転生夫婦～乙女ゲーム編～

第一章

４７ 《アルファード》

　俺が書き物をしていると廊下が騒がしくなってきた。

「何だ？」
「さあ？」

　執事服を着ているメイヤは無表情で首を振る。

　神経を集中すると。

　姫

　おやめください

　お戻りください

　夜も遅いので

「……………。」

　面倒ごとが向こうからやってきたようで、俺は額を押さえる。

「どうなさいます？」
「そうだな――。」

　俺が答える前に思ったよりも早くノックが鳴る。

「兄上、お話があります。」
「…………どうなさいます？」
「…はぁ。」

　俺は面倒くさそうにため息を吐く。

「すまないが、客間の方に通してくれ。」
「畏まりました。」

　メイヤは恭しく、だけど、俺の目にしたらどこか演じているように頭を下げる。

「さて、何の用で来たのだか。」

　俺は二つ下の妹である少女を思い出しまたため息を零すのだった。