ヒレイスト物語

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第五章 旅立ち

強固な壁

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「おい、お前らそろそろ着くぞ。そんなかたまって何やってんだ?」

「何でもない」

俺は二人の間から抜け出し、アシオンの隣まで駆け上がる


「そろそろってどれくらいだ?」


「ん?五分ぐらいで着くと思うぞ。ほら」

アシオンが指さした先には微かに何かが見える。ただ、建物が見えるというわけではなく今まで視界に入っていた色とは違う色が飛び込んできた


「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だ、そんなに心配か?」

「そりゃ、あんな反り立つ防壁を見たらな。あんな厳重に守られた区画にいる者たちが受け入れてくれるか心配だよ」

「気にしなくて大丈夫だと思うぜ。・・・まあ、あの壁は初めて見たけどな」


その言葉に呆気にとられ一瞬固まってしまい、それがセフォンにまで伝染したのかスピードが落ちていき、言葉が遅れてでできた


「は!?おい待て、アシオン‼」

「どうかしたのかしら?」

「メイユか。アシオンがあそこの壁を見たことがないらしいのに、突っ込もうとしているんだ」

「ああ、完成していたのね。大丈夫よ、アシオンが言っている初めては完成した姿ってことだと思うわ。ワタクシたち、あそこに泊まったもの。その時には壁は途中までしかできていなかったけれどね」

「なっ・・・アシオンわざとああいう言い方しやがったな」

なぜかそんな気がした。嘘ではないのだろうがなんであんな不安の煽るような言い方を。もしかして俺たちの会話が聞こえていたか?いや、そんなことはないだろう、それに聞こえていたとしても、アシオンはあの時笑い飛ばしたのだ、そんな気にするようなやつではない。気まぐれってやつか、それとも


「ビスさん、どうかしたんですか?」

「いや、別に何でもない。それより、そろそろ着くみたいだぞ」

「・・・あれって大丈夫なんですか?」

「ダメだったらあそこを諦めるだけですよ。追い返すことはしても、むやみに襲うようなことはしないはずですわ」


壁もはっきり見えアシオンの姿も捉えることができ、そこには二人アシオンの近くに立っていた。ここで、ようやくアシオンの行動の意味が分かった気がする。もしかして、メイユは気が付いていたのか


「そういうことか・・・少しここで様子を見るぞ」

「ふぇぇ」

そうは言ったが、何かあった時はすぐにでも飛び出せるように準備をしておく。まあ、アシオンに限って下手をうつことはないと思うが念のためだ。異様に時間がかかっているように感じるが気のせいだろうか。そんなことを考えているとアシオンの声が聞こえてくる


「おーい、こっちに来いよ、中に入って大丈夫だとよ」



最悪の事態にはならなかったようだ。俺たちはアシオンの声を皮切りに壁へと近づいていく。そして、アシオンの近くに立っていた人たちの姿がはっきりと捉えることができた。

整った顔立ちそして、特徴的な耳。否定的な表情は見て取られないので、大丈夫だろう。まあ、あんまり歓迎もされているようには思えないが。ただ、ソエルを見て顔色が変わったように思えた
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