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第二章
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「…ねぇ、メイヤ大丈夫なの?」
「平気だ。」
私を背負って何時間も全力疾走するメイヤ。
私が休んだ次の日、つまり、今日になるのだけど。
私たちは前の親しんだ名前で呼ぶ合う事にした。
短い間だけだけど、本当の自分に戻れるようで少しホッとしている。
お嬢様のイザベラ。
メイドのミナ。
どちらも確かに自分だけど、彼の、メイヤの側に居るのは私(ルナ)でいたかった。
「疲れたのか?」
「私じゃなくて貴方が心配なの。」
私がそう言うとメイヤはくつくつと笑う。
「俺は平気だ、むしろ調子がいいくらいだ。」
「……。」
嘘じゃないのは分かる。
分かるんだけど、何で調子がいいんだろう。
ずっと走っているんだよ。
しかも、メイヤの属性が風だったら分かるけど、違うし。
本当に分からない。
「無理はしないでね。」
「ああ、お前こそしんどくなったら言うんだぞ。」
「分かっている。」
もし、それをしなかったら後が怖いもの。
絶対にその次の日私を甘え倒すだろう。
それは困る。
色々恥ずかしいもの。
そりゃ、もともと夫婦だったし、前は子どもだっていたけど。
それでも、メイヤの色気たっぷりの目で見られるのは何年経っても耐えられないのよね。
マヒルだって、メイヤその内その視線だけでルナの事孕ませられるんじゃねぇ?とか言っていたのよね。
その後、殴られていたわね。
それくらい破壊力があるのよね。
姿がかわっても、その瞳の熱量は変わらないから本当に困る…。
「ルナ。」
「な、何かしら?」
「……。」
声が裏返り、メイヤが訝しんでいるのが分かる。
「まあ、いいか。」
私の動揺からして重要度が低い事が分かったのか、彼は聞き流してくれる事を選んでくれた。
「この調子でいけば予定よりも早く到着しそうだ。」
「……。」
メイヤの言葉に私は半眼になる。
「予定よりも早く?」
「ああ。」
「予定ではあと五日くらいかかるわよね?」
「そうだったな。」
「何日くらいで着きそうなの?」
「後、三日だな。」
「……。」
二日も短くなっている事に私は呆れるべきなのか、怒るべきなのか分からなくなる。
「メイヤ、私は無理をしないでって言ったよね?」
「無理はしてない、ただ、少し張り切っただけだ。」
「……。」
張り切った。
確かにと思わなくはない。
それでも、計画していたものよりも二日も早くなるか?
否だと思いたい。
でも、メイヤだからな、と思ってしまう自分も確かにいる。
彼は昔から予想以上に凄い事をする事がたまにある。
無茶と張り切る、その違いは何だろう。
「駄目だったか?」
「メイカたちはどうするの?」
「待てばいいだろう。」
「……。」
それもそうだが、不審に思われないだろうか。
「そもそも、疑われているだろう。」
「えっ?」
「俺たちが怪しまれているのははじめからだからな。」
「私、声に出していた?」
「いいや。」
「なら。」
「お前の考えそうな事は何となくわかる。」
「……。」
「お前も何となく分かるだろう?」
「まあ、それは確かに…。」
メイヤの言いたい事は何となく分かる。分かるけど…。
「まあ、話は戻して、俺達が怪しまれていないなんて本気で思っていたのか?」
「……。」
「敵視されていたしな。」
「えっ?」
「まあ、お前には直接は向けられていないかもしれないが、俺には遠慮なかったぞ。」
「……抗議してやりたい。」
「しなくていい。」
「でも。」
「初めから仲良くやるつもりはなかったしな。」
「……。」
何となくその言葉を聞いて寂しく思った。
「ダチになるのに年齢は関係ないかもしれねぇが、下手をすれば孫ほどの年齢の奴らばっかだからな。」
「……。」
精神年齢の話をされて思わず私はメイヤの最期の姿を思い出してその姿と今回のメンバーの中に入れ見て吹き出しそうになる。
絵面がまずい。
若い人たちの中に老人。
ない。
下手をすれば師範とお弟子さんという図にも見えなくもない。
「それなら私もおばあちゃんだね。」
「お前は……、全然老けなかったな。」
「えっ、酷いそんな事ないじゃない。」
「……。」
メイヤはどこか複雑そうな顔をしている。
確かに普通の人よりは老化は遅かったけれども、それでも、十分老けていた。
若く見られていたいから頑張っていたのに。
そりゃ、頑張っている姿を見られたくなくてこっそりしていたけれども、それでも、その言い方はないように思う。
「メイヤは分かってない。」
「……。」
もし、手が自由だったらメイヤは極まり悪そうな顔をしながら頭を搔いているだろう。
だけど、それが出来ないものからただ、彼は黙り込むばかりだ。
「悪い。」
「……。」
自分が悪いと思って謝れるのは彼のいい所だけど、それでも、理由が分からず謝るのは違うと思う。
「……。」
私はジトリと彼の頭を睨む。
「……。」
決まづい雰囲気なままメイヤは足を止める事無く、むしろ焦りが足に出てしまい速さが増していた。
そして、本来休憩を取ろうとしていた場所を通過してしまい、また、予定よりも進んでしまったのだった。
「平気だ。」
私を背負って何時間も全力疾走するメイヤ。
私が休んだ次の日、つまり、今日になるのだけど。
私たちは前の親しんだ名前で呼ぶ合う事にした。
短い間だけだけど、本当の自分に戻れるようで少しホッとしている。
お嬢様のイザベラ。
メイドのミナ。
どちらも確かに自分だけど、彼の、メイヤの側に居るのは私(ルナ)でいたかった。
「疲れたのか?」
「私じゃなくて貴方が心配なの。」
私がそう言うとメイヤはくつくつと笑う。
「俺は平気だ、むしろ調子がいいくらいだ。」
「……。」
嘘じゃないのは分かる。
分かるんだけど、何で調子がいいんだろう。
ずっと走っているんだよ。
しかも、メイヤの属性が風だったら分かるけど、違うし。
本当に分からない。
「無理はしないでね。」
「ああ、お前こそしんどくなったら言うんだぞ。」
「分かっている。」
もし、それをしなかったら後が怖いもの。
絶対にその次の日私を甘え倒すだろう。
それは困る。
色々恥ずかしいもの。
そりゃ、もともと夫婦だったし、前は子どもだっていたけど。
それでも、メイヤの色気たっぷりの目で見られるのは何年経っても耐えられないのよね。
マヒルだって、メイヤその内その視線だけでルナの事孕ませられるんじゃねぇ?とか言っていたのよね。
その後、殴られていたわね。
それくらい破壊力があるのよね。
姿がかわっても、その瞳の熱量は変わらないから本当に困る…。
「ルナ。」
「な、何かしら?」
「……。」
声が裏返り、メイヤが訝しんでいるのが分かる。
「まあ、いいか。」
私の動揺からして重要度が低い事が分かったのか、彼は聞き流してくれる事を選んでくれた。
「この調子でいけば予定よりも早く到着しそうだ。」
「……。」
メイヤの言葉に私は半眼になる。
「予定よりも早く?」
「ああ。」
「予定ではあと五日くらいかかるわよね?」
「そうだったな。」
「何日くらいで着きそうなの?」
「後、三日だな。」
「……。」
二日も短くなっている事に私は呆れるべきなのか、怒るべきなのか分からなくなる。
「メイヤ、私は無理をしないでって言ったよね?」
「無理はしてない、ただ、少し張り切っただけだ。」
「……。」
張り切った。
確かにと思わなくはない。
それでも、計画していたものよりも二日も早くなるか?
否だと思いたい。
でも、メイヤだからな、と思ってしまう自分も確かにいる。
彼は昔から予想以上に凄い事をする事がたまにある。
無茶と張り切る、その違いは何だろう。
「駄目だったか?」
「メイカたちはどうするの?」
「待てばいいだろう。」
「……。」
それもそうだが、不審に思われないだろうか。
「そもそも、疑われているだろう。」
「えっ?」
「俺たちが怪しまれているのははじめからだからな。」
「私、声に出していた?」
「いいや。」
「なら。」
「お前の考えそうな事は何となくわかる。」
「……。」
「お前も何となく分かるだろう?」
「まあ、それは確かに…。」
メイヤの言いたい事は何となく分かる。分かるけど…。
「まあ、話は戻して、俺達が怪しまれていないなんて本気で思っていたのか?」
「……。」
「敵視されていたしな。」
「えっ?」
「まあ、お前には直接は向けられていないかもしれないが、俺には遠慮なかったぞ。」
「……抗議してやりたい。」
「しなくていい。」
「でも。」
「初めから仲良くやるつもりはなかったしな。」
「……。」
何となくその言葉を聞いて寂しく思った。
「ダチになるのに年齢は関係ないかもしれねぇが、下手をすれば孫ほどの年齢の奴らばっかだからな。」
「……。」
精神年齢の話をされて思わず私はメイヤの最期の姿を思い出してその姿と今回のメンバーの中に入れ見て吹き出しそうになる。
絵面がまずい。
若い人たちの中に老人。
ない。
下手をすれば師範とお弟子さんという図にも見えなくもない。
「それなら私もおばあちゃんだね。」
「お前は……、全然老けなかったな。」
「えっ、酷いそんな事ないじゃない。」
「……。」
メイヤはどこか複雑そうな顔をしている。
確かに普通の人よりは老化は遅かったけれども、それでも、十分老けていた。
若く見られていたいから頑張っていたのに。
そりゃ、頑張っている姿を見られたくなくてこっそりしていたけれども、それでも、その言い方はないように思う。
「メイヤは分かってない。」
「……。」
もし、手が自由だったらメイヤは極まり悪そうな顔をしながら頭を搔いているだろう。
だけど、それが出来ないものからただ、彼は黙り込むばかりだ。
「悪い。」
「……。」
自分が悪いと思って謝れるのは彼のいい所だけど、それでも、理由が分からず謝るのは違うと思う。
「……。」
私はジトリと彼の頭を睨む。
「……。」
決まづい雰囲気なままメイヤは足を止める事無く、むしろ焦りが足に出てしまい速さが増していた。
そして、本来休憩を取ろうとしていた場所を通過してしまい、また、予定よりも進んでしまったのだった。
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