官能小説家の執筆旅行

市樺チカ

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家路

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子分達と協力してぼたんを医者へと担ぎ込んだ。

その医者の見立てによると、殴られて気を失っているが、顔や手足の傷は跡になる程ではないという。
駆け付けた楼主もほっとした顔をしていた。

「この度は本当に…、とんでもないご迷惑を―」

ふみへ何度も頭を下げる楼主。

「私はもういいよ、こうして無事だったんだ。それよりこの子をしっかり見てあげなよ。私が襲われそうになった時に、間へ入って庇ってくれたんだ」

楼主は目を丸くしてぼたんを見つめる。
背中を縮まらせながら、わかりました、と呟いた。



家へと向かう道中、ふみは時折体を震わせながら、昨日の事を話し出した。

「私が迂闊だったんだ。今までの事を謝りたいってんで、一人で大丈夫だろうと思ったんだけど―」

真田が優しく背を撫でた。

「怖かったね。二人きりの時に乱暴されなくて、幸いだったよ」
「―ずっとあの子が付いてくれてたんだよ。二人にしないようにって」
「…そうなんだ。何故だろうね」

ふみが足を止める。
じっと地面を見つめ、口を開いた。

「姐さんを止められなかった、ごめんなさい、って言ってたよ」

爪が食い込むほど強く手を握り締める。

「あの子は、悪くないってのにね…」

まなじりに浮かんだ涙を拭い、真田と熊井に顔を向ける。

「兎に角、ありがとう!二人が来てくれなかったら…、本当に助かったよ」
「気にするな。無事で良かった」

熊井の大きな手が頭を撫でる。
ふみは嬉しそうに笑うと、家へと続く道を駆けて行った。

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