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番外編
※Another story
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*注意
本編では子供を授からない選択をした二人ですが、もし子供がいたら…の話で書いておりますのでご注意ください。そんな展開は嫌だ、と言う方はお読み頂かなくて問題ありません。
「……」
「…パパ、どう?」
「まあいいんじゃないか」
「ちょっと!フェリックス、こっち来て!」
俺は慌ててフェリックスをリビングの端に引っ張って来る。そして小声で喋りながらフェリックスの脇腹を小突いた。
「せっかくオリバーがパパのイラスト初めて描いたのに、いいんじゃないか、は無いだろ。初めてであの色使いと特徴の捉え方なんて凄いだろうが。もっと褒めなきゃ」
「ああ…そうだな。悪い」
はっとしたフェリックスは息子の方に再び歩いて行き、「俺に似ているし、服の色使いなんかも特徴を捉えている。ありがとう」と良い、オリバーは嬉しそうににっこりと笑って父親であるフェリックスの方を見上げていた。
俺もそれを見て漸く安堵のため息を漏らしたのだった。
俺が息子であるオリバーを出産してから四年が経っていた。
初めは俺もフェリックスも子供を作るつもりは全く無かったのだが、魔法省の大臣が「子供が出来て暫く休んだとしても出世に影響はさせない」と言ってくれたので、フェリックスと話し合いの結果妊娠し俺は三十代半ば過ぎにして初めての出産を経験した。若くない出産という事もあり少々難産で俺自身も生死をさ迷ったが無事に元気な男の子が一人生まれ、名をオリバーと名付けた。
オリバーは成長するにつれて薄い金髪に薄い青の瞳を持つ美少年になっていった。あまり活発な子供ではなく控えめで大人しい男の子なのだが、まだ四歳だというのに絵が上手で簡単な計算なんかも出来てしまう聡明な子供だ。体格も四歳にしては良く、他の同世代の子供達と並ぶと頭半分程背が高い。
しかし控えめながらいつもにこにこと笑い俺やフェリックスに甘えてくる我が子は、何にも替え難い可愛さだ。目に入れても痛くないという言葉の意味がとても良く分かる。
俺も最近仕事にも復帰したが、オリバーが六歳になって学校に上がるまでは時間を短くして働く事になった。フェリックスもオリバーが熱を出した時なんかはすぐに休みを取れる様に防衛省の方に掛け合ってくれて、俺の都合が悪い時はフェリックスがオリバーを世話したり看病してくれている。
もちろん変わらず家には通いの家政婦もいるし、オリバーが産まれてからはシッターも付けるようになった。子育て初心者の俺とフェリックスはそのシッターや家政婦達に助けられながら、オリバーの健やかな成長を見守っているのだ。
「ママ、今日はお昼にたまねぎもたべたよ。いやだけどたべた方がおおきくなれるって、ママが言ったから」
「食べられたの?偉いね!」
「おいしくないけどがんばったよ」
「凄いなー。ほらパパも偉いって言ってるよ」
「…そうだな。偉い」
「えへへ」
俺とフェリックスに褒めてもらい、嬉しそうににこにこと笑うオリバーは本当に可愛い。
今日は平日の夜で俺達は家族三人揃って夕食をとっていた。相変わらず家政婦に夕食は用意して貰っているし、昼間仕事で不在の俺達の代わりに家政婦とシッターにオリバーの面倒を見て貰い昼食も出して貰っている。オリバーは夜になるとその度に今日何があって何を食べたか報告してくれるのだ。
家族団欒で夕食を摂るなんて、十年前の尖っていた俺には考えもつかないだろう。しかし事実俺は今とてつもなく幸せだ。勿論出世も諦めた訳では無い。今は時短で働いているがそれでも人の二倍位は働いているつもりだし、今後オリバーがもう少し成長すれば仕事も戻してもらい一官僚から副大臣、ひいては大臣になる事を今は狙っている。
オメガ初の官僚ガブリエルから、子持ちオメガ初の大臣になるのだ。まだまだ俺の野望は尽きない。
団欒の後に風呂に入り、俺はオリバーを寝かし付けた。今はまだオリバー専用の部屋は家の中には用意しておらず俺の部屋で三人で寝ているのだが、オリバーが進学する頃には一人部屋が必要だろう。
今は俺の部屋にベッドが三つ運ばれ、俺とオリバー、フェリックスで眠っている。殺風景で物が何も無いただ広いだけの俺の部屋が常だった筈なのに、気が付けば家族の寝室になっていた。でもそれも悪くないと思えるから人間不思議である。
「ママ、おやすみ」
「お休みオリバー」
「しゅうまつはお出かけわすれないでね…」
「勿論、ママもパパも楽しみにしてるよ」
「うん」
まだ週の半ばなのに、オリバーは週末家族で出かけるのを楽しみに毎日こうやって夜寝る前に念を押してくる。だいたいの毎週末俺達家族三人で何処かに出掛けるのだが、今週は近所に新しく整備された国立の大きな公園に行くつもりだった。オリバーは活発な子供では無い事もあり同世代の友達が少ない。公園なら他の子供と遊んで友達も増えるかもしれないと俺はフェリックスに提案し、三人で公園に行きピクニックをする事になっている。それを聞いたオリバーは楽しみで仕方が無いのだ。叫んだり走ったりして喜びを表現はしない子だが、内心嬉しくて楽しみでそわそわしているのは隠せていなくてどうにも可愛い。
ベッドに寝っ転がる我が子の横に並び、ぽんぽんとお腹に手を置いて撫でていると暫くしてオリバーは目を閉じて寝てしまった。明かりを弱めて俺はそっと部屋から出る。
リビングに戻るとフェリックスがマグカップを二つテーブルの上に用意していた。
「寝たか」
「今日もすんなり。本当に手の掛からないいい子だよね。あ!紅茶ありがとう」
俺は紅茶の入ったマグを手にフェリックスの隣に座った。すかさず握られる左手は最早お互い癖になってしまって抜けようが無い。流石にオリバーが居る時は控えているが、二人きりだとどうしてもやたら手を握ってしまうのだ。
暖かい紅茶を一口飲み、ほっと一息つく。フェリックスも隣でコーヒーを無言で飲んでいたが、暫くして口を開いた。
「今日も助かった。悪い、俺はどうしても口下手だから咄嗟に褒め言葉が出ない」
「ううん、慣れたし平気。これからも俺が誘導するから任せてよ」
「ありがとう」
フェリックスが目を細めて俺に感謝を述べる。
と言うのも。子供が生まれて初めて知った事の一つなのだが、フェリックスは自身の子供とのコミュニケーションが苦手だった。
特にオリバーが頑張って描いた絵とか良く出来た計算ドリルとか、そういったものを見せても兎に角反応が薄い。ああ、とかうん、とかまあ、とか言ってきちんと褒めないので、俺はフェリックスに理由を聞いた。
どうやらフェリックスは幼い頃から両親に褒められた記憶が一度もなく、愛情を感じずに育ったとの事だった。有名な貴族一家の生まれなので出来る事が当たり前だったらしい。だから我が子が出来ても褒める自分を想像出来なかったとの事だ。
俺はフェリックスが可哀想になってしまった。根は優しい夫だが、普段外で冷酷冷徹と思われている事も知っている。それは幼少期そんな育てられ方をしたからなのでは…と思う。
そこから俺はフェリックスにきちんとオリバーを褒めるよう仕向けた。「親が褒めてくれない寂しさはフェリックスが一番良く知ってるだろ」って怒ったら、フェリックスも頑張ってオリバーを褒めたり頭を撫でたりする様になった。オリバー本人も、厳しいパパが褒めてくれるのが心底嬉しいみたいで良く懐いている。
勿論、俺は逆にオリバーに甘すぎるところがたまに傷なので、そこは逆にフェリックスがきちんと叱ってくれる。オリバーはまだ四歳で善悪が完全には理解出来ず、自己中心的な事をしてしまう時もある。そこをフェリックスが叱って正してくれるので、なんだかんだ言って俺達夫婦は良い感じのバランスの親なのではないかと思うのだった。
「今日も週末忘れないでねだって。可愛いよねうちの子は」
「ああ」
「あ、そう言えばシッターが、オリバーの背がまた伸びたみたいって。やっぱりオリバーはアルファかなぁ」
「まあ、何でも良いが。どのバース性でも本人が望む道に進むべきだ」
「だよね」
そう、バース性に囚われて将来が決まる訳じゃないのは俺で立証済みだ。オリバーはアルファらしい体格の良さや頭の良さが既に四歳で出ているが、その割には引っ込み思案で穏やかな子だ。バース検査はまだまだ大きくなってから行われるが、何であろうと親としてはオリバーの幸せを願う他無い。
頷いて紅茶をもう一口飲む。するとフェリックスが繋いでいた手を離し俺の髪を片方耳に掛けた。俺がフェリックスの方を向くと、夫は身を乗り出して俺の唇にキスをした。
オリバーが寝静まった夜だけが俺達夫婦二人の時間なのだが、最近忙しくて中々二人で触れ合う事も少なかった。久しぶりのキスに俺は一瞬で体温が上がってしまう。
俺はフェリックスの首に手を回した。するとフェリックスが俺の脇腹を抱え上げて持ち上げ、自身の膝の上に座らせてくる。足を開いて向かい合わせでフェリックスの上に跨るのは、ちょっと所ではなく恥ずかしい。
「この体勢…流石に恥ずかしいんだけど」
「大丈夫だ」
「いや…てかオリバーが起きてきたらどうすんの」
「安心しろ、俺は耳が良い。オリバーが万が一廊下を歩いて来たら即座に知らせる」
「……」
そういう問題かなあ、と思いつつ、しかし俺だってフェリックスと触れ合いたく無い訳では無いのだ。
歳を重ねてますます凄みのある美形の男になった旦那の目尻を指でなぞる。フェリックスも俺の頬を撫でて、何方からともなく顔が近付き再び口付けを交わした。
服の裾から侵入してくる熱い手を感じながら、俺は久しぶりの熱に身を捩るのだった。
本編では子供を授からない選択をした二人ですが、もし子供がいたら…の話で書いておりますのでご注意ください。そんな展開は嫌だ、と言う方はお読み頂かなくて問題ありません。
「……」
「…パパ、どう?」
「まあいいんじゃないか」
「ちょっと!フェリックス、こっち来て!」
俺は慌ててフェリックスをリビングの端に引っ張って来る。そして小声で喋りながらフェリックスの脇腹を小突いた。
「せっかくオリバーがパパのイラスト初めて描いたのに、いいんじゃないか、は無いだろ。初めてであの色使いと特徴の捉え方なんて凄いだろうが。もっと褒めなきゃ」
「ああ…そうだな。悪い」
はっとしたフェリックスは息子の方に再び歩いて行き、「俺に似ているし、服の色使いなんかも特徴を捉えている。ありがとう」と良い、オリバーは嬉しそうににっこりと笑って父親であるフェリックスの方を見上げていた。
俺もそれを見て漸く安堵のため息を漏らしたのだった。
俺が息子であるオリバーを出産してから四年が経っていた。
初めは俺もフェリックスも子供を作るつもりは全く無かったのだが、魔法省の大臣が「子供が出来て暫く休んだとしても出世に影響はさせない」と言ってくれたので、フェリックスと話し合いの結果妊娠し俺は三十代半ば過ぎにして初めての出産を経験した。若くない出産という事もあり少々難産で俺自身も生死をさ迷ったが無事に元気な男の子が一人生まれ、名をオリバーと名付けた。
オリバーは成長するにつれて薄い金髪に薄い青の瞳を持つ美少年になっていった。あまり活発な子供ではなく控えめで大人しい男の子なのだが、まだ四歳だというのに絵が上手で簡単な計算なんかも出来てしまう聡明な子供だ。体格も四歳にしては良く、他の同世代の子供達と並ぶと頭半分程背が高い。
しかし控えめながらいつもにこにこと笑い俺やフェリックスに甘えてくる我が子は、何にも替え難い可愛さだ。目に入れても痛くないという言葉の意味がとても良く分かる。
俺も最近仕事にも復帰したが、オリバーが六歳になって学校に上がるまでは時間を短くして働く事になった。フェリックスもオリバーが熱を出した時なんかはすぐに休みを取れる様に防衛省の方に掛け合ってくれて、俺の都合が悪い時はフェリックスがオリバーを世話したり看病してくれている。
もちろん変わらず家には通いの家政婦もいるし、オリバーが産まれてからはシッターも付けるようになった。子育て初心者の俺とフェリックスはそのシッターや家政婦達に助けられながら、オリバーの健やかな成長を見守っているのだ。
「ママ、今日はお昼にたまねぎもたべたよ。いやだけどたべた方がおおきくなれるって、ママが言ったから」
「食べられたの?偉いね!」
「おいしくないけどがんばったよ」
「凄いなー。ほらパパも偉いって言ってるよ」
「…そうだな。偉い」
「えへへ」
俺とフェリックスに褒めてもらい、嬉しそうににこにこと笑うオリバーは本当に可愛い。
今日は平日の夜で俺達は家族三人揃って夕食をとっていた。相変わらず家政婦に夕食は用意して貰っているし、昼間仕事で不在の俺達の代わりに家政婦とシッターにオリバーの面倒を見て貰い昼食も出して貰っている。オリバーは夜になるとその度に今日何があって何を食べたか報告してくれるのだ。
家族団欒で夕食を摂るなんて、十年前の尖っていた俺には考えもつかないだろう。しかし事実俺は今とてつもなく幸せだ。勿論出世も諦めた訳では無い。今は時短で働いているがそれでも人の二倍位は働いているつもりだし、今後オリバーがもう少し成長すれば仕事も戻してもらい一官僚から副大臣、ひいては大臣になる事を今は狙っている。
オメガ初の官僚ガブリエルから、子持ちオメガ初の大臣になるのだ。まだまだ俺の野望は尽きない。
団欒の後に風呂に入り、俺はオリバーを寝かし付けた。今はまだオリバー専用の部屋は家の中には用意しておらず俺の部屋で三人で寝ているのだが、オリバーが進学する頃には一人部屋が必要だろう。
今は俺の部屋にベッドが三つ運ばれ、俺とオリバー、フェリックスで眠っている。殺風景で物が何も無いただ広いだけの俺の部屋が常だった筈なのに、気が付けば家族の寝室になっていた。でもそれも悪くないと思えるから人間不思議である。
「ママ、おやすみ」
「お休みオリバー」
「しゅうまつはお出かけわすれないでね…」
「勿論、ママもパパも楽しみにしてるよ」
「うん」
まだ週の半ばなのに、オリバーは週末家族で出かけるのを楽しみに毎日こうやって夜寝る前に念を押してくる。だいたいの毎週末俺達家族三人で何処かに出掛けるのだが、今週は近所に新しく整備された国立の大きな公園に行くつもりだった。オリバーは活発な子供では無い事もあり同世代の友達が少ない。公園なら他の子供と遊んで友達も増えるかもしれないと俺はフェリックスに提案し、三人で公園に行きピクニックをする事になっている。それを聞いたオリバーは楽しみで仕方が無いのだ。叫んだり走ったりして喜びを表現はしない子だが、内心嬉しくて楽しみでそわそわしているのは隠せていなくてどうにも可愛い。
ベッドに寝っ転がる我が子の横に並び、ぽんぽんとお腹に手を置いて撫でていると暫くしてオリバーは目を閉じて寝てしまった。明かりを弱めて俺はそっと部屋から出る。
リビングに戻るとフェリックスがマグカップを二つテーブルの上に用意していた。
「寝たか」
「今日もすんなり。本当に手の掛からないいい子だよね。あ!紅茶ありがとう」
俺は紅茶の入ったマグを手にフェリックスの隣に座った。すかさず握られる左手は最早お互い癖になってしまって抜けようが無い。流石にオリバーが居る時は控えているが、二人きりだとどうしてもやたら手を握ってしまうのだ。
暖かい紅茶を一口飲み、ほっと一息つく。フェリックスも隣でコーヒーを無言で飲んでいたが、暫くして口を開いた。
「今日も助かった。悪い、俺はどうしても口下手だから咄嗟に褒め言葉が出ない」
「ううん、慣れたし平気。これからも俺が誘導するから任せてよ」
「ありがとう」
フェリックスが目を細めて俺に感謝を述べる。
と言うのも。子供が生まれて初めて知った事の一つなのだが、フェリックスは自身の子供とのコミュニケーションが苦手だった。
特にオリバーが頑張って描いた絵とか良く出来た計算ドリルとか、そういったものを見せても兎に角反応が薄い。ああ、とかうん、とかまあ、とか言ってきちんと褒めないので、俺はフェリックスに理由を聞いた。
どうやらフェリックスは幼い頃から両親に褒められた記憶が一度もなく、愛情を感じずに育ったとの事だった。有名な貴族一家の生まれなので出来る事が当たり前だったらしい。だから我が子が出来ても褒める自分を想像出来なかったとの事だ。
俺はフェリックスが可哀想になってしまった。根は優しい夫だが、普段外で冷酷冷徹と思われている事も知っている。それは幼少期そんな育てられ方をしたからなのでは…と思う。
そこから俺はフェリックスにきちんとオリバーを褒めるよう仕向けた。「親が褒めてくれない寂しさはフェリックスが一番良く知ってるだろ」って怒ったら、フェリックスも頑張ってオリバーを褒めたり頭を撫でたりする様になった。オリバー本人も、厳しいパパが褒めてくれるのが心底嬉しいみたいで良く懐いている。
勿論、俺は逆にオリバーに甘すぎるところがたまに傷なので、そこは逆にフェリックスがきちんと叱ってくれる。オリバーはまだ四歳で善悪が完全には理解出来ず、自己中心的な事をしてしまう時もある。そこをフェリックスが叱って正してくれるので、なんだかんだ言って俺達夫婦は良い感じのバランスの親なのではないかと思うのだった。
「今日も週末忘れないでねだって。可愛いよねうちの子は」
「ああ」
「あ、そう言えばシッターが、オリバーの背がまた伸びたみたいって。やっぱりオリバーはアルファかなぁ」
「まあ、何でも良いが。どのバース性でも本人が望む道に進むべきだ」
「だよね」
そう、バース性に囚われて将来が決まる訳じゃないのは俺で立証済みだ。オリバーはアルファらしい体格の良さや頭の良さが既に四歳で出ているが、その割には引っ込み思案で穏やかな子だ。バース検査はまだまだ大きくなってから行われるが、何であろうと親としてはオリバーの幸せを願う他無い。
頷いて紅茶をもう一口飲む。するとフェリックスが繋いでいた手を離し俺の髪を片方耳に掛けた。俺がフェリックスの方を向くと、夫は身を乗り出して俺の唇にキスをした。
オリバーが寝静まった夜だけが俺達夫婦二人の時間なのだが、最近忙しくて中々二人で触れ合う事も少なかった。久しぶりのキスに俺は一瞬で体温が上がってしまう。
俺はフェリックスの首に手を回した。するとフェリックスが俺の脇腹を抱え上げて持ち上げ、自身の膝の上に座らせてくる。足を開いて向かい合わせでフェリックスの上に跨るのは、ちょっと所ではなく恥ずかしい。
「この体勢…流石に恥ずかしいんだけど」
「大丈夫だ」
「いや…てかオリバーが起きてきたらどうすんの」
「安心しろ、俺は耳が良い。オリバーが万が一廊下を歩いて来たら即座に知らせる」
「……」
そういう問題かなあ、と思いつつ、しかし俺だってフェリックスと触れ合いたく無い訳では無いのだ。
歳を重ねてますます凄みのある美形の男になった旦那の目尻を指でなぞる。フェリックスも俺の頬を撫でて、何方からともなく顔が近付き再び口付けを交わした。
服の裾から侵入してくる熱い手を感じながら、俺は久しぶりの熱に身を捩るのだった。
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