ヒレイスト物語

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第五章 旅立ち

最後の決断

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洞窟内部。幾多の魔物を相手に疲労困憊のなか、日の光が差し込んでくるのが見えてきた。

「おい、ビスやっと出口が見えてきたぞ。」

「そうか。洞窟を抜けたら休憩しよう。どこか休憩できるところはないかアシオン」

「そうだな。近くに村があったはずだ。そこでなら大丈夫なはずだ」

アシオンの意見にソエルは訝しげに意見を唱えた

「本当に大丈夫なんですか?敵の領地に入るんですよね。野宿の方がいいのでは?」

「ワタクシはどちらでもいいですわよ。どちらもそう変わらなそうですし」

「ふぇぇ。私もどっちでもだいじょうぶですぅ」

「ビスどうする?」

「村に案内してくれるか。そこで休憩しよう」

洞窟内部での戦闘、みんなの疲労度が限界にきている。野宿では疲労が取れないだろう。それになぜかわからないが村に入っても害がないと思ってしまっている自分がいた

「わかりました」

村に着くと歓迎とまではいかないが普通に宿を紹介され休息できた。村の住民はこちらに対して興味をもっていないようにも思える。一夜明けても何も起きなかった。不気味にも感じたが、疲労を取ることができたので良しとするか。宿屋の主人にお礼を告げ出発する

「アシオン次の行先はどこだ?」

「次の行先はロージ城、目的地だ。この先は対して障害になるようなところはないぜ」

ロージ城に向かう途中、魔物に出くわすことはなかった。あまりの静けさに不気味な感じがする。それは、魔物がいることが当たり前になってしまっていたからなのだろうか

「もう少しでロージ城に着くぜ。準備はいいか」

「ああ」

目の前には真っ黒にそそり立つ城がそこにはあった。モーヴェ王国の城にもレーグル王国の城にも引けを取らない大きさで異彩を放っている。しかしここまで敵の攻撃がない。おかしい何かがおかしい。仲間も何か勘ぐってはいるがそれを口にするものはいなかった。そうこうしているうちに人影が見えてきた。それはタキシードを着た男性であった。俺たちは攻撃態勢に入ったが気の抜ける言葉が返ってきた

「よくお越しいただきました。王がお待ちです」

王がお待ち?これは罠か、それとも言葉の通りなのか。ただここで引き返すこともできずその男性に着いていった。異様に長い階段そして重々しく思える扉、男性がその扉を開けた先には見覚えのある顔が合った。一人は見たくもない今にも襲い掛かりたい相手。そしてもう一人はエルフの里で見た男性であった

「よく来たなビス、そしてご苦労であったアシオン、メイユ」

「ご苦労だ?ふざけるなよおっさん。こんなことになるなんて聞いてなかったぜ」

「ワタクシも今回の件は不服ですわ」

「王に失礼ですよ」

「よい」

なんだ、何が起きている。俺は今すぐにでもタドを倒しに行きたい。でも体が動かないそれにモルテを助け出さないといけないのだ

「おい、そんなことよりタド、モルテは、モルテはどこにいる?」

「そんなことよりですか、まあいいです。モルテ君は無事ですよ。ただ、今のあなたに合わせることは出来ません。その腑抜けたあなたに」

「なんだと」

「やめないか」

その一言で場の空気が静まり返った

「ビスよ。こちらへ来い」

言われるがまま足が動いた。そして王は俺に手を向け何か呪文を唱えた

「メモリア」

「ぐああああああああ」

「ビスさん⁉」「ビスさん~!?」

頭のなかに記憶が流れてくる。なくなっていたはずの記憶が。旅の途中で断片的ではあるが思い出してはいた。それがすべて流れてきた。知りたくなかった事実もわかってしまったのだ。俺はこの国の王子でそしてタドは俺の兄そして今目の前にいる王が実の父親だということに。俺が頭を抱え込んでいるのを尻目に王はこう告げた

「これにより、王位はビスに譲ることとする」

何を言っているのだ、この人は。何を勝手なことを言っている?何が起きているのか頭が追いつかない。まだ状況を飲み込めないし、認めたくない自分がいる

「これで私の理想の世界に近づける。これで世界は一つに纏まるだろう」

俺は、目の前の男を真っ直ぐ見据えてこう言った

「ふざけるな!勝手にあんたの理想を押し付けるな。それにその理想は偽善だ‼」

「偽善?何を言ってる。ニセモノの善なんてあるわけがないではないか。これは善だ。それが嫌なら抗え。それなのにそうしないものこそ偽善だ」

「それは・・・わかりました。王位の件お受けします。ただ、これはあんたのためじゃない。俺がそうしたいからするんだ。あんたの理想に抗うために」

「・・・」

そのあと王から返事が返ってくることはなかった。ただ、その顔は安らかなものだった

「おやおや、父上が亡くなられたようだ。はれて私も自由の身というものです。私を押さえられる人物がいなくなったのだからそうでしょう。私は私の理想、善を成そうと思います。してビスお前はどうする?」

「そんなの決まってるだろ。タド、あんたを倒すそしてモルテを取り返して俺の理想、善をつらぬいて見せる!」

「私に敵うと思うのか?」

「俺たちであんたを倒すんだ!」

「モストルヴェノス‼」
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