官能小説家の執筆旅行

市樺チカ

文字の大きさ
上 下
36 / 39

しおりを挟む
到着したのは、豪華な作りの屋敷だった。
とても妓楼には見えないが、親分の調べに間違いはないだろう。
緊張した面持ちで玄関に入った。

「仕置部屋、という位だから目立たない所にあるだろうね」

きょろきょろと辺りを見渡す。
目を凝らすと、廊下の最奥で光がちらついているのが見えた。

互いに顔を見合わせ、静かに近付く。


部屋の前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。

「ふみ、大人しくこっちへ来い」
「―っ触るんじゃないよ!ここを出たらただじゃおかないからね」

ぎりぎりと縄が擦れる音がする。
手を縛られているようだ。

「そんな事言って、本当は俺の事が好きなんだろ!あんな人相の悪い男とつるんで、俺を嫉妬させやがって―っ」

ばりん、と何かが割れる音が響いた。
熊井の顔がどんどん険しくなっていく。

「あんたみたいな腐った男、勇治郎兄さんと比べる気にもならないね!」
「―ッ、お前が悪いんだからな!」


がたん、と物音が鳴った瞬間、熊井が戸を蹴破って部屋に押し入る。

割れた花瓶の欠片を振り上げている鉄の手首を掴み、逆の手で顔を殴り付けた。
ぶっ、という音と共に血と数本の歯が飛んでいく。

「ゆ、勇治郎兄さん…」
「先生、ふみを!」

後ろから現れた真田が走り寄って、腕を縛る縄を解き、上着を脱いでふみに被せた。

「大丈夫?何もされていない?」
「え、えぇ。ただ、代わりに女の子が…」

奥の扉に顔を向けた。
真田は立ち上がって扉を開く。


「君は…、ゆうぎりの…」

目の前には、力無く倒れるぼたんの姿があった。
着物は乱されていないものの、目や頬が赤く腫れ上がり、鼻から血が流れている。

「熊井君…っ!」

直ぐに抱き上げて熊井の側に寄る。
その横に倒れる鉄は、何度も殴られぐったりとしている。

「…先生、表に今朝の子分達がいる筈です。呼んできて下さい」
「分かった。…くれぐれも殺さないようにね」

真田はゆっくりと畳の上にぼたんを下ろし、駆け足で部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

ガテンの処理事情

BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。 ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...