ヒレイスト物語

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第三章 変化

思惑(1)

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俺たちは今城のとある一室にいる。ただ、王様に謁見しているわけではない。捕まったのだ。フロワに。長くなるのを覚悟した。


「ビス。一昨日何て言ったか覚えていますか?」


「ははっ。何でしたっけ。」


俺はとぼけた。横目にいたはずのモルテがいなくなっている。足だけ少し視界に入る。おそらく、そろりそろりと後ろに後ずさりしているようだ。この野郎一人だけ逃げようとしているな。しかしそれは叶わなかったみたいだ。


「モルテ、君もここにいなさい。親友の子どもだからと言って私は手加減しませんよ。」


「は、はい。フロワさん。」


逃げられることができずモルテは後ずさりできなかった足が無造作に放られている。さぞ変な恰好をしていることだろう。


「んん。話に戻りますが、ビスあなたは一昨日報告しないことを注意した時”今後気をつけます”と言ったの。思い出した?」


フロワは俺の言葉を待たずに続ける。返答はわかっているからいらないとでも言わんばかりに。


「今度という今度は逃がしませんよ。私は王様からなんとなく話は聞いていますが、あなたの口から聞いていない。あなたの口から聞きたいのです。」


俺は一瞬迷ってしまう。王様から聞いているということは話してもいいということだろうか。ただ、俺の口は気付くと無意識動いていた。


「申し訳ありません。俺の口からは言えません。たとえフロワさんが王様から聞いていたとしても。」


フロワは眉間に皺を寄せ訝しげにこちらを見てくる。


「それは王様と約束したからですか、それとも私のことを信用していないからですか?」


「どちらも違います。それにフロワさんのこと尊敬もしていますし、信用もしています。」


「だったらなぜです?」


「まだ信頼が足りないんです。・・・俺決めたんです。自分の眼で見たものしか信じないと。それにフロワさんは少し感情で動くこともあるみたいですし。」


俺は含みのある言い方をした。フロワは何も言ってこなかった。何か心当たりでもあるのだろう。


「フロワさんについて知らないことが多いんです。それに昨日聞いた限りでは俺と相性が悪いと思います。俺も感情で動いてしまうことがありますから。」


フロワの口はそんなに開いていなかったが、目が見開き驚きを表現していた。


「あなた、わかっていたんですか?」


「んー。なんとなくですが、そんな感じなのかと。」


フロワはモルテの方を見て吐き捨てた。


「はあ、この子に負けるとはね。」


俺もモルテの方に視線を送ると?が浮かんでいる。





「・・・だそうです。私の負けです。」
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