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第二章

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「そろそろ、休め。」

 宿に戻ってからずっと作業をしていた私だったけれども、アルファードにポンと頭を叩かれ、手を止める。
 そして、窓の外がもうだいぶと暗くなっている事に驚く。

「もう、こんな時間なのね。」
「ああ、他の奴らはもう食べたが、俺たちは軽いのを用意してもらった。」

 そう言うアルファードに私は備え付けの机を見れば、そこには二人分のご飯が乗っていた。

「アルファード、貴方は先に食べてもよかったのに。」
「お前と食べたかったからいいだろう。」
「……。」

 私を気遣う彼に私はこれ以上何も言えなかった。

「ほら、飯が冷めるから食おう。」
「ええ。」

 私は手元の液体を見て、しばらく放置しても大丈夫だと判断して作業を中断させる。

「美味しそうね。」
「ああ。」

 サンドイッチと温かなスープ、そして蒸し鶏だった。

「こうして二人で食事するのは本当に久しぶりね。」
「そうだな、もっとこういう時間を作りたいものだな。」
「ええ。」

 私たちは食事を勧め、そして、私はようやくメイカがいない事に気づく。

「そう言えば、メイカは?」
「ああ、あいつは外で素振りをしている。」
「……。」
「ミナが心配なんだろうな。」
「私がもっとしっかりしてれば。」
「……きっと、遅かれ早かれ同じ状態に陥っていただろう。」
「でも。」

 アルファードの言う事は確かだろう、もし、私があの時運よく撃退していても、あいつらの狙いは「イザベラ」だった。
 多分、私が「イザベラ」の姿をしていれば、確実に撃退は出来ただろうけど、たまに身代わりになっていたミナだと、連れていかれただろう。

「…無理をしなければいいのだけど。」
「気持ちを落ち着かせるためにやっている、大丈夫だ、無茶はしない、というか、させないさ。」
「……。」
「今はそっとしておくべきなんだ。」
「ええ。」

 私はスープをすすり、食器を置く。

「もういいのか?」
「ええ、そろそろ、作業に戻らないと粗悪品になってしまうから。」
「分かった、このサンドイッチだけは別にしておくから後で絶対に食べろよ。」
「ええ。」
「それじゃ、食器を片付けてくるから。」

 アルファードは慣れた手つきで空になった食器を集め、積み重ねていく。
 私は小さく微笑み、作業に戻った。
 懐かしい、昔も私が内職をしていたら夜食を作ってくれて、一緒に食べて、そして、片付けてくれる。
 気合を入れなおし、私は薬を作る。
 水の魔術を駆使して、純度の高いものを作る。
 そして、夜明け前に私は三十本の薬を作り上げた。

「……お前は、本当に。」

 眠気でぼんやりとした頭にアルファードのため息が聞こえた気がしたが、瞼が閉じかけている私はそのぬくもりにすり寄りながら、ゆっくりと眠りに落ちた。
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