ぼくらのおわはじ

三澄 みそこ

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第一章 少年、開花す

018.再来するその時まで

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 人気のない路地を、この豪雨の中傘もささずに歩く人影があった。いや、させないのだ。黒髪に、鳶色の垂れ目のその少女__いや男は、自身より一回り以上体格の大きな巫女を抱えており、両手が塞がっていた。

「開花、しましたねぇ。神童。一人で、“魔導士”に」

 巫女は何も答えない。彼の腕の中でぐったりとする彼女の瞼は、固く閉じられている。彼女の体からのびる影は不自然に濃かった。

「これで、あいつの我が教団からの需要はますます高まるわけだ。でもあの態度を見るに、入団させるのはもう一筋縄ではいかないだろうなぁ。ほーんと余計なことしてくれちゃって………」

 叩きつける大粒の雨は、無慈悲に巫女の首の傷を抉る。男はそれを、どこか悲観するように目を細めて見下ろすと、「よいしょ」と巫女を抱え直した。

「早く治療してもらわないとね。俺は第壱枚様を連れ帰るって名目でついでに戻ろう。傷跡、残らないといいけど」

 ふいに彼は振り返り、丘の上の命鼓神社を見上げた。

 今、我らが神童があそこにいる。



「またな。ルーラ」



 そう呟いた彼の表情が、落雷に照らされ真っ白になった。


 路地の奥へと歩みを進めていく。やがて二人は、夜の闇に溶けて消えていった。
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