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第一章

メイドになります

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 日が昇る前に私はベッドから降りる。

 昨日はジェダイドを送り、そして、ここに残る事が決まった。

 私はベッドから離れると用意されていた服を見て怪訝な顔をしながら首を傾げる。
 ジェダイドの母の様子を見ればてっきり華奢か可愛らしい感じのドレスかは分からないが貴族の少女が着るようなドレスを用意されてると思ったがーー。

「こちらの方がありがたいわね。」

 目の前には昨日自分を案内してくれたメイドと同じ服がそこにあった。
 私はそれを着て髪を左右みつあみを作り上げる。
 廊下に出ればシンと静まり返っている、取り敢えず仕事のありそうな厨房に向かって歩き出す。
 幸いにも私には「前」の記憶があるので、どこに何の部屋があるのか理解している。

「そこの人~。」

 籠いっぱいにジャガイモを持っている少女に私がギョッとなる。

「あの~、手伝ってくださいませんか?」
「ええ、これは厨房まで運ぶのですか?」
「はい~。」

 ほんわかとしている彼女に私は苦笑しながら彼女が持つ籠の端を持つ。

「私はこちらを持ちますから、貴女はそちらを持ってください。」
「ありがとうございます~。」
「それにても、凄い量ですね。」
「そうでもないですよ~、騎士様方のご飯はいつもこんなものですよ~。」
「そうなんですか。」

 知らなかった裏事情に私はまじまじとジャガイモの山を見る。

「貴女は~初めて見ますね~。」
「ええ、昨日から。」
「ほえ~、あの奥様のお客様、見かけられました~?」
「お客様?」
「はい~、とても綺麗なお姫様みたいな人だって言ってました~。」
「いえ、私は見ていませんね。」

 いつの間に私以外のお客様がいらしたのかと私は首を捻るが、それよりも、私は彼女の持つ籠の方が気になった。

「あの、傾いていますよ。」
「あ~、すみませ~ん。」
「……。」

 私は本当に大丈夫なのかと心配しながらも、何とか数回注意するだけで、落とす事無く厨房にたどり着いた。

「おお、やっと来たか。」
「アン、次はそいつの皮むきだ。」
「そっちは、新人か?まあ、いいや、お前もそのジャガイモの皮むきを頼む。」
「は~い。」
「分かりました。」

 アンと呼ばれた一緒にジャガイモを持ってきた彼女と私は近くにあった椅子に腰かけながら黙々とジャガイモを剥き始めた。
 そして、十個目のジャガイモを剥き始めた時、周りが少し騒がしくなったが、私には関係ない事だと思って、そのまま作業を続行した。
 まさか、あんな大げさな事になっているとは思ってもみなかった。
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