上 下
87 / 111
第二章

24

しおりを挟む
 あれからホリアムット男爵令嬢は人が変わったかのように静かになった。
 文句も言わず、ただ私たちの後をついてくる。
 失礼かもしれないけれども、それはそれで気味が悪かった。
 文句ばかりを言っていた人が突然喋らなくなる、それは異常な事で、ヒースたちも突然の事で顔を顰めている。

「あいつ、変な物でも食ったのか?」
「……多分違うと思うけど。」
「……何か企んでいるのか?」

 ヒースたちはひそひそと話しているけれども声がここまで聞こえているので、意味がない。

「もし。」
「――っ!」
「何ですか?」
「……。」

 私が話しかけると、ボラリスク様は肩を跳ね上げらせ、ツェリベ様はにこやかに受け入れ、ヒースは怪訝な顔をしている。

「こんばんはこの辺で野宿に致しませんか?
 急いだとしても、ここよりも良い場所があるとは限りませんので。」
「……そうだね。」

 ツェリベ様は周りを見渡し、頷く。

「確かに君の言うとおりだと思う。」
「それでしたら、メイカに話してここで休むように言ってまいります。」
「ええ、頼みます。」

 私は頭を下げ、メイカの元に行く。

「メイカ、少しいいかしら。」
「ああ。」

 アルファード足を止め、私を見る。

「今日はこの辺で休んだ方がいいと思うのだけど。」
「……そうだな。」

 彼はジッと奥の方を見つめ、周りの状況を見る。

「その方がよさそうだな。」
「ええ、いつもよりはスピードが速いから皆気づいていないけど疲れがたまっていると思うの。」
「俺とお前はまだいけるのだが、軟弱だな。」
「比べる対象が悪いわ。」

 私は呆れながら彼を見る。
 私たちは均衡者として幼い頃から体を鍛えていたが、彼らはそのような訓練は受けていないだろうし、それに、実践がここまできついとは分かっていないだろう。
 私たちの場合は今までの経験があるからどこで力を抜けばいいのか理解しているけれども、彼らは違うのだから。

「私はご飯の支度をしますので、焚火などの用意をお願いしますね。」
「ああ、楽しみにしている。」

 彼は目を細め、私の髪を梳くとそのままメイカの元に向かった。

「さて、準備、準備。」

 私は何もなかったかのようにご飯の準備に取り掛かるけど、その顔は少しあつかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

今までありがとうございました、離縁してください。

杉本凪咲
恋愛
扉の隙間から見たのは、乱れる男女。 どうやら男の方は私の夫で、女の方はこの家の使用人らしい……

私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。 すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。 そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。 確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。 って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?  ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。 そんなクラウディアが幸せになる話。 ※本編完結済※番外編更新中

転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。 私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。 攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって? 私は、執事攻略に勤しみますわ!! っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。 ※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

処理中です...