官能小説家の執筆旅行

市樺チカ

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泊まる宿も決まっていないと言う熊井を連れ、喫茶店の隣にある蕎麦屋で早めの夕食を済ませた。

軽く一杯引っかけて良い気分になった真田は、酒屋でつまみと日本酒を一升買い込んで熊井に持たせ、連れ立って自宅へと戻った。


居間で向かい合い、乾物を齧りながら一升瓶を抱えて大笑いする真田。

「いやいや、人と酒を飲むなんて何時ぶりだろうね。あぁ、とても楽しいよ」

半ばへべれけになりながら隆々とした背を何度も叩く。

「―先生はなぜ官能小説を書かれるんですか?こう言うのも何ですが…先生の書かれた本はそこらの物よりもずっと練られていて、普通の小説家としてもやっていけるんじゃないかと…」
「そうだね、教えてあげよう…ずばり、お金になりやすいからだよ」

にやりと笑いながら熊井のコップに並々と酒を足す。
注がれた酒を黙々と飲み続ける姿に、自分も負けじと猪口を呷った。

「世の中には小説家なんて掃いて捨てるほどいるんだよ。だから普通じゃない物を書く方が、人目に触れる確率が上がるでしょう?それに推理やら恋愛やらはただの趣味で読むものだけれど、官能小説はそうじゃない」

袋から新しいスルメを取り出して、熊井の股間を指す。

「男だったら必ず必要なものだからね」

この家には沢山あるから、好きなものを旅のお供にするといいよ。と奥の書斎を指した。

「いや、自分は…。しかし成る程、合理的ですね」
「そうなんだよ。お陰でこうして楽しく酒を飲んで居られるんだ」

嬉しそうに猪口を飲み干し、握ったスルメを噛み千切って立ち上がった。

「さて、風呂の支度をしてくるよ」

薄い上着を引っ掛けて廊下へ出ていく。
時折よろける真田を見て、おろおろと熊井も腰を上げた。
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