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第一章
迷子のお届け
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森を抜けた私たちが目にしたのはエメーリエの門の前に立つ二人の男女の姿だった。
「あっ、クレイさん、サーリャさんっ!」
「コーラル。」
「コーラルちゃんっ!」
コーラルが声を上げると、二人の男女は弾かれたようにこちらを見て、そして、駆け寄ってくる。
先にたどり着いて、ガシリとコーラル抱きしめたのは女性の方だった。
「もう、心配したんだから。」
「ご、ごめんなさい…。」
安心したのかしゃっくりを上げながら泣き出すコーラルに私は少しほっとした。
「ん?君たちは?」
「あ、あの…わたしを助けてくれたんです。」
「君たちが?」
訝しんでいる男に私は当然の反応に特に気にする必要がないと思ったのだが、ジェダイドとコーラルはそうは思っていないのか眉を吊り上げている。
「クレイさん。」
「何かな?」
「本当にマラカイトさんのお蔭で助かったんですよ、謝ってください。」
「うーん、でもね、この森でこんな子どもが三人で抜けられるほどここは甘くないんだしな。」
「……。」
クレイと呼ばれた男性と先ほどまでコーラルを抱きしめていた女性は私たちを警戒する。
「その見た目からして君本当に人間?」
その言葉に切れたのはどちらだったのだろう。
「クレイさんっ!」
コーラルの叫びとジェダイドの投げナイフがクレイさんを襲う。
「――っ!この餓鬼。」
反射的にジェダイドの投げナイフを避けて、そして、反撃をするクレイさんに私は無意識に反応してしまった。
殺気を放ち、そして、ジェダイドとの間に入り、隠しナイフを抜き出す。
「彼に手を出すのでしたら容赦いたしません。」
「ぐ…。」
私の殺気にのまれたのか、彼は身じろぎ一つせず、否、出来ず、悔しそうに私を睨んでいる。
「はーい、やめやめ。」
パンパンと手を叩き、サーリャさんと呼ばれた女性は茶目っ気たっぷりに私にウインクする。
「ごめんね、うちのもんが手を出して。」
「……。」
「あーあ、あんたの所為でこーんな美少女に警戒されちゃったじゃない。」
「お前の変態がばれたんだろう。」
「んだとこら、てめぇのタマ潰すぞ。」
「おい、マジでその弓を構えるな。」
「冗談は嫌いだからね、安心しなさいよ、一撃で仕留めてあげるから。」
「冗談は顔だけにしろ。」
「だーから、冗談は嫌いなんだってば、安心しなさい、あんたは顔だけはいいんだし、なくても、嫁に貰ってくれる奴はいるよ。」
「ああ?嫁がくるなら分かるが、嫁に貰うって変じゃないか?」
「……。」
艶然と笑うサーリャさんに私は先ほどから必死で、ジェダイドとコーラル、そして、セラフィナイトの耳にこれらの音が入らないように細工している。
お願いですから、清いこの子たちに変なものを見せるのも、聞かせるのもやめてください、と心から思っていると、サーリャさんはこちらを見る。
「ふふふ、ごめんなさいね。」
気づいたらクレイさんの体には無数の矢が刺さっている。
「大丈夫でしょうか?」
「平気、平気よ、こんなもんでは死なないし。」
「いえ、そうじゃありません…いえ、そういうものでしょうか?」
「大丈夫よ、本当にタマは潰していないし、まあ、貴女に一つでも傷つけたらやっていたでしょうけどね。」
「……。」
色々と危うかったのだと私は思いました、一応、正当防衛を考えて一撃くらいは喰らってあげてもいいかな、とは思っておりましたのでーー。
「うーん、貴女って結構危険な匂いがするわね。」
「どんな匂いですか?」
私は呆れたような顔で彼女に問う。
「どんなって、そうね、普段は冬のような澄んだ冷たさを持っているくせに、大切なものが危険に及ぶと途端にドラゴンの吐く炎のような容赦ない熱さを持っている。
そして、不死の戦士のように自分が傷つく事を厭わないような、そんな匂いかしら?」
「全く想像できませんね。」
「そうかしら?」
首を捻る彼女に私は肩を竦める。
「まあ、他の人には分からないでしょうからね、と、そうだった、うちの所のリーダーのお姫様をここまで届けてくれてありがとうね。」
「……。」
私は感謝の言葉を言われ、呆然となる。
今まで私に感謝の言葉を言ってくれる奇特な人は片手で足るほどしかいないのに、彼女は簡単に私に感謝の言葉を言ってきた。
「うわっ、呆然とした顔も美少女じゃん、持ち帰りたい。」
サーリャさんがそう言った瞬間、私は誰かに抱きしめられる。
「マラカイトは俺のモノ何で。」
「ふふふー、可愛い。」
「……。」
どうやら私を抱きしめているのはジェダイドのようで、顔が見えないが空気が起こっているようなそんな張りつめた空気を発している。
「大丈夫よ、愛でるのは好きだけど、囲う事はしないわよ。」
「……。」
「ふふふ、いいわね、あなたたちみたいな可愛らしいカップル。」
楽しそうに笑う彼女に私は取り敢えず、ジェダイドから逃れようと身じろぎをする。
「おい、サーリャ。」
復活したクレイさんはサーリャさんに突っかかるが、すぐに地面に叩きつけられる。
「あーら、ごめんなさいね、汚い手で触れられたからつい手が出てしまったわ。」
「…お前、ワザとだろう。」
「ええ。」
「悪いと思ってないのか。」
「ああ、そうね。」
うんうん、と頷くクレイさんにサーリャさんはさらりと彼を無視する。
「ごめんなさいね、お見苦しいものを見せて、自己紹介がまだだったわね、あたしはサーリャよ、で、こっちのバカはクレイ。」
「ジェダイドだ。」
「そっちの美少女ちゃんは?」
「マラカイト。」
私が名乗る暇もなく、ジェダイドが何故か返事する。
「そっちの美少女候補は?」
セラフィナイトはいつの間にかコーラルに抱っこされており、サーリャさんはセラフィナイトを指さす。
セラフィナイト馬鹿になりかけのジェダイドはセラフィナイトを褒められた事により少し気を良くしたみたいで、顔の表情が穏やかなものになる。
「セラフィナイトだ。」
「みんないい名前ね。」
満足そうに笑う二人に私は若干頭が痛くなる。
どうして、私の周りに集まる人はこうも個性的なのだろうか。
「あっ、クレイさん、サーリャさんっ!」
「コーラル。」
「コーラルちゃんっ!」
コーラルが声を上げると、二人の男女は弾かれたようにこちらを見て、そして、駆け寄ってくる。
先にたどり着いて、ガシリとコーラル抱きしめたのは女性の方だった。
「もう、心配したんだから。」
「ご、ごめんなさい…。」
安心したのかしゃっくりを上げながら泣き出すコーラルに私は少しほっとした。
「ん?君たちは?」
「あ、あの…わたしを助けてくれたんです。」
「君たちが?」
訝しんでいる男に私は当然の反応に特に気にする必要がないと思ったのだが、ジェダイドとコーラルはそうは思っていないのか眉を吊り上げている。
「クレイさん。」
「何かな?」
「本当にマラカイトさんのお蔭で助かったんですよ、謝ってください。」
「うーん、でもね、この森でこんな子どもが三人で抜けられるほどここは甘くないんだしな。」
「……。」
クレイと呼ばれた男性と先ほどまでコーラルを抱きしめていた女性は私たちを警戒する。
「その見た目からして君本当に人間?」
その言葉に切れたのはどちらだったのだろう。
「クレイさんっ!」
コーラルの叫びとジェダイドの投げナイフがクレイさんを襲う。
「――っ!この餓鬼。」
反射的にジェダイドの投げナイフを避けて、そして、反撃をするクレイさんに私は無意識に反応してしまった。
殺気を放ち、そして、ジェダイドとの間に入り、隠しナイフを抜き出す。
「彼に手を出すのでしたら容赦いたしません。」
「ぐ…。」
私の殺気にのまれたのか、彼は身じろぎ一つせず、否、出来ず、悔しそうに私を睨んでいる。
「はーい、やめやめ。」
パンパンと手を叩き、サーリャさんと呼ばれた女性は茶目っ気たっぷりに私にウインクする。
「ごめんね、うちのもんが手を出して。」
「……。」
「あーあ、あんたの所為でこーんな美少女に警戒されちゃったじゃない。」
「お前の変態がばれたんだろう。」
「んだとこら、てめぇのタマ潰すぞ。」
「おい、マジでその弓を構えるな。」
「冗談は嫌いだからね、安心しなさいよ、一撃で仕留めてあげるから。」
「冗談は顔だけにしろ。」
「だーから、冗談は嫌いなんだってば、安心しなさい、あんたは顔だけはいいんだし、なくても、嫁に貰ってくれる奴はいるよ。」
「ああ?嫁がくるなら分かるが、嫁に貰うって変じゃないか?」
「……。」
艶然と笑うサーリャさんに私は先ほどから必死で、ジェダイドとコーラル、そして、セラフィナイトの耳にこれらの音が入らないように細工している。
お願いですから、清いこの子たちに変なものを見せるのも、聞かせるのもやめてください、と心から思っていると、サーリャさんはこちらを見る。
「ふふふ、ごめんなさいね。」
気づいたらクレイさんの体には無数の矢が刺さっている。
「大丈夫でしょうか?」
「平気、平気よ、こんなもんでは死なないし。」
「いえ、そうじゃありません…いえ、そういうものでしょうか?」
「大丈夫よ、本当にタマは潰していないし、まあ、貴女に一つでも傷つけたらやっていたでしょうけどね。」
「……。」
色々と危うかったのだと私は思いました、一応、正当防衛を考えて一撃くらいは喰らってあげてもいいかな、とは思っておりましたのでーー。
「うーん、貴女って結構危険な匂いがするわね。」
「どんな匂いですか?」
私は呆れたような顔で彼女に問う。
「どんなって、そうね、普段は冬のような澄んだ冷たさを持っているくせに、大切なものが危険に及ぶと途端にドラゴンの吐く炎のような容赦ない熱さを持っている。
そして、不死の戦士のように自分が傷つく事を厭わないような、そんな匂いかしら?」
「全く想像できませんね。」
「そうかしら?」
首を捻る彼女に私は肩を竦める。
「まあ、他の人には分からないでしょうからね、と、そうだった、うちの所のリーダーのお姫様をここまで届けてくれてありがとうね。」
「……。」
私は感謝の言葉を言われ、呆然となる。
今まで私に感謝の言葉を言ってくれる奇特な人は片手で足るほどしかいないのに、彼女は簡単に私に感謝の言葉を言ってきた。
「うわっ、呆然とした顔も美少女じゃん、持ち帰りたい。」
サーリャさんがそう言った瞬間、私は誰かに抱きしめられる。
「マラカイトは俺のモノ何で。」
「ふふふー、可愛い。」
「……。」
どうやら私を抱きしめているのはジェダイドのようで、顔が見えないが空気が起こっているようなそんな張りつめた空気を発している。
「大丈夫よ、愛でるのは好きだけど、囲う事はしないわよ。」
「……。」
「ふふふ、いいわね、あなたたちみたいな可愛らしいカップル。」
楽しそうに笑う彼女に私は取り敢えず、ジェダイドから逃れようと身じろぎをする。
「おい、サーリャ。」
復活したクレイさんはサーリャさんに突っかかるが、すぐに地面に叩きつけられる。
「あーら、ごめんなさいね、汚い手で触れられたからつい手が出てしまったわ。」
「…お前、ワザとだろう。」
「ええ。」
「悪いと思ってないのか。」
「ああ、そうね。」
うんうん、と頷くクレイさんにサーリャさんはさらりと彼を無視する。
「ごめんなさいね、お見苦しいものを見せて、自己紹介がまだだったわね、あたしはサーリャよ、で、こっちのバカはクレイ。」
「ジェダイドだ。」
「そっちの美少女ちゃんは?」
「マラカイト。」
私が名乗る暇もなく、ジェダイドが何故か返事する。
「そっちの美少女候補は?」
セラフィナイトはいつの間にかコーラルに抱っこされており、サーリャさんはセラフィナイトを指さす。
セラフィナイト馬鹿になりかけのジェダイドはセラフィナイトを褒められた事により少し気を良くしたみたいで、顔の表情が穏やかなものになる。
「セラフィナイトだ。」
「みんないい名前ね。」
満足そうに笑う二人に私は若干頭が痛くなる。
どうして、私の周りに集まる人はこうも個性的なのだろうか。
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