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第一章
暗黒料理
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「お邪魔します。」
「お邪魔します。」
「ふふふ、どうぞ。」
遠慮がちに私たちはコーラルの家に入る。
「いらっしゃい。」
「さて、美味しいご飯を用意しないと。」
「――っ!」
「ママ駄目っ!」
楽しそうにしているコーラルの母親の言葉に父親とコラールが真っ青な顔をする。
「あら、どうしたの?」
「えっと…。」
「あのだな、今日はお前も忙しかっただろう?」
「大丈夫よ、いつもの事ですし。」
「いやだな…。」
私は彼らのやり取りで、もしかしてと思い、こっそりとコーラルに話しかける。
「コーラルさん。」
「……どうしよう。」
動揺している彼女は全く私の声が届いていないみたい、私はどうしようかと周りを見渡すが、彼女に確認してからではないと話が出来ないだろうな、と理解する。
ジェダイドとマラカイトは何やら不穏な空気は分かっているようだが、私みたいに分かるはずもなく。
コーラルの母はどうしようかとウキウキして。
コーラルの父はどうすれば、コーラルの母を止めらるかを必死で考えているようだった。
「コーラルさん。」
私は彼女の肩を揺さぶって、声を掛ける。
「あっ、マラカイトさん……。」
「あの、非常に申し上げにくいのですが、もしかして、貴女のお母様は。」
「うん…料理がとてつもなく下手なの…。」
「……。」
やはり。
「前」の時に料理があまり得意でない方が腕を振るおうとして、ああいう風に止められている光景を何度か目にした事がありましたが、予想通りと言いますか…。
「あの…、もしよろしければ、私が何か作ってもいいかな?」
「えっ?」
驚くコーラルに私は苦笑する。
「一晩泊めていただきますのに、何もしないのは少し心苦しいと言いますか。」
「で、でも…。」
困っているコーラルはいったいどっちの意味だろう。
一つは母親の料理を食べさせるのがもし分けないのか。
それとも、客である私に料理をさせる事だろうか。
もしかしたら両方考えているのかもしれない、けれども、時間は着々と過ぎていくので、彼女の許しを得たところで、他の人を説得させないといけない。
なので、私は目元を緩め、そして、彼女の父親に近づく。
「あの。」
「ああ、すまないが今取り込み中でな。」
「よろしければ、私料理をしたいんです。」
「……。」
コーラルと同じように困ったような顔をする彼女の父親はやはり、彼女と血が繋がっているのだと思わせた。
顔は全く違うのに、困ったような顔をした時、何となく似ているような気がした。
「でもな…。」
「一晩泊めていただくのですから、何かさせてください。」
「……。」
「もし、心苦しいと思われるのでしたら、明日私たちはこの街をでますので、その時、ダルヤまで行く馬車を探していただきたいのです。」
「……釣り合わないぞ。」
「…ええ、確かに私たちの見返りの方が大きいとは思いますけど……。」
交渉は失敗したのか、と私はそう思ったのに、なぜか大きい優しい手が私の頭を撫でた。
「えっ?」
「お前さんの方じゃなくって、こっちの見返りが大きいんだよ。」
「そうでしょうか?」
「お前さんはこいつの料理の腕前を知らんからな。」
私は「前」に食したあの辛く、甘く、しょっぱく、さらに酸っぱいような味付けに、焦げ臭いくせに半生で、さらに口の中を様々な武器で攻撃しているような刺激的な味よりも彼女の料理がすごいのかと驚く。
「まあ、作ってもらえるのなら、正直に言えば助かる。」
「いいんですか?」
「ああ、どうも、こいつも、娘も、そんでもってオレも料理が苦手でな。」
「普段はどうされているんですか?」
「パーティの奴らが何かと気を使ってくれてな。」
「……。」
彼の言葉に私は納得した。
「あの、台所はどちらに?」
「あっちだ。」
指さされた方に私は向かい、そして、久しぶりに保存食や森に生殖していたモノ以外の食材を使わせていただく事になった。
そう言えば、あの時、コーラルの母からは何も声が上がらなかった気がしたが、気の所為だったろうか。
私は首を捻りながら取り敢えず、料理の支度を始めるのだった。
「お邪魔します。」
「ふふふ、どうぞ。」
遠慮がちに私たちはコーラルの家に入る。
「いらっしゃい。」
「さて、美味しいご飯を用意しないと。」
「――っ!」
「ママ駄目っ!」
楽しそうにしているコーラルの母親の言葉に父親とコラールが真っ青な顔をする。
「あら、どうしたの?」
「えっと…。」
「あのだな、今日はお前も忙しかっただろう?」
「大丈夫よ、いつもの事ですし。」
「いやだな…。」
私は彼らのやり取りで、もしかしてと思い、こっそりとコーラルに話しかける。
「コーラルさん。」
「……どうしよう。」
動揺している彼女は全く私の声が届いていないみたい、私はどうしようかと周りを見渡すが、彼女に確認してからではないと話が出来ないだろうな、と理解する。
ジェダイドとマラカイトは何やら不穏な空気は分かっているようだが、私みたいに分かるはずもなく。
コーラルの母はどうしようかとウキウキして。
コーラルの父はどうすれば、コーラルの母を止めらるかを必死で考えているようだった。
「コーラルさん。」
私は彼女の肩を揺さぶって、声を掛ける。
「あっ、マラカイトさん……。」
「あの、非常に申し上げにくいのですが、もしかして、貴女のお母様は。」
「うん…料理がとてつもなく下手なの…。」
「……。」
やはり。
「前」の時に料理があまり得意でない方が腕を振るおうとして、ああいう風に止められている光景を何度か目にした事がありましたが、予想通りと言いますか…。
「あの…、もしよろしければ、私が何か作ってもいいかな?」
「えっ?」
驚くコーラルに私は苦笑する。
「一晩泊めていただきますのに、何もしないのは少し心苦しいと言いますか。」
「で、でも…。」
困っているコーラルはいったいどっちの意味だろう。
一つは母親の料理を食べさせるのがもし分けないのか。
それとも、客である私に料理をさせる事だろうか。
もしかしたら両方考えているのかもしれない、けれども、時間は着々と過ぎていくので、彼女の許しを得たところで、他の人を説得させないといけない。
なので、私は目元を緩め、そして、彼女の父親に近づく。
「あの。」
「ああ、すまないが今取り込み中でな。」
「よろしければ、私料理をしたいんです。」
「……。」
コーラルと同じように困ったような顔をする彼女の父親はやはり、彼女と血が繋がっているのだと思わせた。
顔は全く違うのに、困ったような顔をした時、何となく似ているような気がした。
「でもな…。」
「一晩泊めていただくのですから、何かさせてください。」
「……。」
「もし、心苦しいと思われるのでしたら、明日私たちはこの街をでますので、その時、ダルヤまで行く馬車を探していただきたいのです。」
「……釣り合わないぞ。」
「…ええ、確かに私たちの見返りの方が大きいとは思いますけど……。」
交渉は失敗したのか、と私はそう思ったのに、なぜか大きい優しい手が私の頭を撫でた。
「えっ?」
「お前さんの方じゃなくって、こっちの見返りが大きいんだよ。」
「そうでしょうか?」
「お前さんはこいつの料理の腕前を知らんからな。」
私は「前」に食したあの辛く、甘く、しょっぱく、さらに酸っぱいような味付けに、焦げ臭いくせに半生で、さらに口の中を様々な武器で攻撃しているような刺激的な味よりも彼女の料理がすごいのかと驚く。
「まあ、作ってもらえるのなら、正直に言えば助かる。」
「いいんですか?」
「ああ、どうも、こいつも、娘も、そんでもってオレも料理が苦手でな。」
「普段はどうされているんですか?」
「パーティの奴らが何かと気を使ってくれてな。」
「……。」
彼の言葉に私は納得した。
「あの、台所はどちらに?」
「あっちだ。」
指さされた方に私は向かい、そして、久しぶりに保存食や森に生殖していたモノ以外の食材を使わせていただく事になった。
そう言えば、あの時、コーラルの母からは何も声が上がらなかった気がしたが、気の所為だったろうか。
私は首を捻りながら取り敢えず、料理の支度を始めるのだった。
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