」
「うわ~、只者じゃないとは思ったけど凄い、凄い~。」
「……。」
アンさんの脳内で何故そうなっているのか全く理解できなかったが、それでも、このままではよくないと思い、私は口を開こうとする。
「あの、私は別にお嬢様じゃないですけど。」
「そんなはずは有り得ません~。」
「……いえ、本当ですから。」
思わず私はそう呟いたが、アンさんは私の呟きなど聞こえていないのか、そのままスルーする。
「その気品とか、絶対只者じゃないと思いました~。」
「そんなのありませんよ。」
「ジャガイモの皮むきも早かったですし~。」
「いや、ジャガイモの皮むきが早い貴族の子女はいないと思うぞ。」
「……。」
ジェダイドの突っ込みに私は静かに頷く。
「そんな事はありませんよ~。」
「いや、あるからな。」
「だって、そちらにいるじゃないですか~。」
アンさんは私を指さす。
いえ、だから、私はお嬢様じゃありません。
……いえ、生まれはもしかしたらですけど…、育ちは普通に市民ですし。
「まあ、分からないくはないが。」
何故か肯定しそうなジェダイドに私は思わず目を見開く。
「ちょっと。」
「残念ながら違うらしい。」
「らしい、って何ですか。」
「そうなんですか~。」
「ああ。」
神妙な顔をする二人に私はどう対応すればいいのか分からなくなってしまう。
「こんなに綺麗なのに~。」
「ああ。」
「こんなにお嬢様~、みたいなのに~。」
「ああ。」
「嘘でしょう~。」
「残念ながら本人曰く一般人らしい。」
「……残念だ~。」
「ああ。」
意気投合している二人に私はもうどうすればいいのか分からず、ただただ、見ているだけになっていた。
「…こいつを連れていく。」
「分かりました~。」
「行くぞ。」
「えっ?」
てっきり一人で部屋に戻ると思っていた私はジェダイドに手を引かれる。
「えっ、あの、私一人で戻れるわよ。」
「ああ、そうだな。」
「なら、何で。」
「…今のお前を一人にしたら絶対に何かしらに首を突っ込んで俺らが部屋に言ってもお前はいないという事態になりかねないだろう。」
「……。」
そんな事はない、と思いたのだが、残念ながら彼の横顔を見ていると、その否定の言葉が出る事がなかった。
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