逆行したら別人になった

弥生 桜香

文字の大きさ
上 下
42 / 136
第一章

ランク

しおりを挟む
 簡単な朝食を胃の中におさめ、私たちは森の中を進む。
 途中狩りをしたり、木の実を摘んだり、食料をある程度確保しながら私たちは進んでいく。
 途中ジェダイドの体力を見ながら休憩をはさむが、会話と言う会話はあまりなかった。
 そして、あの日から三回日が沈み、三回目の日が昇って、ようやく森の終わりが近づいてきた。

「ジェダイド、そろそろ休憩しようか。」
「さっき、休んだところだろう。」
「ええ、でも、あと少しすればエメーリエにたどり着くわ。」
「……。」

 私の言葉にジェダイドは軽く目を見張っていた。

「もうつくのか。」
「ええ、村出てからもう四日だもの。」
「……。」

 早いのか遅いのかマラカイトには測りかねるが、ジェダイドはどう思っているのだろう。

「このまま進めば夜には着くとは思うけど、無理して入る必要はないから。」
「そうだな。」
「取り敢えずはもう少し進んで、また野営をしてエメーリエに入って、ギルドに行って薬草をいくつか売って、それから、ギルドの紹介を得てから宿で一泊ね。」
「ギルド?」

 聞きなれないのかジェダイドは小首を傾げている。

「冒険者になるのに特に資格なんてものはないんだけど、どんな人がいるのかって国が把握する為にある程度大きな町とかには小さなギルドが設けられているの。」
「どういうところだ?」
「冒険者になる人に対して手続きをして、登録、仕事の斡旋、登録する事によって、冒険者は仕事を得たり、自分が狩った動物や採取した薬草を売ってお金を稼げるし、ギルドはどんな人がいるのか把握できるの、たとえば、力量を把握できたらその人がこなせられるランクが分かって、その人が無理をしていないかなど注意できるでしょ?」
「……つまり、死ぬような無茶な行動をするのを抑制するという感じか?」
「うん。」
「……。」

 ジェダイドは何か言いたげに私を見ているが、私はその視線の意味を理解する事が出来なかった。

「お前はどのくらいのランク何だ?」
「私?私はFランクよ。」
「F……?」
「ええ。」

 ジェダイドはFランクが低いのか高いのか分からず、眉間に皺を寄せているようで、私はそう難しい話じゃないんだけど、と思いながら説明する。

「Fランクはいわゆる駆け出し、入りたての冒険者の事を言うの。」
「えっ?」
「そこから、そうね、五つくらいギルドの仕事をこなせばDランクに上がって、Cランクからはギルドの試験とかあるらしいね。」
「……。」

 疑いを持った目で見られ、私は苦笑する。

「仕方ないわよ、私の年齢を考えてよ。」
「……。」

 私に言われてジェダイドはハッとしたような顔をする。
 基本十五くらいはどんなに強くともFランクどまりだ、まだ体の発達だって終わっていないような子どものランクを上げてしまえば間違いなく、命を落とすような結果になるだろう。
 だから、ギルドは十五までは基本Fランク、ただし、例外があり、騎士の候補生とかの場合は十三から騎士の学校に通える訳なので、それに見合ったランクに昇格が出来るのだが、それまでは一律Fランクなのだ。

「私はまだ十歳よ。」
「……。」

 ジェダイドは何とも言えない顔をしているが、私は、嘘は言っていない。

「……。」
「まあ、私のランクは置いといて、ギルドに行けば次の目的地であるダルヤに行く乗合馬車とかを紹介してもらえるから。」
「そうか、便利なんだな。」
「……。」

 ジェダイドのその言葉に私は黙り込む、正直に言えば、担当するギルドの受付の人によって私のような子どもの態度が変わってくる。
 出世意欲が高い人は私たちのような子どもやどんなに頑張ってもBランクどまりの冒険者には容赦がない。
 だから、ギルドに着いた時、受付の人の反応で、ジェダイドがどうなるかが分からないので、今から少しどう対処しようかと悩んでいる。

「ジェダイド、水はどう?」
「いや、大丈夫だ。」
「そう?」

 私は水筒を腰に下げ直し、セラフィナイトを見る。
 静かにしているセラフィナイトは口の中に木の実を入れてもごもごと動かしている。
 少し前からセラフィナイトは私からじゃなく木の実などで魔素を自分でとれるようになっていた。
 お蔭で街に入っても私がセラフィナイトに与えなくて済んだので、何故かジェダイドはホッとしていたのだが、何でだろうかと、未だに不思議に思っている。

「そろそろ、行くか?」
「そうね。」

 私はセラフィナイトを抱き直し、ジェダイドもまた下した荷物を抱え直す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】徒花の王妃

つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。 何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。 「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

妹に婚約者を奪われた私が、身分を隠していた親友(隣国の王子)と婚約する事になったお話

アルト
ファンタジー
旧題 我儘な妹に婚約者を奪われた私ですが、それを知った隣国の王子に私が婚約を申し込まれた事で妹が勝手に顔真っ赤にしてる件について † 「ねえ、お姉様。カルロス様を私に譲ってくださらない?」 我儘な妹は、いつだってそうだった。 私のものは何でも欲しがり、そして病弱ゆえに両親から甘やかされ、私は我慢を強いられる。 それがいつものお決まりだった。 そして今回妹が欲しがったのは、公爵家嫡男でもあるカルロスの婚約者としての立場。 しかも、既に内々で話を通してあったのか、両親は言わずもがな、婚約者であるカルロスも私の生家と縁を結べるなら元々どちらでも構わなかったからと言って庇護欲誘われる妹の婚約者にあっさり鞍替え。 そんな出来事を、一年前に卒業した王立学院で出来た親友に手紙で愚痴として打ち明けると、 「なら、お前は俺が貰ってもいいよな」 なんて奇想天外過ぎる返事が戻ってきたというお話。 実は私の親友が身分を隠して学院に通っていた隣国の王子だったとか知らないから……!!

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...