転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第一章

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 その日はいつかと同じ演習だった、だけど、違ったのは演習中だった校庭に魔族が降り立った。

「ふーん、こんなガキどもに負けたの?」

 くすくすと笑う魔族は指を鳴らす。
 そこには三つの黒い玉が魔族の手の上に現れる。

「イザベラ。」

 彼は私の横に立ち、魔族を睨んでいた。
 私たちはいつでも応戦できるように構えるが、他の生徒たちは動揺しているようで、ざわめいているだけだった。

「さーて、この子たちにとって最強の戦士はどんな奴らかしらね?」

 そういうと魔族は黒い玉を地面に落として叩き割った。
 割れた玉からもくもくと出てきた煙に私は反射的に口元を隠す。
 そして、誰かが風を操って煙を払うと、そこには…彼女たちが居た。

「あらあら、まさかこんな弱い子どもたちが出てくるなんて、ありえないけど、まあ、いいわ、『行きなさい』。」

 彼女たちは嫌々そうにこちらに向かってくる。

「アルファード。」
「ああ、行くぞ、イザベラ。」

 私たちは前に出る、三人の男女は驚いた顔をするが、すぐに、彼らは彼女を守るように立ちふさがる。

「マヒル。大丈夫か?」
「ああ、よく分からねぇけど、やるしかねぇな、メイヤ。」

 ああ、やっぱり。

 私は外れていてほしかった願いは彼らの口から洩れる名前で打ち消される。

「お願い、二人とも、怪我しないでっ!」
「わーてるよ。」
「安心しろ、ルナ、ここがどこだか分からないが、お前は俺たちが守るから。」

 彼女は悲しそうに笑い、そして、彼らは唱える。

「狂わせろ 《騎士(リッター)》」
「堕とせ 《雷(ドナー)》」

 青みがかった黒髪の彼――メイヤには剣が、赤みがかった金髪の彼――マヒルには槍が握られていた。

「イザベラ、お前は…。」
「ルナをやるわ、だから、アルファード、貴方は彼らをお願いできる?」
「ああ。」

 どこか苦し気な彼、それもそうだろう、彼らは……。

 前世の私たちなのだから……。
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