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第一章
終わる旅路
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私たちが出会ってから一月以上の日が過ぎた。
着実に終わりが見えて来た。
今私たちがいるのは彼の家のある王都ルビアンに向か道を歩いていた。
この道は商人とかがよく通る道なので、地がならされているので今までの中で歩きやすいだろう。
ジェダイドも終わりを理解しているのか少し前から私の顔を伺うように見ている。
だけど、私は何も言わない。
「……。」
刹那、私は足を止めた。
「マラカイト。」
私が無意味に足を止める事がないと分かっているのか、ジェダイドは警戒しながら腕に抱くセラフィナイトを守るようにしっかりと抱きしめている。
「……。」
空気が動く。
誰かが合図をしたのだろう。
瞬く間に、姿を現した騎士にジェダイドは体を強張らせる。
「マラカイト。」
「……。」
「ジェダイドっ!」
感極まったような女性の声にジェダイドは弾かれたようにそちらに顔を向ければ、貴族の女性がそこにはいた。
「は、母上?」
「本当に、本当に良かった。」
口元を隠すが、その眼は確かに泣いていた。
ジェダイドは混乱したようだったが、すぐに、この事態が私の所為だと悟ったのかジトリと睨み、そして、無言で説明を求める。
「……。」
私はサッと膝を折り、その場で礼を取る。
「……。」
騎士たちは私を警戒していつでも抜刀できるように剣に手を掛けている。
「……。」
女性は私が動いた事で、現状を思い出し、スッと手を上げ、騎士に攻撃するなと合図を送る。
騎士たちは戸惑いながらも私に向かっていた殺気を押さえた。
「顔を上げて頂戴。」
私はゆっくりと女性を見つめる。
記憶にあるお姿よりずっと若く、風に吹かれれば折れてしまう花のようなお姿なのに、その実芯が強く、夫を尻に敷くという一面を持っていた。
「――っ!」
ジェダイドの母上は息を呑み、そして、ゆっくりと私に近づく。
「………やはり…本当だったのですね。」
「……。」
私の頬に触れ、今にも泣き出しそうな顔をする美しいその人に私はどうしたものかと悩む。
「ねえ、ペリドット。」
「……私の名前はマラカイトと申します、奥様。」
「……。」
その名を聞き彼女は私が誰なのか気づいたのだろう、だけど、幸いにも彼女は私にフードを取る事を要求しなかった。
でも、騎士団の中には私の顔を見て息を呑む人もいた。
「母上?」
ジェダイドの呟きに私はハッとなり、彼女から距離を置く。
「……。」
「……。」
私たちは互いに視線を交わし、そして、彼女はそっと私の肩を掴み、ジェダイドに対しては手招きをする。
「……。」
ジェダイドは不思議がりながら自分の母親に近づく。
「母上?」
数歩で母の元にたどり着くような場所でジェダイドは立ち止まった。
「ジェダイド?」
「母上、何を企んでいるんですか?」
「まあ、企んでいるなんて人聞きの悪い。」
私はその言葉を聞いて天を仰ぎそうになった。
彼女は気づいていないがその眼はまるで、獲物を狙う獣のように煌めいている。
多分、今までのジェダイドだったら気づかなかっただろうが、今のこの旅を通して色々と見て来たジェダイドは気づいてしまったのだろう。
だから、警戒するように距離を置いている。
「…もう、ちょっと見ない間に警戒心が強くなってしまって。」
残念そうな顔をしながらも、息子の成長に彼女は嬉しさを隠さないでいた。
「大丈夫よ、貴方に悪い事ではないわ。」
「……。」
それでも、警戒心を抱いているジェダイドに彼女は笑い、そして、指を鳴らす。
すると、騎士たちがジェダイドを拘束する。
「ジェダイドっ!」
反射的に私も動こうとするが、私の肩に爪が刺さる。
「ねえ、逃げ出さないでね、マラカイトちゃん。」
「……。」
ああ、逃げられないのだと私は察してしまった。
こうして、私は予定外にジェダイドのお宅に上がる事になってしまったのだ。
着実に終わりが見えて来た。
今私たちがいるのは彼の家のある王都ルビアンに向か道を歩いていた。
この道は商人とかがよく通る道なので、地がならされているので今までの中で歩きやすいだろう。
ジェダイドも終わりを理解しているのか少し前から私の顔を伺うように見ている。
だけど、私は何も言わない。
「……。」
刹那、私は足を止めた。
「マラカイト。」
私が無意味に足を止める事がないと分かっているのか、ジェダイドは警戒しながら腕に抱くセラフィナイトを守るようにしっかりと抱きしめている。
「……。」
空気が動く。
誰かが合図をしたのだろう。
瞬く間に、姿を現した騎士にジェダイドは体を強張らせる。
「マラカイト。」
「……。」
「ジェダイドっ!」
感極まったような女性の声にジェダイドは弾かれたようにそちらに顔を向ければ、貴族の女性がそこにはいた。
「は、母上?」
「本当に、本当に良かった。」
口元を隠すが、その眼は確かに泣いていた。
ジェダイドは混乱したようだったが、すぐに、この事態が私の所為だと悟ったのかジトリと睨み、そして、無言で説明を求める。
「……。」
私はサッと膝を折り、その場で礼を取る。
「……。」
騎士たちは私を警戒していつでも抜刀できるように剣に手を掛けている。
「……。」
女性は私が動いた事で、現状を思い出し、スッと手を上げ、騎士に攻撃するなと合図を送る。
騎士たちは戸惑いながらも私に向かっていた殺気を押さえた。
「顔を上げて頂戴。」
私はゆっくりと女性を見つめる。
記憶にあるお姿よりずっと若く、風に吹かれれば折れてしまう花のようなお姿なのに、その実芯が強く、夫を尻に敷くという一面を持っていた。
「――っ!」
ジェダイドの母上は息を呑み、そして、ゆっくりと私に近づく。
「………やはり…本当だったのですね。」
「……。」
私の頬に触れ、今にも泣き出しそうな顔をする美しいその人に私はどうしたものかと悩む。
「ねえ、ペリドット。」
「……私の名前はマラカイトと申します、奥様。」
「……。」
その名を聞き彼女は私が誰なのか気づいたのだろう、だけど、幸いにも彼女は私にフードを取る事を要求しなかった。
でも、騎士団の中には私の顔を見て息を呑む人もいた。
「母上?」
ジェダイドの呟きに私はハッとなり、彼女から距離を置く。
「……。」
「……。」
私たちは互いに視線を交わし、そして、彼女はそっと私の肩を掴み、ジェダイドに対しては手招きをする。
「……。」
ジェダイドは不思議がりながら自分の母親に近づく。
「母上?」
数歩で母の元にたどり着くような場所でジェダイドは立ち止まった。
「ジェダイド?」
「母上、何を企んでいるんですか?」
「まあ、企んでいるなんて人聞きの悪い。」
私はその言葉を聞いて天を仰ぎそうになった。
彼女は気づいていないがその眼はまるで、獲物を狙う獣のように煌めいている。
多分、今までのジェダイドだったら気づかなかっただろうが、今のこの旅を通して色々と見て来たジェダイドは気づいてしまったのだろう。
だから、警戒するように距離を置いている。
「…もう、ちょっと見ない間に警戒心が強くなってしまって。」
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「大丈夫よ、貴方に悪い事ではないわ。」
「……。」
それでも、警戒心を抱いているジェダイドに彼女は笑い、そして、指を鳴らす。
すると、騎士たちがジェダイドを拘束する。
「ジェダイドっ!」
反射的に私も動こうとするが、私の肩に爪が刺さる。
「ねえ、逃げ出さないでね、マラカイトちゃん。」
「……。」
ああ、逃げられないのだと私は察してしまった。
こうして、私は予定外にジェダイドのお宅に上がる事になってしまったのだ。
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