55 / 136
第一章
次の目的地
しおりを挟む
あれから数分間移動する事がなかったけれども、ようやく私たちはコーラルの家に向かいました。
コーラルは彼女の両親に手を引かれて前を歩き、ジェダイドは私の横を歩いてくれています。
「…マラカイト。」
「何?」
「腕しんどくないか?」
「何が?」
ジェダイドの言いたい意味が分からず、私は首を少し傾げる。
「さっきからずっとセラフィナイトを抱いているじゃねぇか、腕疲れていないか?」
「大丈夫よ。」
「そうか。」
「うん。」
黙り込むジェダイドに私は前を見る。
仲のよさそうな家族。
私には縁遠い光景だった。
「前」も。
今も。
そして、未来も私には家族なんてないだろう。
それは別に寂しい事ではないのだが、それでも、こうして幸せそうな家族を見るたび、何故だか胸が痛むようなそんな気がした。
「マラカイト。」
どこか先ほどよりもはっきりと呼ばれ、そちらに顔を向ければ、何故か彼はホッとしたような顔をしていた。
「ジェダイド?」
「……。」
「ジェダイド?」
「あっ、何だ?」
「何だって、貴方が先に私の名前を呼んだんじゃ……。」
目を瞬かせ、ジェダイドはしばらくして、顔を赤く染める。
「あー…その……だな。」
「うん。」
私はジェダイドが次の言葉を待つ事にする。
「……………あっ、そうだ、どういうルートで次は向かう気なんだ?」
「えっと、そうね。」
明らかに今思いつきました、というような感じがしましたが、そんなにも話しにくい事だったのかと、不安になります。
でも、ジェダイドだったら、ちゃんと話してくれる、と信じたいと思います。
「取り敢えず、相馬車を探して、聖教本部のあるダルヤまで向かえたらと思っているわ。」
「そうか。」
「あそこなら、多分相馬車があると思うし、それに、ちょっと調べたい事もあるから。」
「調べたい事?」
「ええ。」
不思議そうな顔をしているジェダイドに私は少し苦笑する。
「駄目かしら?」
「いや、そもそも、俺の都合にお前が付き合ってくれているんだからな。」
「私は自分の意思で貴方について行っているのだけよ。」
「…お前は何でも噛んでも俺を優先しているだろうが。」
「そんなつもりはないけど。」
「ある。」
断言され、私は自分の行いを思い出してみるが、どれも、私がジェダイドを巻き込んでしまっているような気がしてならない。
「私の方が…ジェダイドに迷惑をかけているわ。」
「……。」
ジェダイドはジッと私を見て、溜息を零す。
「お前は本当に自己評価が低いな。」
「そうかしら?」
「ああ。」
妥当な評価してないと思う私は小さく肩を竦める。
それを偶然なのか、分からないけれどもジェダイドが見てしまい、彼は何を思っているのか顔を顰めていた。
それが少し居心地悪く私はセラフィナイトを見た。
「……。」
何故かセラフィナイトもジェダイドと同じように顔を顰めているようで、私は何があったのかと考えるが、答えは出なかった。
「お腹空いた訳でも、おしめじゃないのに、何であなたは顔を顰めているのかしら…。」
困惑する私にセラフィナイトもジェダイドも同時に顔を見合わせ、首をゆるゆると振ったのだった。
コーラルは彼女の両親に手を引かれて前を歩き、ジェダイドは私の横を歩いてくれています。
「…マラカイト。」
「何?」
「腕しんどくないか?」
「何が?」
ジェダイドの言いたい意味が分からず、私は首を少し傾げる。
「さっきからずっとセラフィナイトを抱いているじゃねぇか、腕疲れていないか?」
「大丈夫よ。」
「そうか。」
「うん。」
黙り込むジェダイドに私は前を見る。
仲のよさそうな家族。
私には縁遠い光景だった。
「前」も。
今も。
そして、未来も私には家族なんてないだろう。
それは別に寂しい事ではないのだが、それでも、こうして幸せそうな家族を見るたび、何故だか胸が痛むようなそんな気がした。
「マラカイト。」
どこか先ほどよりもはっきりと呼ばれ、そちらに顔を向ければ、何故か彼はホッとしたような顔をしていた。
「ジェダイド?」
「……。」
「ジェダイド?」
「あっ、何だ?」
「何だって、貴方が先に私の名前を呼んだんじゃ……。」
目を瞬かせ、ジェダイドはしばらくして、顔を赤く染める。
「あー…その……だな。」
「うん。」
私はジェダイドが次の言葉を待つ事にする。
「……………あっ、そうだ、どういうルートで次は向かう気なんだ?」
「えっと、そうね。」
明らかに今思いつきました、というような感じがしましたが、そんなにも話しにくい事だったのかと、不安になります。
でも、ジェダイドだったら、ちゃんと話してくれる、と信じたいと思います。
「取り敢えず、相馬車を探して、聖教本部のあるダルヤまで向かえたらと思っているわ。」
「そうか。」
「あそこなら、多分相馬車があると思うし、それに、ちょっと調べたい事もあるから。」
「調べたい事?」
「ええ。」
不思議そうな顔をしているジェダイドに私は少し苦笑する。
「駄目かしら?」
「いや、そもそも、俺の都合にお前が付き合ってくれているんだからな。」
「私は自分の意思で貴方について行っているのだけよ。」
「…お前は何でも噛んでも俺を優先しているだろうが。」
「そんなつもりはないけど。」
「ある。」
断言され、私は自分の行いを思い出してみるが、どれも、私がジェダイドを巻き込んでしまっているような気がしてならない。
「私の方が…ジェダイドに迷惑をかけているわ。」
「……。」
ジェダイドはジッと私を見て、溜息を零す。
「お前は本当に自己評価が低いな。」
「そうかしら?」
「ああ。」
妥当な評価してないと思う私は小さく肩を竦める。
それを偶然なのか、分からないけれどもジェダイドが見てしまい、彼は何を思っているのか顔を顰めていた。
それが少し居心地悪く私はセラフィナイトを見た。
「……。」
何故かセラフィナイトもジェダイドと同じように顔を顰めているようで、私は何があったのかと考えるが、答えは出なかった。
「お腹空いた訳でも、おしめじゃないのに、何であなたは顔を顰めているのかしら…。」
困惑する私にセラフィナイトもジェダイドも同時に顔を見合わせ、首をゆるゆると振ったのだった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
不定期更新になります。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる