170 / 171
第五章 旅立ち
最後の決断
しおりを挟む洞窟内部。幾多の魔物を相手に疲労困憊のなか、日の光が差し込んでくるのが見えてきた。
「おい、ビスやっと出口が見えてきたぞ。」
「そうか。洞窟を抜けたら休憩しよう。どこか休憩できるところはないかアシオン」
「そうだな。近くに村があったはずだ。そこでなら大丈夫なはずだ」
アシオンの意見にソエルは訝しげに意見を唱えた
「本当に大丈夫なんですか?敵の領地に入るんですよね。野宿の方がいいのでは?」
「ワタクシはどちらでもいいですわよ。どちらもそう変わらなそうですし」
「ふぇぇ。私もどっちでもだいじょうぶですぅ」
「ビスどうする?」
「村に案内してくれるか。そこで休憩しよう」
洞窟内部での戦闘、みんなの疲労度が限界にきている。野宿では疲労が取れないだろう。それになぜかわからないが村に入っても害がないと思ってしまっている自分がいた
「わかりました」
村に着くと歓迎とまではいかないが普通に宿を紹介され休息できた。村の住民はこちらに対して興味をもっていないようにも思える。一夜明けても何も起きなかった。不気味にも感じたが、疲労を取ることができたので良しとするか。宿屋の主人にお礼を告げ出発する
「アシオン次の行先はどこだ?」
「次の行先はロージ城、目的地だ。この先は対して障害になるようなところはないぜ」
ロージ城に向かう途中、魔物に出くわすことはなかった。あまりの静けさに不気味な感じがする。それは、魔物がいることが当たり前になってしまっていたからなのだろうか
「もう少しでロージ城に着くぜ。準備はいいか」
「ああ」
目の前には真っ黒にそそり立つ城がそこにはあった。モーヴェ王国の城にもレーグル王国の城にも引けを取らない大きさで異彩を放っている。しかしここまで敵の攻撃がない。おかしい何かがおかしい。仲間も何か勘ぐってはいるがそれを口にするものはいなかった。そうこうしているうちに人影が見えてきた。それはタキシードを着た男性であった。俺たちは攻撃態勢に入ったが気の抜ける言葉が返ってきた
「よくお越しいただきました。王がお待ちです」
王がお待ち?これは罠か、それとも言葉の通りなのか。ただここで引き返すこともできずその男性に着いていった。異様に長い階段そして重々しく思える扉、男性がその扉を開けた先には見覚えのある顔が合った。一人は見たくもない今にも襲い掛かりたい相手。そしてもう一人はエルフの里で見た男性であった
「よく来たなビス、そしてご苦労であったアシオン、メイユ」
「ご苦労だ?ふざけるなよおっさん。こんなことになるなんて聞いてなかったぜ」
「ワタクシも今回の件は不服ですわ」
「王に失礼ですよ」
「よい」
なんだ、何が起きている。俺は今すぐにでもタドを倒しに行きたい。でも体が動かないそれにモルテを助け出さないといけないのだ
「おい、そんなことよりタド、モルテは、モルテはどこにいる?」
「そんなことよりですか、まあいいです。モルテ君は無事ですよ。ただ、今のあなたに合わせることは出来ません。その腑抜けたあなたに」
「なんだと」
「やめないか」
その一言で場の空気が静まり返った
「ビスよ。こちらへ来い」
言われるがまま足が動いた。そして王は俺に手を向け何か呪文を唱えた
「メモリア」
「ぐああああああああ」
「ビスさん⁉」「ビスさん~!?」
頭のなかに記憶が流れてくる。なくなっていたはずの記憶が。旅の途中で断片的ではあるが思い出してはいた。それがすべて流れてきた。知りたくなかった事実もわかってしまったのだ。俺はこの国の王子でそしてタドは俺の兄そして今目の前にいる王が実の父親だということに。俺が頭を抱え込んでいるのを尻目に王はこう告げた
「これにより、王位はビスに譲ることとする」
何を言っているのだ、この人は。何を勝手なことを言っている?何が起きているのか頭が追いつかない。まだ状況を飲み込めないし、認めたくない自分がいる
「これで私の理想の世界に近づける。これで世界は一つに纏まるだろう」
俺は、目の前の男を真っ直ぐ見据えてこう言った
「ふざけるな!勝手にあんたの理想を押し付けるな。それにその理想は偽善だ‼」
「偽善?何を言ってる。ニセモノの善なんてあるわけがないではないか。これは善だ。それが嫌なら抗え。それなのにそうしないものこそ偽善だ」
「それは・・・わかりました。王位の件お受けします。ただ、これはあんたのためじゃない。俺がそうしたいからするんだ。あんたの理想に抗うために」
「・・・」
そのあと王から返事が返ってくることはなかった。ただ、その顔は安らかなものだった
「おやおや、父上が亡くなられたようだ。はれて私も自由の身というものです。私を押さえられる人物がいなくなったのだからそうでしょう。私は私の理想、善を成そうと思います。してビスお前はどうする?」
「そんなの決まってるだろ。タド、あんたを倒すそしてモルテを取り返して俺の理想、善をつらぬいて見せる!」
「私に敵うと思うのか?」
「俺たちであんたを倒すんだ!」
「モストルヴェノス‼」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。
どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。
kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。
前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。
やばい!やばい!やばい!
確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。
だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。
前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね!
うんうん!
要らない!要らない!
さっさと婚約解消して2人を応援するよ!
だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。
※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。
稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜
撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。
そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!?
どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか?
それは生後半年の頃に遡る。
『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。
おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。
なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。
しかも若い。え? どうなってんだ?
体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!?
神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。
何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。
何故ならそこで、俺は殺されたからだ。
ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。
でも、それなら魔族の問題はどうするんだ?
それも解決してやろうではないか!
小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。
今回は初めての0歳児スタートです。
小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。
今度こそ、殺されずに生き残れるのか!?
とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。
今回も癒しをお届けできればと思います。
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる