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第四章 不変
敵か味方か
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俺たちはプロウバの森手前までやってきていた。
「ここに連れて来られるとはな。」
「ちょっとビスさん⁉連れて来られたってまさか⁉」
そのまさかだ。俺は魔物たちいや、その背後にいるものの思惑に乗ってやった。それが一番の近道だと思ったから。抗えば抗うほどその道は過酷を極めていただろう。そうなってしまっては目的を果たせず死ぬ可能性が高くなっていく。それゆえの決断だった。
「はあ、僕たちこれからどうなるんですか?」
「さあな。どうなるんだろうな。」
モルテは何も言わなかった。おそらく呆れて何も言えなくなっているのだろう。
「そんなことよりまずこれをどうにかしないとな。」
俺たちは魔物たちに囲まれていた。それも今まで同時に相手をしたことのない数の魔物たちに。
「そう、でした。これをどうにかしなければ”これから”も存在しませんよね。」
しかし、これはまずい。俺たち二人でさばける数ではない。ふとあることを思い出してしまう。そんな事を思い出しても意味がないというのに。すると、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おーい。挨拶もせずに出ていくなんてひどいぜ。」
「ワタクシ傷つきました。」
「はははっ。」
思い出して見るものだな。姿は聞こえないが誰だかはっきりとわかった。だが、これは味方ととっていいのだろうかと考えなおす。まだ、油断はできない。もし、敵であれば一巻の終わりだ。
「何であの人たちが⁉ビスさん気を緩めないでくださいね。」
「わかってるよ。」
すると、片方の声の主が視界に入ってくる。声の主は空中を駆けていた。そして俺の方に真っ直ぐ駆けてきて大剣を振り上げる。
「くっ。そっちかよ。」
俺は剣を構え身構える。どう攻撃されても避けられるように。そして、大剣は振り下ろされた。ある言葉とともに。
「よそ見はいけないぜ。ビス。」
その言葉を聞いて確信した。大剣が俺に振り下ろされることはないだろうと。
「ああ、ありがとう。助かった。でも、お前もな。アシオン。」
俺は構えていた剣をまっすぐに突く。俺からは全体は見えないから想像でしかないが、俺とアシオンが魔物に挟まれている形になっているだろう。しかも魔物の死体に。振り返ると魔物が真っ二つになっていた。俺の予想はあたっていたようだ。
「いやー、一本取られた。助かったぜ。」
「アシオン、あなた魔物のなかに飛び込んでどうするつもりなのかしら。」
もう一人の声の主が目の前に現れる。アシオンと同じ方向から来たと考えると一緒に跳んできたというわけではあるまい。あの魔物たちの隙間を縫ってきたのだろう。よく見ると魔物たちの間に一本ができている。縫ってきたのではなかった。道をつくってきたのだ。
「なんだよ、メイユ、別にいいじゃねぇか。オレたちならどうにかできるんだから。なあビス。」
「ああ、そうだな。」
無意識にその言葉が出た。それにしても、アシオンに言ったメイユの言葉はブーメランではないかと思ってしまう。
「ちょっと待ってください。なんで一緒に戦う流れになっているんですか。それにこの人さっき魔法を・・・あっ。」
おそらくモルテも相当切羽詰まっていたのだろう。今まで聞いたことのない言葉を口にしようとしていた。そして言っている途中で気づいたみたいだ。それがアシオン以外にも関係する言葉だと。だが、俺は敢えて問い詰めた。
「魔法がなんだって?」
無言それがモルテの答えだった。強引ではあるが、これで俺の主張を聞き入れやすくなるだろう。俺は本当にずるい。だが、今は立ち止まっている暇はない。一人でも戦力がかけることは避けたかったのだ。
「とにかく今は戦うんだ。いいなモルテ。」
「はい。」
モルテは吐き出すように返事をした。それは空気のように、いずれ巡り巡ってまたモルテに戻っていくだろうという気がしてならなかった。ただ、何度も言うようだが、今はそれにフォローに費やしている時間はない。今は危機的状況なのだ。俺たち四人は魔物たちに向かって駆け出した。
「ここに連れて来られるとはな。」
「ちょっとビスさん⁉連れて来られたってまさか⁉」
そのまさかだ。俺は魔物たちいや、その背後にいるものの思惑に乗ってやった。それが一番の近道だと思ったから。抗えば抗うほどその道は過酷を極めていただろう。そうなってしまっては目的を果たせず死ぬ可能性が高くなっていく。それゆえの決断だった。
「はあ、僕たちこれからどうなるんですか?」
「さあな。どうなるんだろうな。」
モルテは何も言わなかった。おそらく呆れて何も言えなくなっているのだろう。
「そんなことよりまずこれをどうにかしないとな。」
俺たちは魔物たちに囲まれていた。それも今まで同時に相手をしたことのない数の魔物たちに。
「そう、でした。これをどうにかしなければ”これから”も存在しませんよね。」
しかし、これはまずい。俺たち二人でさばける数ではない。ふとあることを思い出してしまう。そんな事を思い出しても意味がないというのに。すると、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おーい。挨拶もせずに出ていくなんてひどいぜ。」
「ワタクシ傷つきました。」
「はははっ。」
思い出して見るものだな。姿は聞こえないが誰だかはっきりとわかった。だが、これは味方ととっていいのだろうかと考えなおす。まだ、油断はできない。もし、敵であれば一巻の終わりだ。
「何であの人たちが⁉ビスさん気を緩めないでくださいね。」
「わかってるよ。」
すると、片方の声の主が視界に入ってくる。声の主は空中を駆けていた。そして俺の方に真っ直ぐ駆けてきて大剣を振り上げる。
「くっ。そっちかよ。」
俺は剣を構え身構える。どう攻撃されても避けられるように。そして、大剣は振り下ろされた。ある言葉とともに。
「よそ見はいけないぜ。ビス。」
その言葉を聞いて確信した。大剣が俺に振り下ろされることはないだろうと。
「ああ、ありがとう。助かった。でも、お前もな。アシオン。」
俺は構えていた剣をまっすぐに突く。俺からは全体は見えないから想像でしかないが、俺とアシオンが魔物に挟まれている形になっているだろう。しかも魔物の死体に。振り返ると魔物が真っ二つになっていた。俺の予想はあたっていたようだ。
「いやー、一本取られた。助かったぜ。」
「アシオン、あなた魔物のなかに飛び込んでどうするつもりなのかしら。」
もう一人の声の主が目の前に現れる。アシオンと同じ方向から来たと考えると一緒に跳んできたというわけではあるまい。あの魔物たちの隙間を縫ってきたのだろう。よく見ると魔物たちの間に一本ができている。縫ってきたのではなかった。道をつくってきたのだ。
「なんだよ、メイユ、別にいいじゃねぇか。オレたちならどうにかできるんだから。なあビス。」
「ああ、そうだな。」
無意識にその言葉が出た。それにしても、アシオンに言ったメイユの言葉はブーメランではないかと思ってしまう。
「ちょっと待ってください。なんで一緒に戦う流れになっているんですか。それにこの人さっき魔法を・・・あっ。」
おそらくモルテも相当切羽詰まっていたのだろう。今まで聞いたことのない言葉を口にしようとしていた。そして言っている途中で気づいたみたいだ。それがアシオン以外にも関係する言葉だと。だが、俺は敢えて問い詰めた。
「魔法がなんだって?」
無言それがモルテの答えだった。強引ではあるが、これで俺の主張を聞き入れやすくなるだろう。俺は本当にずるい。だが、今は立ち止まっている暇はない。一人でも戦力がかけることは避けたかったのだ。
「とにかく今は戦うんだ。いいなモルテ。」
「はい。」
モルテは吐き出すように返事をした。それは空気のように、いずれ巡り巡ってまたモルテに戻っていくだろうという気がしてならなかった。ただ、何度も言うようだが、今はそれにフォローに費やしている時間はない。今は危機的状況なのだ。俺たち四人は魔物たちに向かって駆け出した。
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