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「……フィン」
「え、いや、しかし…今日は流石に陛下はお疲れでは」
「ああ、疲れている。大いに」
「でしたらもうお休みに」
「疲れているからお前に癒されたいんだろうが」
「は、…成程」
フィンも漸く戻ってきて一件落着、めでたしめでたし…なんて終わりにする訳にはいかない。
何せもう俺は二週間禁欲状態である。二週間…!
フィンと恋仲になってからというものの、正直毎日の様にシていたと思う。期間を空けたとしても精々三日くらいでどんなに忙しくても触り合い、抜き合いくらいはした。なのにこんな騒動になってしまい、俺はフィンの事もアイザックの事もあり気がそぞろで正直オナニーすらする気にもなれなかった。それが漸く解決してフィンも無事に俺の元に戻り、しかも熱烈な告白劇を繰り広げて俺たちの愛を再確認した日だというのにこの男は…。
夜になってこれ幸いとフィンを寝室に連れ込んだは良いものの、当のフィンは恭しく俺をベッドに誘導してブランケットを俺にそっと掛けたかと思えば、そのまま部屋を出て行こうとするではないか。
何でだよ…!
久しぶりに会えた恋人二人、障壁も解決、ここは夜になった寝室。やる事は一つしか無いだろうが…!
不満げに腕を掴んで理由を聞けば、俺が疲れているからだと言われてしまう。またそれか…フィンは優しいのだが、やっぱり俺を優先し過ぎる所がたまに傷だ。俺はあからさまにため息をついた。
「っ、申し訳ありません。陛下の意図が汲めず…」
「私の事はいい。お前はどうしたいんだ」
「俺…ですか」
「そうだ」
俺たちの初セックスの日みたいに、突然がっついて来たって俺は一向に構わない。それどころかめちゃくちゃウェルカムだ。やっぱりここはきちんと話し合わないといけないと俺は思った。
俺も正直なところ、前世の日本人の頃は特定の恋人を作る事は稀だった。よくゲイの集まる街の飲み屋で男を引っ掛けていたが、ああいう界隈に来ているゲイの男達は殆どが即物的な関係を求める人間ばかりだったし、時々本気で恋人を探している人に出会えてもお互い好みじゃなかったりする。ゲイの大人が真剣交際できる相手と巡り会えるのは中々難しいもんだ。だからこそ特定の恋人をあまり作ったことが無い俺は、どう恋人と接するのが正解なのかよく分かっていなかったように思う。
何が不安で、どう思っているのか。きちんと相手の言葉に耳を傾けた上で、自分の考えも相手に伝えないといけないという事を今回学んだ。
もう会いたい時にフィンに会えない一人の夜は懲り懲りだ。
「フィンは少々私の為を思いすぎて自己を押し殺しがちだと思う。私たちは恋人なのだから、もう少ししたい様にしてくれ」
「俺が、したい様にですか…」
俺が常々思っていた事を聞きフィンは戸惑う様に視線をさ迷わせたが、暫くして漸く俺の上に覆い被さってきた。
久しぶりに下から見上げるフィンは苦悩に満ちた表情をしている。苦しそうで、でもどこかぎらついてもいる。その男らしい表情は余りにも格好良くて、既に俺は勃ちそうだ。
「俺がしたい様にと陛下は仰るが、陛下は分かっておられない」
「何が」
「俺がどれだけ陛下を常に想い、慈しみ、そして…暴きたいと思っているかという事です」
「暴く…」
「きっと俺の頭の中を陛下がご覧になれば、余りの醜さに落胆されるでしょう」
「それは無い。私はフィンになら何をされても構わない」
「っ…不用意な事は仰らないで下さい」
「本心だ」
「……貴方には敵わない。永遠に…俺は貴方のものです」
当たり前だろう、と返そうと思ったが、それは叶わなかった。フィンは俺の頬をそっと撫でたかと思うと、そのまま俺にキスをしたからだ。
ゆっくりと啄むような優しいキスにうっとりしてしまう。角度を変えて深く口付けを交わしながら、俺は太ももに当たるフィンのアレの存在を感じていた。今日も既に熱く固くなっているのが可愛い。
そのうち唇を割ってフィンの厚い舌が俺の口内に侵入し、俺の舌が絡め取られて吸い上げられる。上顎を舌で撫でられ、体が震えた。
深いキスを交わしながら、フィンの手が俺の胸元へと下がって来た。薄い上質なシルクのローブの上から既に立ち上がった俺の乳首をそっと撫でられる。それだけで俺の体はビクッと跳ねた。
布越しに触られるのは気持ちがいい。焦らされている様な感覚が堪らない。背筋に走った快感に足をもぞ、と動かすと、フィンは体を離して俺の下の方にもう片方の手を伸ばしてくる。
「もう、濡れていますね」
「っ…」
こ、言葉攻めだ…。
フィンからそんな揶揄する風に言われると思ってなくて感動すると共に、羞恥からじわ、と顔が熱くなった。
フィンは俺のすっかり勃ち上がったソレをシルクのローブの上から揉み込む。乳首も緩く同時に抓られて、もどかしい気持ち良さに益々先走りが溢れていくのを感じ俺は身を捩った。やっとフィンが俺のローブをはだけさせる頃には、俺の息はすっかり上がってしまっていた。
「ん、あ…っ、フィン…」
「陛下…」
「あっ!」
がば、と俺の両膝を掴んだフィンが俺の脚を開脚させる。散々焦らす様に愛撫されたせいなのか、俺のそこはすっかり濡れて後ろの方まで滴っているのを自分でも感じていた。じっとそこを凝視するフィンの顔は真剣そのもので、欲に濡れたその瞳に俺の後ろが疼く。
フィンは俺のその濡れた後ろの孔に指をゆっくりと一本忍ばせた。
「ぅ、あ…っ」
「はぁ、リオン陛下…」
「あ、やめろ…一気に触るな…んっ」
「…」
後ろの孔に指を突っ込まれて、ぐいと上の内壁を抉るように押されるとどうしようもない気持ちになって腰が揺れる。ついでとばかりに胸元もはだけられ、すっかり赤く主張している俺の乳首も直に触られた。先端をやや強く摘まれると益々俺の体が勝手に跳ねてしまう。
フィンは息を乱す俺を見つめ、指で摘まれている方とは反対の乳首に顔を近付けて舐め上げられた。
「ああっ、…!ちょっと、待て…んっ」
「待てません」
「あ、フィン…っ!」
どこもかしこも攻められてしまい、俺は頭が真っ白になってしまう。確かにさっきフィンの好きにしろとは言ったけど、ここまでされるなんて聞いてない…。
というか、俺だってフィンに触りたいんだが。しかしこんな風に攻められて蕩けさせられると、精々フィンの肩や腕を掴む事くらいしか出来なくなってしまう。俺は涙が滲む視線で抗議した。
「フィン…っ、私にもお前を…触らせろ…」
「陛下が仰ったんですよ、俺の好きなようにしろと。俺は貴方が俺の手で快楽に染まるのを見たい」
「ん…あっ、こら…」
「まだです。全然足りない」
フィンは俺の後ろに入れる指の数を増やした。拡げるようにばらばらと動き、時には狙った様に俺の感じる所を的確に指の腹で押してくる。この半年ですっかりフィンに俺の弱いところが把握されてしまっていた。しかもやめろとか待てとか、散々言ったのに無視されて強行してくるのがまた…良い。最高だ。こういう強引なフィンは格好良過ぎる。
俺は様々な手で体を愛撫され、喘ぎながら身を仰け反らせる他無いのだった。
長い前戯に俺がグズグズのドロドロになった頃、漸くフィンが自身の猛ったそれをズボンから取り出した。今日もまた…なんと言うか、一段と凶器だ。普段から大き過ぎるそれだが、今日はより一層大きくなってないか?
しかし俺のこんな酷い痴態を見ただけでそんな風になってしまうフィンが愛おしい。今度触らせて貰うだけじゃなくて、少しそれを舐めてみたい。俺が舐めたらフィンは秒でイっちゃいそうだから、時間のあまり無い時に軽く試させてもらおう。
そう考えている暇も無く、フィンは俺の溶けきった孔にそれをあてがった。期待に腰が動く。
ゆっくりと侵入してきた固く熱いものに、俺は体をビクビクと跳ねさせる。
「あ、ああっ…!熱い…んっ」
「はあ…」
「ひ、うっ…ぁ」
「美しい、俺のリオン陛下…」
美しい?俺が?部下に突っ込まれて乳首もアソコも勃たせまくって、ドロドロになってる今の俺が?
フィンの趣味は悪いなと思った。むしろ今俺に突っ込んでいるフィンの方がよっぽど美しい。快楽を耐える様に歪んだ顔に汗ばんで濡れた髪が額に掛かっていて、余りにも格好良くて美しいと思う。
俺が見つめているとフィンと目が合った。まるで俺を食いつくそうとするかの様な、獣の視線だ。俺は何だか堪らなくなって勝手に後ろの孔がうねってしまい、中にいるフィンのものを締め付けてしまった。フィンは一瞬顔を歪めたかと思うと、途端に激しく抽挿を開始した。
「あ、ああっ!フィン…っん、ぅ…っ」
「はあ…」
「そこは、…あっ…!」
大き過ぎるフィンのそれが俺の奥を突く。そして抜く時には浅い所で前立腺のあたりを刺激され、俺は強い快楽に頭を振り乱して悶えた。
今日のフィンは激しすぎる…確かに普段から一度暴走してしまえばタガが外れた様に俺を貪る男だとは思っていたが、それにしても今日は激しい。
くらくらとする頭で必死に喘げば、フィンが身体を倒して俺の下に腕を差し込み、まるで腕で拘束するかのように俺の上半身を抱き込んだ。しかもそのおかげで体が密着してしまい、間に挟まれた俺の勃起したものが腹で擦られて、もう俺は何もかもの理性が吹き飛んだ。
「あ!ああっ…!フィン、もう…っ」
「リオン様…っ俺だけの陛下…」
「あ、あああっ…!!」
「、く…」
びくん、と激しく痙攣する体に困惑しながら、俺は盛大に腹を濡らして果てた。搾り取る様にうねった俺の後ろにも熱いものを感じ、フィンも果てた事を知る。
頭が飛びそうだ、やばい…。
はあはあと息を整えようとするのも束の間、目の前にあったフィンの表情が目に入ってきて俺は固まった。まだぎらぎらとこちらを見ている。あ、と思った時には唇と唇が重ねられ、いつの間にか硬度を取り戻したフィンのものに再び奥を穿たれた。
「あ!待て、まだ…んんっ」
「陛下…!」
「だめだ、馬鹿!そこは触るな、ん、あっ」
俺の静止を丸無視したフィンが、イったばかりの敏感な俺の先端を指で弄り始めた。後ろは再び奥をがんがんに突かれている上に、グリグリと腹の間の起立の先を指で虐め抜かれてしまい、俺は何かがせり上がってくる恐怖と快感に震えた。
待て、なんだこれ…なんか、出そう。
経験した事が無い感覚が俺を襲った。次の瞬間。
「あ、ああああぁっ…!!…う、…」
「っ」
目の前が真っ白になる激しい快感と共に、俺の先端から何かが溢れた。止まらない。情けないような声が勝手に出て、腹の前がどんどんと濡れていく。
おい、これ……もしかして、潮…では。
前世で散々男に抱かれていたとは言え初めての経験だった。まさか俺が潮吹き体験するなんて…。唖然として下にある自分の下腹部を見つめていると、体を離したフィンが俺のその濡れた腹に手を置いて撫でてきた。
「あ、フィン…触るな…」
「……」
「フィン?」
「はあ…」
「!ぅ、フィン…!動くな、あぁ…」
未だ入ったままだった後ろのそれが性急に動き始めた。もう散々イって、潮まで吹いた俺の敏感過ぎる体には酷な程の快感だ。
知らなかった…この男は野獣だ。好きにさせるとどこまでも際限なく俺を貪る。若干の末恐ろしさを感じながらも、正直俺だって好き勝手にめちゃくちゃにされてしまうセックスは大好物だ。
翻弄され続ける俺は考えるのを放棄して、その身をフィンに委ねるのだった。
翌朝、目が覚めると神妙な面持ちでフィンがベッドの横に跪いていた。デジャヴかな?と思いながらも上半身を起こせば、途端に腰に怠さと痛みが走った。
昨夜は…というか殆ど次の日の朝まで、俺たちは獣の様にセックスに明け暮れた。何回出したかも分からない程の激しい夜に、俺は最後意識を失うように眠りについたのを覚えている。
そして目覚めればこれだ。案の定フィンは今にも剣を持ち出して来て切腹でもしそうな程の思い詰めた表情をしていたので、俺は笑った。痛む腰を無視して近寄り、フィンの額にキスをして言った。
「おはよう。言っておくが、昨夜は最高の夜だった。毎回は体が辛いので御免だが、時々はあれくらい暴走したお前も悪くない」
ほっとした様な表情のフィンは可愛い。俺はついでに昨夜途中で考えた通り「今度はお前のその大きなものを舐めてみたい」と言うと、フィンはその精悍な顔を途端に真っ赤にし、首筋まで赤く染めた。うーん、俺の彼氏はやはり最高にイケメンだが、とてつもなく可愛いなと再認識した日でもあった。
かくして、原作の続編『来世も君のためなら』と大いに違う部分はあれど、無事にハッピーエンドを迎えた俺たちだった。
引き取ってきたアイザックはやっぱり王家の血を継ぐからなのか聡明な子供で、若干粗野な口調やお転婆過ぎる所を除けば勉強も武術も長けた子供になった。元からいた弟のジョシュアはまだアイザックよりも大分幼く頭角を現してはいないが、これから成長してどちらが王座につくのか楽しみでもある。
一方コナー神官長はあれから俺に口煩く側室や跡取りの事を言う事は無くなった。元から跡取りさえ増えればどうでも良かったんだろう。今では伸びしろのあるアイザックに帝王学を教える講師にまで着任した程だ。
根っからの悪い人では無いのは分かっていた。如何せん考え方が古いお爺様なのだ。
「陛下、何を見ておられるのですか」
「ああ、フィンか…ほら、見ろ。アイザックだ。もう真剣を扱えるらしい」
「成程。見込みがありますね」
王の執務室からは城の中庭が良く見渡せる。昼過ぎに少し休憩を取っていると、外からざわざわと声が聞こえてきたので俺は窓辺に向かった。そこではアイザックと剣の講師が稽古をつけていたが、既に真剣を使って稽古をつけていて感心してしまった。さすが王家の血を引く子供である。
窓辺に立ってその様子を眺めていると、見回りの最中のフィンがやって来た。俺たちは並んで窓辺に立ち中庭を覗く。
「フィンも幼い頃から剣術には秀でていたのを思い出すな」
「はい、ありがとうございます。俺があの歳の頃は既に剣技の大会で優勝していましたが」
「…桁違いだな」
苦笑しながら隣のフィンの方を見ると、フィンはそっと俺の腰に手を回して微笑んだ。
…なんだか最近やっとフィンの方も俺に慣れてきたのか、こうして恋人らしい仕草を見せてくれる様になった気がする。
うんうん、こういうのがしたかったんだよなあ。主従関係じゃなくて恋人っぽくていい感じだ。俺は一人満足気に頷いた。
しかし俺的不満が一つだけあるとすれば、やっぱり敬語はやめて欲しいなと思う。二人だけの時には敬語をやめる様に話したが、フィンは恐れ多くてとんでもない!と言って取り合ってくれなかった。せめてセックスの最中だけでもいいから、そのうちタメ口で攻められたいなんて馬鹿な事を日中から考えてしまった。
「後継者が決まる日もそう遠くは無さそうだな」
「そうですね」
「今のうちから家でも見繕っておくか。都市部から近すぎず離れすぎない静かな所が良いだろう」
「はい?」
「退位したらお前と暮らす家だ」
フィンは唖然として俺を凝視した後、一瞬泣きそうな表情になった。しかしその後は晴れやかに笑って見せ、「はい」とだけ一言言った。その満面の笑みは今まで見てきたフィンのどの表情よりも輝いて見えて、俺の胸はドキドキと高鳴ってしまう。
原作の物語的には退位した後の事は描かれていないし、そもそも騎士であるフィンと結ばれてしまったのでこの先もまだ何が起きるのか到底予測できない。
でもきっとこの実直で俺を愛して止まない男と一緒なら、どんな事があってもハッピーエンドを迎えられるんだろうな、と俺は思えた。
俺はにこやかに笑っているフィンに顔を寄せて、頬に小さくキスを贈った。
「え、いや、しかし…今日は流石に陛下はお疲れでは」
「ああ、疲れている。大いに」
「でしたらもうお休みに」
「疲れているからお前に癒されたいんだろうが」
「は、…成程」
フィンも漸く戻ってきて一件落着、めでたしめでたし…なんて終わりにする訳にはいかない。
何せもう俺は二週間禁欲状態である。二週間…!
フィンと恋仲になってからというものの、正直毎日の様にシていたと思う。期間を空けたとしても精々三日くらいでどんなに忙しくても触り合い、抜き合いくらいはした。なのにこんな騒動になってしまい、俺はフィンの事もアイザックの事もあり気がそぞろで正直オナニーすらする気にもなれなかった。それが漸く解決してフィンも無事に俺の元に戻り、しかも熱烈な告白劇を繰り広げて俺たちの愛を再確認した日だというのにこの男は…。
夜になってこれ幸いとフィンを寝室に連れ込んだは良いものの、当のフィンは恭しく俺をベッドに誘導してブランケットを俺にそっと掛けたかと思えば、そのまま部屋を出て行こうとするではないか。
何でだよ…!
久しぶりに会えた恋人二人、障壁も解決、ここは夜になった寝室。やる事は一つしか無いだろうが…!
不満げに腕を掴んで理由を聞けば、俺が疲れているからだと言われてしまう。またそれか…フィンは優しいのだが、やっぱり俺を優先し過ぎる所がたまに傷だ。俺はあからさまにため息をついた。
「っ、申し訳ありません。陛下の意図が汲めず…」
「私の事はいい。お前はどうしたいんだ」
「俺…ですか」
「そうだ」
俺たちの初セックスの日みたいに、突然がっついて来たって俺は一向に構わない。それどころかめちゃくちゃウェルカムだ。やっぱりここはきちんと話し合わないといけないと俺は思った。
俺も正直なところ、前世の日本人の頃は特定の恋人を作る事は稀だった。よくゲイの集まる街の飲み屋で男を引っ掛けていたが、ああいう界隈に来ているゲイの男達は殆どが即物的な関係を求める人間ばかりだったし、時々本気で恋人を探している人に出会えてもお互い好みじゃなかったりする。ゲイの大人が真剣交際できる相手と巡り会えるのは中々難しいもんだ。だからこそ特定の恋人をあまり作ったことが無い俺は、どう恋人と接するのが正解なのかよく分かっていなかったように思う。
何が不安で、どう思っているのか。きちんと相手の言葉に耳を傾けた上で、自分の考えも相手に伝えないといけないという事を今回学んだ。
もう会いたい時にフィンに会えない一人の夜は懲り懲りだ。
「フィンは少々私の為を思いすぎて自己を押し殺しがちだと思う。私たちは恋人なのだから、もう少ししたい様にしてくれ」
「俺が、したい様にですか…」
俺が常々思っていた事を聞きフィンは戸惑う様に視線をさ迷わせたが、暫くして漸く俺の上に覆い被さってきた。
久しぶりに下から見上げるフィンは苦悩に満ちた表情をしている。苦しそうで、でもどこかぎらついてもいる。その男らしい表情は余りにも格好良くて、既に俺は勃ちそうだ。
「俺がしたい様にと陛下は仰るが、陛下は分かっておられない」
「何が」
「俺がどれだけ陛下を常に想い、慈しみ、そして…暴きたいと思っているかという事です」
「暴く…」
「きっと俺の頭の中を陛下がご覧になれば、余りの醜さに落胆されるでしょう」
「それは無い。私はフィンになら何をされても構わない」
「っ…不用意な事は仰らないで下さい」
「本心だ」
「……貴方には敵わない。永遠に…俺は貴方のものです」
当たり前だろう、と返そうと思ったが、それは叶わなかった。フィンは俺の頬をそっと撫でたかと思うと、そのまま俺にキスをしたからだ。
ゆっくりと啄むような優しいキスにうっとりしてしまう。角度を変えて深く口付けを交わしながら、俺は太ももに当たるフィンのアレの存在を感じていた。今日も既に熱く固くなっているのが可愛い。
そのうち唇を割ってフィンの厚い舌が俺の口内に侵入し、俺の舌が絡め取られて吸い上げられる。上顎を舌で撫でられ、体が震えた。
深いキスを交わしながら、フィンの手が俺の胸元へと下がって来た。薄い上質なシルクのローブの上から既に立ち上がった俺の乳首をそっと撫でられる。それだけで俺の体はビクッと跳ねた。
布越しに触られるのは気持ちがいい。焦らされている様な感覚が堪らない。背筋に走った快感に足をもぞ、と動かすと、フィンは体を離して俺の下の方にもう片方の手を伸ばしてくる。
「もう、濡れていますね」
「っ…」
こ、言葉攻めだ…。
フィンからそんな揶揄する風に言われると思ってなくて感動すると共に、羞恥からじわ、と顔が熱くなった。
フィンは俺のすっかり勃ち上がったソレをシルクのローブの上から揉み込む。乳首も緩く同時に抓られて、もどかしい気持ち良さに益々先走りが溢れていくのを感じ俺は身を捩った。やっとフィンが俺のローブをはだけさせる頃には、俺の息はすっかり上がってしまっていた。
「ん、あ…っ、フィン…」
「陛下…」
「あっ!」
がば、と俺の両膝を掴んだフィンが俺の脚を開脚させる。散々焦らす様に愛撫されたせいなのか、俺のそこはすっかり濡れて後ろの方まで滴っているのを自分でも感じていた。じっとそこを凝視するフィンの顔は真剣そのもので、欲に濡れたその瞳に俺の後ろが疼く。
フィンは俺のその濡れた後ろの孔に指をゆっくりと一本忍ばせた。
「ぅ、あ…っ」
「はぁ、リオン陛下…」
「あ、やめろ…一気に触るな…んっ」
「…」
後ろの孔に指を突っ込まれて、ぐいと上の内壁を抉るように押されるとどうしようもない気持ちになって腰が揺れる。ついでとばかりに胸元もはだけられ、すっかり赤く主張している俺の乳首も直に触られた。先端をやや強く摘まれると益々俺の体が勝手に跳ねてしまう。
フィンは息を乱す俺を見つめ、指で摘まれている方とは反対の乳首に顔を近付けて舐め上げられた。
「ああっ、…!ちょっと、待て…んっ」
「待てません」
「あ、フィン…っ!」
どこもかしこも攻められてしまい、俺は頭が真っ白になってしまう。確かにさっきフィンの好きにしろとは言ったけど、ここまでされるなんて聞いてない…。
というか、俺だってフィンに触りたいんだが。しかしこんな風に攻められて蕩けさせられると、精々フィンの肩や腕を掴む事くらいしか出来なくなってしまう。俺は涙が滲む視線で抗議した。
「フィン…っ、私にもお前を…触らせろ…」
「陛下が仰ったんですよ、俺の好きなようにしろと。俺は貴方が俺の手で快楽に染まるのを見たい」
「ん…あっ、こら…」
「まだです。全然足りない」
フィンは俺の後ろに入れる指の数を増やした。拡げるようにばらばらと動き、時には狙った様に俺の感じる所を的確に指の腹で押してくる。この半年ですっかりフィンに俺の弱いところが把握されてしまっていた。しかもやめろとか待てとか、散々言ったのに無視されて強行してくるのがまた…良い。最高だ。こういう強引なフィンは格好良過ぎる。
俺は様々な手で体を愛撫され、喘ぎながら身を仰け反らせる他無いのだった。
長い前戯に俺がグズグズのドロドロになった頃、漸くフィンが自身の猛ったそれをズボンから取り出した。今日もまた…なんと言うか、一段と凶器だ。普段から大き過ぎるそれだが、今日はより一層大きくなってないか?
しかし俺のこんな酷い痴態を見ただけでそんな風になってしまうフィンが愛おしい。今度触らせて貰うだけじゃなくて、少しそれを舐めてみたい。俺が舐めたらフィンは秒でイっちゃいそうだから、時間のあまり無い時に軽く試させてもらおう。
そう考えている暇も無く、フィンは俺の溶けきった孔にそれをあてがった。期待に腰が動く。
ゆっくりと侵入してきた固く熱いものに、俺は体をビクビクと跳ねさせる。
「あ、ああっ…!熱い…んっ」
「はあ…」
「ひ、うっ…ぁ」
「美しい、俺のリオン陛下…」
美しい?俺が?部下に突っ込まれて乳首もアソコも勃たせまくって、ドロドロになってる今の俺が?
フィンの趣味は悪いなと思った。むしろ今俺に突っ込んでいるフィンの方がよっぽど美しい。快楽を耐える様に歪んだ顔に汗ばんで濡れた髪が額に掛かっていて、余りにも格好良くて美しいと思う。
俺が見つめているとフィンと目が合った。まるで俺を食いつくそうとするかの様な、獣の視線だ。俺は何だか堪らなくなって勝手に後ろの孔がうねってしまい、中にいるフィンのものを締め付けてしまった。フィンは一瞬顔を歪めたかと思うと、途端に激しく抽挿を開始した。
「あ、ああっ!フィン…っん、ぅ…っ」
「はあ…」
「そこは、…あっ…!」
大き過ぎるフィンのそれが俺の奥を突く。そして抜く時には浅い所で前立腺のあたりを刺激され、俺は強い快楽に頭を振り乱して悶えた。
今日のフィンは激しすぎる…確かに普段から一度暴走してしまえばタガが外れた様に俺を貪る男だとは思っていたが、それにしても今日は激しい。
くらくらとする頭で必死に喘げば、フィンが身体を倒して俺の下に腕を差し込み、まるで腕で拘束するかのように俺の上半身を抱き込んだ。しかもそのおかげで体が密着してしまい、間に挟まれた俺の勃起したものが腹で擦られて、もう俺は何もかもの理性が吹き飛んだ。
「あ!ああっ…!フィン、もう…っ」
「リオン様…っ俺だけの陛下…」
「あ、あああっ…!!」
「、く…」
びくん、と激しく痙攣する体に困惑しながら、俺は盛大に腹を濡らして果てた。搾り取る様にうねった俺の後ろにも熱いものを感じ、フィンも果てた事を知る。
頭が飛びそうだ、やばい…。
はあはあと息を整えようとするのも束の間、目の前にあったフィンの表情が目に入ってきて俺は固まった。まだぎらぎらとこちらを見ている。あ、と思った時には唇と唇が重ねられ、いつの間にか硬度を取り戻したフィンのものに再び奥を穿たれた。
「あ!待て、まだ…んんっ」
「陛下…!」
「だめだ、馬鹿!そこは触るな、ん、あっ」
俺の静止を丸無視したフィンが、イったばかりの敏感な俺の先端を指で弄り始めた。後ろは再び奥をがんがんに突かれている上に、グリグリと腹の間の起立の先を指で虐め抜かれてしまい、俺は何かがせり上がってくる恐怖と快感に震えた。
待て、なんだこれ…なんか、出そう。
経験した事が無い感覚が俺を襲った。次の瞬間。
「あ、ああああぁっ…!!…う、…」
「っ」
目の前が真っ白になる激しい快感と共に、俺の先端から何かが溢れた。止まらない。情けないような声が勝手に出て、腹の前がどんどんと濡れていく。
おい、これ……もしかして、潮…では。
前世で散々男に抱かれていたとは言え初めての経験だった。まさか俺が潮吹き体験するなんて…。唖然として下にある自分の下腹部を見つめていると、体を離したフィンが俺のその濡れた腹に手を置いて撫でてきた。
「あ、フィン…触るな…」
「……」
「フィン?」
「はあ…」
「!ぅ、フィン…!動くな、あぁ…」
未だ入ったままだった後ろのそれが性急に動き始めた。もう散々イって、潮まで吹いた俺の敏感過ぎる体には酷な程の快感だ。
知らなかった…この男は野獣だ。好きにさせるとどこまでも際限なく俺を貪る。若干の末恐ろしさを感じながらも、正直俺だって好き勝手にめちゃくちゃにされてしまうセックスは大好物だ。
翻弄され続ける俺は考えるのを放棄して、その身をフィンに委ねるのだった。
翌朝、目が覚めると神妙な面持ちでフィンがベッドの横に跪いていた。デジャヴかな?と思いながらも上半身を起こせば、途端に腰に怠さと痛みが走った。
昨夜は…というか殆ど次の日の朝まで、俺たちは獣の様にセックスに明け暮れた。何回出したかも分からない程の激しい夜に、俺は最後意識を失うように眠りについたのを覚えている。
そして目覚めればこれだ。案の定フィンは今にも剣を持ち出して来て切腹でもしそうな程の思い詰めた表情をしていたので、俺は笑った。痛む腰を無視して近寄り、フィンの額にキスをして言った。
「おはよう。言っておくが、昨夜は最高の夜だった。毎回は体が辛いので御免だが、時々はあれくらい暴走したお前も悪くない」
ほっとした様な表情のフィンは可愛い。俺はついでに昨夜途中で考えた通り「今度はお前のその大きなものを舐めてみたい」と言うと、フィンはその精悍な顔を途端に真っ赤にし、首筋まで赤く染めた。うーん、俺の彼氏はやはり最高にイケメンだが、とてつもなく可愛いなと再認識した日でもあった。
かくして、原作の続編『来世も君のためなら』と大いに違う部分はあれど、無事にハッピーエンドを迎えた俺たちだった。
引き取ってきたアイザックはやっぱり王家の血を継ぐからなのか聡明な子供で、若干粗野な口調やお転婆過ぎる所を除けば勉強も武術も長けた子供になった。元からいた弟のジョシュアはまだアイザックよりも大分幼く頭角を現してはいないが、これから成長してどちらが王座につくのか楽しみでもある。
一方コナー神官長はあれから俺に口煩く側室や跡取りの事を言う事は無くなった。元から跡取りさえ増えればどうでも良かったんだろう。今では伸びしろのあるアイザックに帝王学を教える講師にまで着任した程だ。
根っからの悪い人では無いのは分かっていた。如何せん考え方が古いお爺様なのだ。
「陛下、何を見ておられるのですか」
「ああ、フィンか…ほら、見ろ。アイザックだ。もう真剣を扱えるらしい」
「成程。見込みがありますね」
王の執務室からは城の中庭が良く見渡せる。昼過ぎに少し休憩を取っていると、外からざわざわと声が聞こえてきたので俺は窓辺に向かった。そこではアイザックと剣の講師が稽古をつけていたが、既に真剣を使って稽古をつけていて感心してしまった。さすが王家の血を引く子供である。
窓辺に立ってその様子を眺めていると、見回りの最中のフィンがやって来た。俺たちは並んで窓辺に立ち中庭を覗く。
「フィンも幼い頃から剣術には秀でていたのを思い出すな」
「はい、ありがとうございます。俺があの歳の頃は既に剣技の大会で優勝していましたが」
「…桁違いだな」
苦笑しながら隣のフィンの方を見ると、フィンはそっと俺の腰に手を回して微笑んだ。
…なんだか最近やっとフィンの方も俺に慣れてきたのか、こうして恋人らしい仕草を見せてくれる様になった気がする。
うんうん、こういうのがしたかったんだよなあ。主従関係じゃなくて恋人っぽくていい感じだ。俺は一人満足気に頷いた。
しかし俺的不満が一つだけあるとすれば、やっぱり敬語はやめて欲しいなと思う。二人だけの時には敬語をやめる様に話したが、フィンは恐れ多くてとんでもない!と言って取り合ってくれなかった。せめてセックスの最中だけでもいいから、そのうちタメ口で攻められたいなんて馬鹿な事を日中から考えてしまった。
「後継者が決まる日もそう遠くは無さそうだな」
「そうですね」
「今のうちから家でも見繕っておくか。都市部から近すぎず離れすぎない静かな所が良いだろう」
「はい?」
「退位したらお前と暮らす家だ」
フィンは唖然として俺を凝視した後、一瞬泣きそうな表情になった。しかしその後は晴れやかに笑って見せ、「はい」とだけ一言言った。その満面の笑みは今まで見てきたフィンのどの表情よりも輝いて見えて、俺の胸はドキドキと高鳴ってしまう。
原作の物語的には退位した後の事は描かれていないし、そもそも騎士であるフィンと結ばれてしまったのでこの先もまだ何が起きるのか到底予測できない。
でもきっとこの実直で俺を愛して止まない男と一緒なら、どんな事があってもハッピーエンドを迎えられるんだろうな、と俺は思えた。
俺はにこやかに笑っているフィンに顔を寄せて、頬に小さくキスを贈った。
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もう。もううっ💕
尊い⟡.*
ガタイよし男子カップルも好きなのよ!
そんで背景もそのふたりの距離が近くなっていく過程も程よくドキドキハラハラで良かった(*´﹃`*)❤
こちらの方の作品も読んでくださりありがとうございます!
美人受けもいいですが、男×男もいいですよね😭
コメントありがとうございました!