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第一章

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「医師。」
「……。」

 私は扉を開けると、そこには医務の医師はおらず、私は取り敢えず、彼を椅子に座らせる。

「アルファード、大丈夫?」
「……駄目だ、なんか、目がかすむ。」
「……ちょっとごめんね。」

 目の前で手を振ってみるけど、アルファードの綺麗な瞳は動かない。

「……。」
「専門じゃないけど、診てみるね。」

 私はジッと彼の目を見る。
 見た目は何ともない。
 一度瞼を下ろし、目に魔力を宿し見てみる。

「黒い靄が見える。」
「……。」
「多分、これが原因だけど。」

 魔力を通した目で見てみれば、彼の両目には黒い靄が見えた。

「浄化できないか?」
「やってみるね。」

 私は両手に水を溜める。

「冷たいけど我慢して、上を向いて。」
「ああ。」

 アルファードは私の言う通り、目を閉じて上を向いてくれる。

「……。」

 水を彼の目の所に零す。
 パチパチと彼の目の所で火花が散る。
 ギョッとした私は思わず手を止める。

「アルファードっ!大丈夫。」
「ああ、多分、反発しあっているんだな、少し顔が痛いが我慢できない程じゃない。」
「でも…。」
「頼む、やってくれ。」

 私は戸惑う、だけど、アルファードが頑固だという事を知っているから、私は彼の言う通り、また、水をかける。

 パチパチとまた音がする。

 そして、小さな火傷が彼の顔じゅうにできる。

「……。」

 泣きたくなった。

 どうして、彼を助けたいのに、彼にけがを負わしているのだと。
 そして、彼の靄が消えた時には彼の顔じゅうに軽度の火傷が出来ていた。

「泣くなよ。」

 はっきりと見えるようになった彼は苦笑しながら私の顔に触れる。

「だって…。」
「大丈夫だ、お前だからこうですんだ。」
「……。」

 彼の言うとおりだった、もし、私以外の人がこれを行えばきっと彼の頭が吹っ飛んでいた事だろう。
 それくらい悪質なものだった。

「イザベラ。」
「……《生命(レーベン)》。」

 私の腕に水瓶が現れる。
 そして、水瓶から水を救い上げると、彼の顔にぶっかける。

「イザベラ、せめて声をかけてくれ。」

 反射的に目を閉じた彼は水が滴るのを感じると私を睨む。
 そして、その顔には先ほどまでの火傷は全くなかった。

 《生命(レーベン)》これが私のもう一つの力で、怪我を癒す、力を持つ水が入っている水瓶。

 だけど、それは万能ではなく、死に瀕した人の傷は癒せない。

 死病には効かないけど、ある程度の風邪とかには効果がある。

 腕が取れたとしても、引っ付いたり、生えたりはしない、よくても、自己治癒範囲内の組織の再生は出来る。

 ただ、それだけだった。

 だけど、そのお陰で、今回のアルファードの怪我は治った。

「知りません。」

 そっぽを向く私にアルファードは何が面白いのか喉の奥で笑い声をあげる。
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