逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

合流

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「マラカイトっ!」

 しばらく歩いていると分かれた場所から一歩も動いていないジェダイドと、彼に抱きかかえられたセラフィナイトの姿があった。

「ジェダイド。」
「無事――。」

 ジェダイドは私に声を掛けようとするが、私の後ろにコーラルがいた事に気づくと警戒する。

「誰だ。」
「あっ、この子は。」
「あ、あのわたしはコーラルって言います。こちらのマラカイトさんに助けていただきまして、あの、その、わたしは決して怪しいものではなくて、あの、その、だから、そんなに睨まないでください。」

 今にも土下座をしそうな勢いのコーラルに私だけじゃなくジェダイドも呆気に取られる。

「さっき、異変を感じた場所にいた子だったの。」
「そうか。」

 何故か溜息を零すジェダイドに私は首を傾げる。

「お前は俺を含め、変なのを拾ってくるなと思って。」
「そんな事はないわよ。」
「あるよ、しかも厄介なモノばかりだな。」
「そんな事はないわ。」
「無自覚つーのは怖いな。」
「……。」

 私はこれ以上ジェダイドの言葉を否定した所で、彼はそれを受け入れる事はないのだと理解し、黙り込む。

「どうするんだ、こいつ。」

 ジェダイドも話題を変えた方がいいと思ったのか、そう言ってきた。
 私もそれに便乗して、話題を変える。

「目的地は一緒だから、そこまで、送るつもりよ。」
「そうか。」
「申し訳ありません……。」

 シュンとしているコーラルにジェダイドはこいつの扱いをどうすればいいんだ、と目で訴えてくるが、私はどうする事も出来ないので、気づかないふりをする。
 ジェダイドは私が助けに入らないので、ジッと私を見ていたが、割り込む気がないと分かったのか、諦めたように肩を竦める。

「おい。」
「は、はい。」
「俺はジェダイドだ。」
「はい、ジェダイド様っ!」
「……。」

 行き成り様付けされたジェダイドは不機嫌になる。

「あの、何で彼には様付けするの。」
「だって、明らかに貴族様って雰囲気なんですものっ!」
「……。」
「あっ、いえ、マラカイトさんが決して貴族ぽくないという意味ではないんですっ!」
「えっ?」
「安心してください、マラカイトさんはお綺麗で、そして、凛としていて、何と言いますか、そうです、何でも許してくれる聖女様のような……。」
「えっと……。」

 物凄い迫力でコーラルが迫ってきますが、私はけっして貴族じゃないですし、それに、綺麗だとか凛としているとか、聖女なんて恐れ多い言葉が並んできますが…。

「その、本当は様付けがいいとは思ったのですが、マラカイトさんはきっと断るんじゃないかなと思ったんです。」
「……そうですね、私は様付けされるような、そんなすごい人物ではありませんしね。」
「「そんな事」」
「ない。」
「ありません。」
「……。」

 何故か、コーラルだけじゃなく、ジェダイドまで否定してきました。
 もう何が何だかわかりませんが、取り敢えず――。

「あの、もう出発しません?」
「あっ。」
「そうだな、これ以上ここにとどまっていても仕方ないしな。」

 私たちはようやく目的地に向かって歩き出した。
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