喧嘩ックス(野外)

市樺チカ

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喧嘩ックス(野外)

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リビングのソファーで横になり、携帯の画面を眺めた。午後八時半。
キッチンでは母親が忙しなく夕飯の支度をしていて、香ばしい匂いが部屋に漂っている。

もう一度携帯を手に取り、通話履歴の一番上を押した。呼び出し中の電子音が何度も流れる。暫くすると留守電になってしまい、諦めて終話ボタンを押した。
舌打ちをし、GPSアプリを開く。検索中の文字の後、赤いアイコンが画面に表示された。

「蒼太、ご飯出すからテーブル片付けてくれる」

エプロンで手を拭いてこちらに声を掛ける母親に、頭を掻きながら答えた。

「悪い。今日は要らない。…出掛けて来るから」
「あら、そう」

携帯と財布、パーカーを引っ掴んで玄関を飛び出した。タクシーを止め、携帯の画面を見せて急ぐよう伝えた。

目的地に近付く程に街並みがきらびやかになっていく。ピンクや紫の看板が眩しく輝いて辺りを照らしていた。

「ここで停めて下さい」

タクシーを降り、目の前の店を見る。出入口には厳つい風貌の男が立っていて、持ち物のチェックをしているようだ。扉の前で体を触られ、中へ通される。

階段を下った先のフロアでは、息が苦しくなるような重低音が響き渡っていた。けばけばしい化粧の女達と、にやけた面の男共が音楽に合わせて体を揺らしている。
静かにフロアの隅に立ち、人波に目を凝らした。

DJブースに程近い位置に見覚えのある姿を見付けた。金髪の若い男の側で踊りながら、時折媚びるように体を近付けている。
突然動きを止め、男の顔を見詰めた。目を閉じながら男を抱き寄せる。

「おい、彩夏」

揺れる人波を掻き分けて走り寄り、男の肩を掴んだ。鼻の下を伸ばしただらしない顔に向かって拳を振り上げる。
ぼぐ、と鈍い音と共に男が崩れ落ち、周りから戸惑いの悲鳴が上がる。幸いにも陽気なダンスミュージックに掻き消されて騒ぎになることは無かった。

倒れた男を呆然と見つめる彩夏の腕を引き、出口へと走った。

「痛い…っ、痛いってばっ」

店を出て路地裏に入った所で彩夏が腕を振り払う。俺は動きを止めて振り返った。

「何でまたあんな所に行くんだよ。言っただろ、やめろって!」
「ただ楽しく遊んでただけだし」
「阿呆か!さっきの奴の顔を見てなかったのかよ!鼻の下伸ばして下品な顔をしてただろ」

走り去ろうとする肩を掴み、コンクリートの壁へと押し付けた。痛みに顔を歪める彩夏。

「痛っ…。蒼太には関係ないでしょ!ほっといてよ!」

暴言と共に唾を吹き掛けられ、頬が汚れた。怒りに体が震えて拳を握る。思い切り振り上げて、彩夏の顔の直ぐ横を殴り付けた。鈍い音が響き、拳から血が流れ出す。

「そんなにヤりてぇのかよ、ビッチ」

暴れる彩夏の首を掴み顔を近付けた。怒りに歪んだ顔を見ながら唇に噛みつく。がりり、と歯を食い込ませると血が滲み出す。

「キスもまともに出来ないの。下手くそ」

彩夏が足を持ち上げ、俺の股間に膝を合わせた。絶妙な力加減で刺激され、劣情が頭をもたげる。

「黙れ糞ビッチ。大人しく股開いてろ」

首を押さえたまま片手を下腹に伸ばした。スカートを捲り上げて下着の中に手を突っ込むと、僅かに湿り気のある蜜口に指を這わせた。

「…ん、っ…、」
「はっ、無理やり犯されて濡れてりゃ世話ねぇな」

中指を沈め、ぐるりと一周掻き回す。ざらつきのある部分を指の腹で撫でると腰が揺れて蜜が溢れた。

「っ、下手くそ、触んなっ」

両腕を突っ張って俺の指を抜き取ろうとする。大して力が入っている訳でもないがうざったい。
挿入する指を増やして動きを激しくし、同時に首に当てた手に力を込めた。
ひゅ、という乾いた音がして両腕が離れた。首を絞める腕を必死で掴んで爪を立てる。

「おら、弛んできたぞ。もっと締めろ」

激しく水音を立てながら膣内を掻き回す。首の力を強めるにつれ、内部が不規則に痙攣し始めた。

顔を真っ赤にして腕を引っ掻く彩夏。やがてまぶたが落ち始め、黒目が上を向く直前、素早く手の力を抜いた。

「がはっ…、は…ぁ」

荒い呼吸を繰り返し、だらりと体から力が抜ける。落ちかけた頭を乱雑に掴み、後ろを向かせて下着を剥ぎ取った。
デニムの前を寛げ、猛った肉杭を取り出す。ひくつく蜜口に幾度か擦り付けてぬめりを絡めた。

「念願のちんこだぞ。喜べよ…っ」

ずぶりと挿入し、動きを止める。肉壁がぴったり吸い付いてうねり、精を搾り取ろうと収縮を繰り返していた。

「ぅ、ぁ…ぁあっ」

ゆっくり抽挿を開始する。ぎりぎりまで引き抜いては最奥に先端をぶつけ、奥のしこりをごりごり擦った。

「あっ、やめ…いたい…っ」
「うるせぇ…っ」

掴んでいた髪を離して細い腰に手を当てると、肌に汗が滲んでべたついている。手が張り付くような感覚を味わいながら強く腰を穿った。

「ぁ、あ、あぁっ、蒼太っ蒼太っ」

両手を壁について腰を振る彩夏。俺の動きにぴったり合わせた動きは、互いの快感を益々高めていく。

「…っはぁ、彩夏っ」
「あっ、蒼太、蒼太っ」

俺の名前を呼びながら体を震わせる様子に、心が満たされていく感じがした。後ろから覆い被さり、きつく体を抱き締める。

「彩夏…」

首筋に唇を合わせ、吸い付きながら最奥を穿った。びくりと大きく痙攣した膣壁が扱き上げるように締め付け、たまらず精液を吐き出した。



「彩夏」

力を失った肉塊を抜き取り、正面を向かせる。虚ろな瞳を覗き込み、唇を合わせて舌を絡めた。

「何で試すようなことをするんだ」
「…また、捨てられるかも知れないから」

彩夏はすがり付くように首に腕を絡めた。口元の直ぐ横に来た二の腕を軽く食む。

「こうやって思い出して貰わないと…ママとパパみたいに、蒼太も居なくなっちゃう…からぁ…っ」
「馬鹿。居なくなる訳ないだろ」

肩を震わせる彩夏を優しく抱き締め、溢れる涙を舐め取りながら額に唇を落とした。

「今までもずっと一緒に居ただろ。お前が嫌だと言っても、ずっと付いていく」

揺れる頭を胸に押し付け、強く掻き抱いた。彩夏は苦しそうに上をむいて笑う。

「ははっ、ずっとはうざいね」

俺を見てにこりと笑う姿は、太陽のように輝いて見えた。
つられて頬を緩め、ずり上がったスカートを戻して下着を拾い上げる。

「ほら、帰るぞ」
「うん、そうだね」

手を握り合い、指を絡めて歩き出した。

「ねぇ。なんで私の下着、ポケットに入れたの」
「…うるせぇよ」
「きゃあ、変態がいるよぉ」

悪戯っぽく笑う彩夏を見てほっと胸を撫で下ろした。
握った手に力を込める。

「もうやめろよ、こういうの」
「…うん。ごめん」

ちかちかと輝く電飾を潜って家路を急ぐ途中、同じタイミングで腹が鳴った。すっかり夕飯を食べ損ねてしまっている。

「飯食って行くか」
「そうだね。あ、パスタがいいなぁ」
「腹に溜まらないから却下」
「ええっ、じゃあ蕎麦」
「ふざけんな。やっぱ肉だろ」
「やだ。もう十二時だよ。重いって」
「…俺の驕りなんだから文句言うなよ」

言い合いをしながらあちこちの店を指差して街を歩く。
何でもない一瞬に、幸せな気持ちが胸を満たした。
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