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鉄
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到着したのは、豪華な作りの屋敷だった。
とても妓楼には見えないが、親分の調べに間違いはないだろう。
緊張した面持ちで玄関に入った。
「仕置部屋、という位だから目立たない所にあるだろうね」
きょろきょろと辺りを見渡す。
目を凝らすと、廊下の最奥で光がちらついているのが見えた。
互いに顔を見合わせ、静かに近付く。
部屋の前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。
「ふみ、大人しくこっちへ来い」
「―っ触るんじゃないよ!ここを出たらただじゃおかないからね」
ぎりぎりと縄が擦れる音がする。
手を縛られているようだ。
「そんな事言って、本当は俺の事が好きなんだろ!あんな人相の悪い男とつるんで、俺を嫉妬させやがって―っ」
ばりん、と何かが割れる音が響いた。
熊井の顔がどんどん険しくなっていく。
「あんたみたいな腐った男、勇治郎兄さんと比べる気にもならないね!」
「―ッ、お前が悪いんだからな!」
がたん、と物音が鳴った瞬間、熊井が戸を蹴破って部屋に押し入る。
割れた花瓶の欠片を振り上げている鉄の手首を掴み、逆の手で顔を殴り付けた。
ぶっ、という音と共に血と数本の歯が飛んでいく。
「ゆ、勇治郎兄さん…」
「先生、ふみを!」
後ろから現れた真田が走り寄って、腕を縛る縄を解き、上着を脱いでふみに被せた。
「大丈夫?何もされていない?」
「え、えぇ。ただ、代わりに女の子が…」
奥の扉に顔を向けた。
真田は立ち上がって扉を開く。
「君は…、ゆうぎりの…」
目の前には、力無く倒れるぼたんの姿があった。
着物は乱されていないものの、目や頬が赤く腫れ上がり、鼻から血が流れている。
「熊井君…っ!」
直ぐに抱き上げて熊井の側に寄る。
その横に倒れる鉄は、何度も殴られぐったりとしている。
「…先生、表に今朝の子分達がいる筈です。呼んできて下さい」
「分かった。…くれぐれも殺さないようにね」
真田はゆっくりと畳の上にぼたんを下ろし、駆け足で部屋を後にした。
とても妓楼には見えないが、親分の調べに間違いはないだろう。
緊張した面持ちで玄関に入った。
「仕置部屋、という位だから目立たない所にあるだろうね」
きょろきょろと辺りを見渡す。
目を凝らすと、廊下の最奥で光がちらついているのが見えた。
互いに顔を見合わせ、静かに近付く。
部屋の前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。
「ふみ、大人しくこっちへ来い」
「―っ触るんじゃないよ!ここを出たらただじゃおかないからね」
ぎりぎりと縄が擦れる音がする。
手を縛られているようだ。
「そんな事言って、本当は俺の事が好きなんだろ!あんな人相の悪い男とつるんで、俺を嫉妬させやがって―っ」
ばりん、と何かが割れる音が響いた。
熊井の顔がどんどん険しくなっていく。
「あんたみたいな腐った男、勇治郎兄さんと比べる気にもならないね!」
「―ッ、お前が悪いんだからな!」
がたん、と物音が鳴った瞬間、熊井が戸を蹴破って部屋に押し入る。
割れた花瓶の欠片を振り上げている鉄の手首を掴み、逆の手で顔を殴り付けた。
ぶっ、という音と共に血と数本の歯が飛んでいく。
「ゆ、勇治郎兄さん…」
「先生、ふみを!」
後ろから現れた真田が走り寄って、腕を縛る縄を解き、上着を脱いでふみに被せた。
「大丈夫?何もされていない?」
「え、えぇ。ただ、代わりに女の子が…」
奥の扉に顔を向けた。
真田は立ち上がって扉を開く。
「君は…、ゆうぎりの…」
目の前には、力無く倒れるぼたんの姿があった。
着物は乱されていないものの、目や頬が赤く腫れ上がり、鼻から血が流れている。
「熊井君…っ!」
直ぐに抱き上げて熊井の側に寄る。
その横に倒れる鉄は、何度も殴られぐったりとしている。
「…先生、表に今朝の子分達がいる筈です。呼んできて下さい」
「分かった。…くれぐれも殺さないようにね」
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